かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:ホフナング音楽祭1

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回と次回の2回に渡りまして、ホフナング音楽祭のアルバムを取り上げます。

いやあ、まさか、このアルバムが図書館に、しかも、小金井にあるとは思いもよりませんでした・・・・・・この抱腹絶倒のアルバムが、です。司書さんのセンス抜群です!

神奈川県立図書館には、なかったと思うんです。神奈川県立図書館はまたその深いライブラリで素晴らしいと思いますし、ゆえに県民の皆さんは是非とも活用してほしいと思うんですが、小金井はこのホフナングがあると言うことはで、かなり図書館として頑張っているなと感じるのです。

っていうか、なんでそこまで熱くなってるんですかって話ですよね〜。私がホフナング音楽祭に出会ったのは、mixiのイベント「同時鑑賞会」で取り上げられていたから、なんです。その時の抱腹絶倒ぶりと言ったらなかったんです!まさに私の笑いのツボど真ん中でした。

え、お笑い好きなんですかって?けっして嫌いじゃないですよ。漫才だって好きですし、特に落語はもはや芸術だと思いますし。このブログでも、すでにモーツァルトの「音楽の冗談」や、同じモーツァルトの変態音楽を御紹介しているかと思います。このホフナング音楽祭は、私のその「笑いのツボ」の延長線上にあるものなんです。

さて、ここまで来たら、まずはホフナング音楽祭って何かを説明する必要があるでしょう。1956年に第1回が開催された、冗談音楽の一連のコンサートで、ドイツからイギリスへと渡った漫画家ジェラール・ホフナングが創始したものです。

geezenstacの森
ホフナング音楽祭1988
https://blogs.yahoo.co.jp/geezenstac/49542298.html

実はこのアルバムは、まさに上記ブログのエントリで紹介されているものなんです。ホフナングがどれだけ才能豊かで、しかも仕事が素晴らしかったかは、以下のブログのほうが詳しいでしょう。

踊る阿呆を、見る阿呆。
ホフナングを知っていますか。
http://www.tongariyama.jp/weblog/2004/01/post_25.html

現代風に言えば、コントをするコンビの相方が、それを芸術の域まで高めたって感じなんです。たまたま、ホフナングはクラシックが好きな人でした。そしてこの1956年という時期は、クラシック音楽の転換期に当たります。クラシック音楽という芸術よりも、ポップスのほうが音楽界では力を持ち始めた時期なのです。そこに元々、笑い飛ばす文化の伝統があるイギリスという地域性が加わり、出来上がったのがホフナング音楽祭なのです。

正確に言えば、この1988年のコンサートが成立するためには、ホフナングの他に、すでにこのブログでも紹介している作曲家が資力する必要がありました。それがイギリスのシンフォニストでもある、アーノルドです。

マルコム・アーノルド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%89

なぜならば、一つには、いくら才能が豊かだと言っても、ホフナングは漫画家であり作曲家ではないからです。そしてもう一つは、最も重要な点ですが、ホフナングは1959年に、35歳の若さで逝去してしまったからです。

そのため、ホフナングと親しかったアーノルドがその遺志を継ぎ、開催しつづけてきたのが、ホフナング音楽祭なのです。冗談音楽のコンサートで、本当に見事なふざけっぷりなんですが、実は裏話をすれば、それだけのスピリチュアリティがある、素晴らしい「音楽祭」なんです。

ですから、ちょっと知識があると、もう笑いが止まらないんです。それだけ真面目で上質なんです。ではかなり洒脱なんですかと言われれば洒脱な部分もありますが、本当にコントのようにおふざけです。ここまでやってしまっていいんだろうかと言うくらい。

取りあえず、簡単ではありますが、それぞれの作品の特徴をば。

まずは、チューニングから始まります。それだけでは普通のコンサートとなんら変わりませんが、そこにアナウンスが・・・・・

「ご来場の皆さん、大変申し訳ないことになりました。フィルハーモニア管大大序曲弦楽団とロイヤル・フェスティヴァル・ホールのやむを得ない事情により、今夜のコンサートは予定通りやることになりました。どうぞひとえにご了解くださいますよう。ご来場を心より感謝します。」

え、なにそれ?って思いますよね。もうこれは日本でいえば「今日も朝から夜だった。どんより曇った日本晴れ、生まれたばかりのばあさんが、85、6の孫連れて、白い白馬にまたがって、まがったっ道を一直線」ってやつと同じです。ここで多少クスってきます。

