かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:デュティユー ヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介していますが、今回はデュティユーのヴァイオリン協奏曲とチェロ協奏曲を取り上げます。

デュティユーという作曲家は、このブログでは初登場だと思います。フランスの作曲家なんですが、印象派までの音楽を想像すると、面喰うかもしれません。不協和音が鳴り響く、どこか独特の音楽であり、「20世紀音楽」そのものだと言ってもいいでしょう。

アンリ・デュティユー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A6%E3%83%BC

このブログでは、同じ時代の作曲家として、メシアンブーレーズを取り上げているかと思いますが、それらとも一味違う世界を作りあげているのが特徴です。シュッとしていると言うか、悲観的な音楽ではないんですがどこか生真面目という感じもあります。

それは、フランスと言う国が辿った歴史と関係があるのかもしれません。デュティユーのキャリアはローマ賞を取ったところから始まるんですが、第2次世界大戦の勃発でローマで学ぶことは殆どかなわなかったのです。その代り、メディア用の音楽の作曲をずっと手がけることになります。

そして、キャリア的に大きなチャンスが巡って来たのは50近くになってからで、1961年エコールノルマルの教授になってからです。それ以降、クラシック音楽での発表も多くなっていきました。

今回のアルバムに収録されている二つの協奏曲は、デュティユーを代表する協奏曲であり、作品でもあります。ヴァイオリン協奏曲「夢の樹(木)」は、1985年に作曲され、元々はアイザック・スターンの還暦を祝うためのものでした。ところがスターンの還暦には間に合わず完成。それでも初演のソリストはスターンが勤めています。

夢の樹 (デュティユー)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A2%E3%81%AE%E6%A8%B9_(%E3%83%87%E3%83%A5%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A6%E3%83%BC)

4楽章とも、7楽章とも取れる構造ですが、4でも7でも、古典的な3楽章形式を取っていないことは明らかです。ですので幻想曲に近い構成です。ちなみに、初演したオケであるフランス国立管弦楽団は、このアルバムのオケでもあります。

一方のチェロ協奏曲「遙けきなべての国は・・・・・」は、1970年の作曲です。口語的訳だと「遥かなる遠い国へ」となりますが、これはボードレールの詩「悪の花」の中の「髪」から引用されています。5つの楽章からなっており、それぞれ「遠く離れていて、ほとんど死んでいない世界」を、「悪の花」の詩に即して音楽にて表現したものになっています。

Tout un monde lointain…
https://fr.wikipedia.org/wiki/Tout_un_monde_lointain%E2%80%A6

フランス語ウィキですが、自動翻訳でもかなりのことが分かるかと思います。各楽章はそのボードレールの詩から採用されており、ボードレールの詩を知っていることが、作品との対話において讃頌されるされるものになっています。勿論、知識がなくても楽しめるのですが、あるほうがよりいいのではないかと思います。

悪の華
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%82%AA%E3%81%AE%E8%8F%AF

できれば、フランス語ウィキのほうが分かりやすいかもしれません。自動翻訳はかなり乱暴で読みにくい部分はありますが、正確性はフランス語ウィキのほうだと思います。

Les Fleurs du mal
https://fr.wikipedia.org/wiki/Les_Fleurs_du_mal

5楽章あるうえに、各楽章が標題音楽となっています。ですから、ボードレールの詩を知っているのと知らないのとでは、共感するのに違いが出てきますし、どんな詩なのか、ウィキ程度でも知っているのと知らないのとでも違ってくることでしょう。始め聴いていてなんだろうと思った旋律も、ボードレールの詩の知識があれば、なーるほど、そんな感じなのかなって受け取ることができます。

少なくとも、ボードレールの「悪の華」は、ふつうは美とはしないものを詩に歌い上げたものが多く、奇書とすらされているくらいです。現代でいえば下手すればAVで表現するようなものすら詩に歌い上げており、それはある意味健康的な「美」を好む人たちからすれば違う世界です。どこか朦朧とした音楽は、実は人間の意識であったりする・・・・・そこに気が付きますと、おお!そうかと納得する部分もたくさんある作品なので、多くの人に教官を得るのはもしかすると難しいかもしれません。

しかし、構造的には標題音楽としてはクラシックの伝統を受け継ぐものであり、フランスであれば、先日まで取り上げていたクープランへとさかのぼるものです。音楽性が異なるので違うように見えてしまいますが、これを組曲と協奏曲を合体させたと考えると、なるほどと思います。

演奏するは、ヴァイオリン協奏曲のソリストはアモワイヤル。現代フランスを代表するヴァイオリニストです。一方チェロ協奏曲はハレル。特にハレルのチェロが良いんです!上記説明した通り、チェロ協奏曲はボードレールの詩に立脚するものです。そのボードレールの詩は、下手すれば幻覚とも言えるものであり、その「幻覚感」を出す必要がある訳なんですが、ハレルのチェロはそれが絶品なんです。え、んな経験あんのかと勘違いするくらいのチェロで、さすが技術的に優れたチェリストだと思います。アモワイヤルも艶のあるヴァイオリンが、作品の豊潤な世界をしっかりと表現し、花を添えます。

指揮はデュトワ。フランスものを振らせれば絶品ですが、その指揮するオケが、ヴァイオリン協奏曲初演時のオケである、フランス国立管であるわけです。二つの作品とも生真面目な部分がありながらも、豊潤なアンサンブルが必要とされる難曲だと思いますが、「ごく普通に」演奏するのはさすがです。さらに躍動感もあり、なんじゃこりゃの二つの作品が生命力がある、素晴らしい作品であることが表現されています。そしてこのような作品をデュトワが振れるのだということを、私達は例えばデュトワN響を指揮するときに、踏まえる必要があるでしょう。

ディティユーは親戚に画家が、そして父も音楽家だったわけですが、そういった家系に生まれつつも、自分の世界を構築している、その代表的とも言える二つの作品を、とても丁寧にかつダイナミックに演奏し、私達に何か考えさせるのは素晴らしい経験です。こういった作品を採り上げるフランスのオケはさすがですし、私達聴衆ももう少しこの手を在日オケに要求していく必要があるでしょう。




聴いている音源
アンリ・デュティユー作曲
ヴァイオリン協奏曲「夢の木」
チェロ協奏曲「遙けきなべての国は・・・・・」
ピエール・アモワイヤル(ヴァイオリン)
リン・ハレル(チェロ)
シャルル・デュトワ指揮
フランス国立管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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