かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:デュティユー 管弦楽作品集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、デュティユーの管弦楽作品集を取り上げていますが、今回はその第2集です。

第2集の第1曲目が、交響曲第1番。様式的には古典的ではありますが、和声はまさしく20世紀。そのおどろおどろしさだけではなく、もっといろんな可能性を試している作品で、その複雑さを一つに融合した音楽がなんとも魅力的です。

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ではなぜ、これが第1集に来なかったのか?おそらくです、これは4楽章だから、です。第2番は3楽章。つまりは・・・・・そう、私が3楽章制で常に出すキーワード「自由」です。そしてそれは、フランスの伝統とも結びついています。なぜか?

フランスも、ヨーロッパ諸国との戦争に明け暮れた国の一つです。特に音楽においては、そもそも先進国だったはずのフランスは、ドイツ音楽の影響を受けていきます。国民国家となると、そのナショナリズムにより、ドイツは必ずしも快く見られなくなり、むしろ抑圧の象徴となっていきます。

そのため、フランス・バロックが祖国の文化復興の象徴となっていくのですね。フランス・バロックの時代、フランスは絶対王政だったにも拘わらず・・・・・共和制のフランスで、顧られることになった、というわけです。

多分、この点がフランス革命を勘違いしている人が多い点だと思うのです。フランス革命は王政から共和制という意味ではとても重要な政治的転換点ですが、社会がそれでいきなり変わったわけではありません。むしろ、古い因習はそのまま残されるか強化すらされたことを、私たち日本人はあまり教えられていません。マリー・アントワネットで検索するといろいろ出てくるでしょう。

ちょうどそういう、自分たちが積み残してきたものをふり返る時代になっていったのが、19世紀~20世紀のフランスだといえます。デュティユーがはじめ4楽章制の交響曲を書き、その後3楽章制の交響曲を書いたのは偶然とは私には思えません。

2曲目が「遥かなる遠い世界」。チェロとオーケストラのための、とある通り、チェロ協奏曲ともいえる作品ですが、協奏曲という雰囲気よりは、オケにソロのチェロが入っている、と言った作品です。この囚われのなさ!それが一つの主張となっている面白さが魅力です。

3曲目が「音色・空間・運動 あるいは「星月夜」」。ロストロポーヴィチの委嘱により制作された作品で、ゴッホの絵画「星月夜」からのインスパイアです。ですので絵画をそのまま音楽にするというのではなく、デュティユーの印象と想像の結果が楽譜に起こされた作品だといえます。そのため、結構あからさまな表現もあります。

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演奏は、第1集とおなじ指揮者とオケにチェリストが入ったもので、実に魅力的です。不協和音が多用されている作品でよくぞここまで歌うよなあと思うくらいのカンタービレ。特にチェロのカンタービレは素晴らしく、不協和音という和声が、デュティユーにとって「人間の創作の結果」として必要だったかのようにすら聴こえます。いや、多分そうだったのではないかと私は思っていますけれど・・・・・

折角海外オケが来ない今だからこそ、デュティユーのような作曲家の作品にも注目したいものです。

 


聴いている音源
アンリ・デュティユー作曲

交響曲第1番(1951)
遥かなる遠い世界・・・チェロとオーケストラのための(1967/70)
音色・空間・運動 あるいは「星月夜」(1978)
ジャン=ギアン・ケラス(チェロ、⑤~⑦)
ハンス・グラーフ指揮
フランス国立ボルドーアキテーヌ管弦楽団

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