そしていよいよファンファーレ!これがじつはバイロイトのパロディなんです!バイロイト音楽祭のあの会場入り口で行われるファンファーレを知っているひとであれば、このあたりからもう笑いが止まらなくなります。

ようやく第1曲目「大大序曲」。じつは作曲がアーノルドなんです。そもそもシンフォニストであるアーノルドの作ですから、つかわれている作品がパロディと判るや否やもう笑ってしまうんですが、もっと笑えるのは、実は楽器として掃除機が使われているってことなんです。しっかりと笑いの基本形を、クラシック音楽の中に落とし込んでいるのは、さすが芸術家アーノルドだと言えるでしょう。え、そんな感心していていいのかって?いいんです、どうせ感心しつつも爆笑しますから。

2曲目「水道ホースと管弦楽のための協奏曲」。その題名でもうくすくすって笑ってしまうでしょ?でも、これも原曲は父モーツァルトのレオポルトの協奏曲のパロディ。当然聴衆はそれをもうわかっているわけなんですが、独奏楽器が水道ホースなのでもうここでわらひがとまらなひ〜

3曲目「カウント・ダウン地方のバラード」。フランシス・シャグラン作曲の、書下ろしの作品ですが、何をパロっているかと言えば、二つ。一つはハリウッド音楽。そしてもう一つは東西冷戦における宇宙開発競争なんです。そう、カウントダウンとは、ロケットを打ち上げる時のもの。それがカリカチュアとして出てきますと、私はもう笑いをこらえることができません。いやあ、独り暮らしで良かったです、わたし。家族とご一緒の方は本当にここで笑いすぎに注意してください。

フランシス・シャグラン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%83%B3

4曲目「テイ川の鯨」。マティアス・セイバー作曲のこれも書下ろしですが、パロっているのはイギリスでよくあるラジオドラマ。朗読劇ですね。同じ路線で7曲目の「ロッキンヴァ―」もあります。

シェイベル・マーチャーシュ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5

このあたりまでは、むしろローワン・アトキンソン主演の「Mr.ビーン」の路線だと言えるでしょう。あのドラマが好きな人であれば、ここまでで確実に抱腹絶倒だと思います。

さて5曲目「オペラ「カジモドとジュリエッタ」よりアリア(第9幕 第12場)」。ジャコモ・スカルラッティ―ナ作曲ですが・・・・・って、んな作曲家いるわけありません!この作品は、作曲家名からしてもうパロディなんです。音楽は殆ど有名作品のつぎはぎですし。でもそのつぎはぎのハチャメチャぶりがおかしくって!

そして6曲目にいくまえに、なんだかせきをする人が・・・・・あまりにもひどいので看護師に抱えられてどうやら病院へ行くようです・・・・・でもこれは、CDではあまりその面白さが分からないと思います。ホフナングはこの1988年のロイヤル・アルバート・ホール以外にも、「プラハの春」音楽祭で演奏されたものが動画として残っているので、そちらを見るほうが、なぜ観客が笑っているのかが判るんじゃないでしょうか。これも立派なパロディで、第2次大戦の時に「せきとくしゃみが病原菌をまき散らす」というポスターが作られたのですが、それが予算の無駄遣いだとなって辞めたことが背景になっているんです。ですから会場の英国人たちはくすくすって笑うんですね。その上、病人を担ぎ出した看護婦と指揮者は恋仲になって駆け落ちしたせいで演奏会は一旦中止の危機に?というものなので、かなーり私達日本人にはなぜ笑っているのかが理解しにくいと思いますが、それは解説などを見てふーん、なるほどね〜って思っておけばいいのだと思います。

で、6曲目「序曲「レオノーレ」第4番」。感の良い人であれば、まさかベートーヴェンをパロってんの?と気づくかと思いますが、だーせーいかーい!一応、コンサートではベートーヴェンの「遺作」ということになっていますが、そんなことはなく、作曲家ストラッサーの編曲です。ベートーヴェンが自作のオペラ「フィデリオ」の序曲が気に入らなくて、次々に変えて行った結果、4つ残されたという音楽史の史実に基づいたパロディなんです。なので私などはもう「え、第4番って、まさか・・・・・」と思っているうちに笑いに巻き込まれて行くんです。

