かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:アーノルド 交響曲全集1

今月のお買いもの、平成26年7がつに購入したものをご紹介しています。今回から5回にわたって、ナクソスから出ているアーノルドの交響曲全集を取り上げます。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。

さて、アーノルドって誰?という突っ込みはおそらくあるでしょう。しかし、ある一定の年代以上の方は、映画「戦場にかける橋」で良くご存じの作曲家なのです。

マルコム・アーノルド
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%B3%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%89

戦場にかける橋
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%88%A6%E5%A0%B4%E3%81%AB%E3%81%8B%E3%81%91%E3%82%8B%E6%A9%8B

子供の頃、「さる、ゴリラチンパンジ〜♪」って替え歌、歌いませんでした?もともとあの曲こそ行進曲「ボギー大佐」であり、作曲家はアルフォード(この作曲家もあまりきかないと思いますが、実は以前「マイ・コレクション」のコーナーで「海軍士官候補生」を取り上げています。マイ・コレクション:星条旗よ永遠なれ・決定版!世界のマーチ第1集http://yaplog.jp/yk6974/archive/209)ですが、それを編曲して映画音楽としたのがアーノルドなのです。

ですから、日本人にとって親しみがあるはずなのに、知名度はいま一つです・・・・・

私もそうだったのですが、某SNSのコミュで取り上げられ、実際に聴いたときの衝撃と言ったらありません!

ですから、このブログでは一度取り上げているんです。その時はピアノ協奏曲を取り上げました。

今月のお買いもの:アーノルド 2台のピアノのための協奏曲他
http://yaplog.jp/yk6974/archive/988

この上記エントリを挙げた時にも、「戦場にかける橋」を取り上げていますが、アーノルドは映画音楽だけでなく、9つの交響曲を書いたれっきとしたシンフォニストであったという点も、忘れてはならないのです。

書くときに当然、ウィキなどを調べて書きますが、あれ、交響曲を書いているシンフォニストだったのか〜と思ったものでした。ですから、機会があれば一つでも欲しいなあと思っていたら、全集があったのです。2000円程度だったと思います。しかも、ボックスなので場所も取らないですしね。

まず第1集には第1番と第2番が収録されています。第1番は1949年に作曲された作品で、3楽章形式を取る作品です。

交響曲第1番 (アーノルド)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%8E%E3%83%AB%E3%83%89)

映画音楽的な作品も多いアーノルドですが、この第1番はそんな雰囲気はあまりなく、諧謔性を持ちつつ、不協和音を多用し、一つのストーリーを作りあげています。むしろ、音楽が映画そのものと言うべき作品です。ウィリアム・ウォルトン直系の作曲家であるとすれば、むしろアーノルドの音楽はもともとこれなのではないかという気すらします。

映画音楽専門の作曲家などほとんどいませんし、特にクラシックというシーンにおいて、映画音楽だけというのはあまりないように思います。ただ、映画が大衆化していく中で、オペラに代わる芸術作品ととらえるようになってきたのは間違いないでしょう。アーノルドもそういった歴史の中で作曲をしているように思います。

私が注目したのはなんといっても楽章形式が3楽章であるという事です。シベリウスの第3番のような4楽章からの発展形ではなく、元々3楽章であるという作品であることが注目だと思っています。ブックレットの英語解説文でも触れられていないのでこれはあくまでも私見になりますが、戦後というものが大きく影響しているように思います。

勿論、1949年は日本の年号でいえば昭和24年であり、4年経っているではないかという指摘もあるかもしれません。しかし、まだ4年しか経っていないとも言えます。私も幾つか戦後すぐの作品を聴いてきましたが、この時期3楽章形式は多いのです。戦中戦後という時期に集中していることを鑑みれば、やはりそこには「解放」や「自由」というキーワードが透けて見えます。しかし、アーノルドは単純ではありません。第3楽章フィナーレには思いっきり諧謔性を持ってきて大円団にしているのです。第1楽章の厳しい短調とは正反対どころか、「え、気が触れたんですか?」と思わんばかりの展開です。

