東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はチャイコフスキーが作曲しましたマンフレッド交響曲を収録したアルバムをご紹介します。
マンフレッド交響曲。その名を聞いたことはあるけれど、演奏を聴いたことはないという人は、結構多いのではないでしょうか。チャイコフスキーの交響曲全集でもめったに収録されていませんし。
それもそのはず。この作品は交響曲というよりはむしろ、交響詩に近い作品だからです。
マンフレッド交響曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2
しかも、第1楽章を聴きますと、チャイコフスキーがすでに作曲している、演奏会用序曲の雰囲気すらあります。ですから、交響曲を崇高と思う人からは「屑」扱いすらされているかわいそうな作品です。何もクズとまで言わなくてもって思いますよ、ええ・・・・・
ウィキには正確な題名が示されています。「バイロンの劇詩による4つの音画の交響曲『マンフレッド』」。これがマンフレッド交響曲の正式な名称です。そもそも音画ですし、インスパイアされているのはバイロンの劇詩です。そりゃあ、チャイコフスキーのそもそもの交響曲と比べるのもねえって思います。
マンフレッド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%89
リストによってジャンルが確立された交響詩ですが、一楽章だったがやがて多楽章になっていきます。リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」では4楽章であったのが、スメタナの連作交響詩「わが祖国」では6楽章になります。そのように多楽章へと拡大していく中で、チャイコフスキーも作曲し、それを交響曲仕立てにしたとすれば、私はこの作品をクズ扱いにはしません。
劇詩、つまりストーリーがあるものを交響曲にできるでしょうか?正直、難しいと思います。チャイコフスキーが生きた時代は後期ロマン派、そしてその派生である国民楽派の時代です。交響曲には明確な様式がありました。その様式を使ってさらに自分の内省を表現していく・・・・・それが後期ロマン派という運動です。その様式を崩すには、純然たる交響曲とはまた違ったものを書かねばなりません。それがリストが確立した交響詩だったのです。チャイコフスキーのこのマンフレッド交響曲はその音楽史に沿った作品であるといえます。ゆえに私はたとえ相手が巨匠バーンスタインだとしても、そのクズ扱いには異を唱える者です。
むしろ、映画好きだったり、大河ドラマが好きな人であれば、このマンフレッドの劇的な展開は好む作品ではないかなあと思います。内省的な作品が多いとされるチャイコフスキーがこれだけ劇的な作品も書く・・・・・チャイコフスキーがなぜ洋の東西を問わず好まれるのかの一面を表しているように思うのは私だけなのでしょうか。
演奏は、指揮するは「炎のコバケン」こと小林研一郎。オケはチェコ・フィル。ちょうどコバケンがチェコ・フィルの客演常任指揮者をやっていた時代の録音です。ということはまさかって?そのまさかです、しっかりうなり声、入っています。けれどもそれは私にとって特段驚くことではなくむしろニヤリとするものです。なぜなら、同じチャイコフスキーの交響曲第5番の収録で、やはりうなっているからです。もちろん、チェコ・フィルで。
ですから、ああ、やっぱりぃ〜としか受け止めず、それよりも演奏のドラマティックさのほうに魅了されます。そんな中で響くコバケンのうなり声・・・・・前のスピーカーでも聞こえていたとは思うんですが、新しいソニーのSRS-HG10でははっきり聞き取ることができるので、思わずニヤリとしてしまいます。どんな作品に対しても全力投球。その結果、マンフレッド交響曲が持つドラマ性が際立ち、作品の生命の脈打つ音すら聴こえてきます。どこがクズなんだよ!って思いますw
ですが、チャイコフスキーが残した6曲の交響曲とは違った雰囲気を持つ作品ですので、たとえ交響曲という名前がついていようともチャイコフスキーの交響曲全集には収録されないのは仕方ないとはいえ、管弦楽作品としてはもっと演奏されるべき、しっかりとした魂を持つ作品であるといえますし、その証明をこの演奏は見事にしているのです。
聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
マンフレッド交響曲作品58
小林研一郎指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
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