7曲目が「ロッキンヴァ―」。4曲目の「テイ川の鯨」と同じ路線ですが、朗読劇に劇音楽がついたもので、ハンフリー・サールの作曲です。本当にこういった笑い好きなんだね〜って思いますね、イギリス人って。でもそこには私達日本人が、コントや落語と言った世界で笑っているのと同じエッセンスが見え隠れするので、同じ人間なんだなあと、笑いながら安心する私がいます。

前半最後の8曲目が「人気協奏曲」。多分ホフナング音楽祭で最も有名ではないのでしょうか。指揮者とオケはチャイコフスキーのピアノ協奏曲を演奏するべく始めますが、なんど序奏を演奏してもピアニストは演奏しようとしません。そしてピアニストが演奏し始めたのはなんと、グリーグのピアノ協奏曲だった・・・・・二つの作品が一つの演奏として交錯しつつ、時にはラフマニノフになったりして・・・・・さあて、最後どうなりますことやら!もうグリーグのピアノ協奏曲が出てきた時点で、私は爆笑を押さえることができましぇ〜ん!

ということで、かなり駆け足で前半を御紹介しましたが、一度お聴きになることをお奨めします!クラシックでこんなに笑えるのか!と驚かれることかと思います。勿論!これですべてではなく、後半もたくさん笑かしてくれますが、それは次回に。

で、演奏はといえば、これがなんと!フィルハーモニア管なんですね。指揮者はたくさんいるんですが、面白い内容のものを、ごくふつーに演奏するんです。でもそれゆえにもう笑いが止まらないんです。それはまるで、落語の様です。本当に笑える笑いは、しっかりとした技術と練習によってのみ笑えるという典型だと思います。さらに言えば、フィルハーモニアの団員たちが楽しんでいるんですよね〜。動画ならもっとはっきりすると思いますが、CDからでも、演奏が生き生きとしていることから存分に受け取ることができます。いい加減ではなく真剣に、笑わせることを楽しんでいるんです。それはとりもなおさず、普段のコンサートを表現者として楽しんでいることを示します。だからこそおふざけの作品がより引き立ち、わらひがとまらなひんでふね〜

すひまへん、もうわらひがとまらなひので、今回はこれにへ〜\(◎o◎)/!




聴いている音源
ホフナング音楽祭1988 1
�@チューニングと冒頭の挨拶(チューナー:トム・ケニョン、挨拶:ロドニー・スチュアート)
フランク・レントン作曲
�Aホフナング音楽祭ファンファーレ
マルコム・アーノルト作曲
�B大大序曲
レオポルト・モーツァルト作曲(ノーマン・デル・マー編曲)
�C水道ホースと管弦楽のための協奏曲
フランシス・シャグラン作曲
�Dカウント・ダウン地方のバラード
マティアス・セイバー作曲(詩:ウィリアム・マックゴナール)
�Eテイ川の鯨
ジャコモ・スカルラッティ―ナ作曲
�Fオペラ「カジモドとジュリエッタ」よりアリア(第9幕 第12場)
�G咳をする人
ベートーヴェン作曲(遺作)/ストラッサー
�H序曲「レオノーレ」第4番
ハンフリー・サール作曲(詩:ウォルター・スコット卿)
�Iロッキンヴァ―
フランツ・ライゼンシュテイン作曲
�J人気協奏曲
ロイヤル軍事学校トランぺッター(�A)
ジェーン・グローヴァ―、クリストファー・レーイング、ビル・オディー、ドナルド・スワン(掃除機奏者、�B)
リチャード・ワトキンズ(水道ホース、�C)
エリノア・ブロン(朗読、�D)
エスター・ランツェン(霧笛)
クリストフ・エラーマイヤー(テノール、�F)
ライマンド・ヘリンクス(咳、�G)
ジル・ゴメス(看護婦、�G)
エミリー・リチャード、イアン・ウォーレス(語り手、�I)
ラクラン・A.スチュアート(バグパイプ
デイヴィッド・オーウェン・ノリス(ピアノ、�J)
アンネッタ・ホフナング(オーケストラ・メイド、�J)
フランク・レントン指揮(�A)
マイケル・マッセイ指揮(�B・�D・�E・�H・�I・�J)
トム・バーグマン指揮(�C)
マーク・フィッツジェラルド指揮(�F)
フィルハーモニア管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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