しかし、私はそこにきちんと意味があるはずだと思っています。ピアノ協奏曲を取り上げた時、私はこう述べています。

「彼はどちらかといえば、戦争に反対する立場の人でした。そのスタンスゆえか、じつはアイルランドに対しても寛容な姿勢をとっていたようです。コモンウェルス(英連邦)の国々に対するひとしい興味を持っていることは、特に英国本国を構成する3つの国、スコットランドウェールズ北アイルランドの民謡を使った舞曲を作曲していることからうかがえます。そのことがあったのでしょう、かつて植民地であったアメリカの音楽にも興味を示していたと考えても不思議はないですし、そもそもが、両親ともジャズが好きだったのです。その影響をアーノルドも受けています。」

ですから、この3楽章形式、そして最後に諧謔旋律で終わるというのは、戦争を笑い飛ばすという彼特有のユーモアであると位置づけていいだろうと思います。そんな作品を交響曲の第1番に持ってくるというところに、アーノルドらしさがあるだろうと言えます。まさしく、この第1番はアーノルドにとって、シンフォニストとしての自分はこういった交響曲を書くのだ!という決意表明であると言えるでしょう。

次の第2番は、1953年にボーンマスウィンターガーデンズ協会の依頼によって作曲されました。初演は同じ年にチャールズ・グローヴズ指揮ボーンマス市立管弦楽団(当時。現ボーンマス交響楽団)によって初演されました。此方は4楽章形式を取っており、第1番ほどの気負いはありません。第1楽章は伸びやかで、しかし絵画的であって映画的ではありません。楽章構成も古典的で、あまり冒険をすることはないんですが、しかし20世紀音楽としての特徴を十分兼ね備える作品です。第2楽章スケルツォはジャジーですし、アーノルドを映画音楽作曲家とレッテル張りしてしまうと、この作品を拒絶しかねないだろうなあと思います。この作品こそウィットに富み、アーノルドらしさが前面に押し出されている作品だからです。

二つの作品に共通しているのは、トランペットが本当によく動き回ることです。これはアーノルドがトランぺッターであったことと無関係ではないだろうなと思います。つまり、映画音楽のように制約ある作品ではなく、交響曲は比較的自分のやりたいことが出来るわけですから、当然ですがアーノルドらしさをちりばめるということが当たり前のように行われるという事になろうかと思います。所謂「クワイ河マーチ」のイメージでアーノルドの作品を判断すべからず、と言ったところでしょう。協奏曲のジャジーな面や、交響曲諧謔性や古典的、そしてトランペット大活躍などが本来のアーノルドらしさなのだと、私達に訴えていると考えていいでしょう。

演奏も、そのトランペットは美しさこの上なく、堂々としていてさらに気品すらあります。オケ全体が冷静で、とにかくアーノルドの作品を表現することに全身全霊を傾けているように思います。知的でウィットに富むアーノルドの作品を演奏するには、まさしく「情熱と冷静の間」のバランスを取らねばならず、それが絶妙です。ちょっと冷静すぎるくらいかもしれませんが・・・・・

それは端正さ故ですが、だからこそアーノルドの作品の特徴というものがはっきりと浮かび上がっています。感情が入り込む余裕がない代わりに、知的な作業からの気づきに溢れる作品というものは、演奏する場合冷静が何よりも必要です。その要件を満たしているこの演奏は、アーノルドの交響曲入門編としての役割をしっかりと果たしているように思います。

ふと気が付いてみれば、オケはアイルランドのオケなんですね・・・・・イングランドとは幾度といさかいを起こしているアイルランドですが、アーノルドという作曲家の姿勢に対して、リスペクトしている演奏ではないかなと思います。とすれば、この先第9番までを聴くのがとても楽しみな全集であると言えましょう。




聴いているCD
マルコム・アーノルド作曲
交響曲第1番作品22
交響曲第2番作品40
アンドリュー・ペニー指揮
アイルランド国立交響楽団
(Naxos 8.505178-1)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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