かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:デュティユー 管弦楽作品集1

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、3回に渡りましてデュティユーの管弦楽作品を収録したアルバムをご紹介します。

デュティユーは、20世紀フランスの作曲家で、主に第2次大戦後から21世紀初頭まで活躍した作曲家です。

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若き頃に戦争を経験した世代だといえるでしょう。感受性豊かな時代に戦争を経験したことで、デュティユーの作品は私が聞く限り、どこかほかの「20世紀音楽」とは違う雰囲気を持っているような気がします。

不協和音が連続するのはほかの20世紀音楽の作品と変わりないんですが、不安を過度に煽るというような部分がないんです。むしろその不安を突き抜けてしまった、絶望というか、諦観というようなもののほうが強く出ているように受けます。

1曲目の交響曲第2番は、オーケストラのソリスト、おそらく主席たちだと思うのですが、その主席たちがオーケストラの中で室内楽を編成するという変わった編成になっていますけれど、全体として変わった印象はなく、むしろ統一性すらあるのが素晴らしい作品です。

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「二つの」という題名がついている割には、その二つということがことさら強調されることはなく、むしろ二つのものが自然と一体になっているさまが描かれているといえるでしょう。

2曲目の「メタボール」は変奏曲なのですが、主題があって変奏があるというのではなく、むしろ主題からどんどん変容して、違う形になっている様子が描かれています。なので変奏曲といういい方は正しいのかなあという気がします。その変容こそとても聴いていて興味深くて、面白い作品です。

3曲目は、小澤征爾により委嘱された作品「時の影」。三人の童声が加わり、不思議な世界が現出されます。それがおどろおどろしくはなく、色彩感豊かな世界です。

そんな3つを演奏するのが、ハンス・グラーフ指揮フランス国立ボルドーアキテーヌ管弦楽団。多分これ、元音源はナクソスだったと思うのですが、こういうフランスのあまり知られていないオケの実力を知るにはとてもいいアルバムだと思います。しっかりとしたアンサンブルと、くっきりとしたサウンド。どこかごまかしているわけではないしっかりとした音作り。同じフランスの作曲家の作品を演奏しているという点もあるかもしれませんが、地味な音作りを手抜きしていないので、むしろデュティユーの世界がはっきりと浮かび上がっているようにも聴こえます。

デュティユーの作品が決してメジャーとは言えない状況において、この演奏は実に素晴らしく思います。20世紀音楽というとどこかおどろおどろしいものを想像してしまい、触れることを恐れてしまいがちなのですが、それを払拭させる素晴らしい演奏が、必ずしも有名ではないオケで聴ける・・・・・これが本当の欧州の実力なのだと思います。つまり、ウィーン・フィルなどのメジャー・オケは、そういった積み重ねの中で存在している、ということです。こういうオケを聴くことこそ、その近道のように私は思っています。

 


聴いている音源
アンリ・デュティユー作曲
交響曲第2番「ル・ドゥーブル」(1959)
メタボール(1964)
時の影(1981)
ハンス・グラーフ指揮
フランス国立ボルドーアキテーヌ管弦楽団

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