かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:アンサンブル・ウィッツ第13回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感を久しぶりにお届けします。最近は月1回程度はお届けできているな〜と思っております。

今回は、平成26年10月4日に聴きに行きました、アンサンブル・ウィッツ第13回定期演奏会を取り上げたいと思います。場所は四ツ谷紀尾井ホール

まず、オケの紹介から参りましょう。アンサンブル・ウィッツは東京のアマチュアオケで、音楽を楽しむことが目的の団体、とあります・・・・・

Ensemble Wits Official Web Site
http://www.ensemble-wits.jp/

指揮者の紹介を読んで、うそだろ〜って思いました。独学でも、よほど真面目に取り組んだのだな〜と、コンサートを聴いた後の今では率直に思っています。

と言うのも、一言でいえば、このオケ、うますぎるんです・・・・・

今回の演目は以下の通りです。

�@ヘンデル 合奏協奏曲ヘ長調作品6-9
�Aドリーブ バレエ音楽コッペリア」より抜粋
�Bベートーヴェン 交響曲第7番イ長調作品92

その、ヘンデルの合奏協奏曲を聴いた途端、「何?このオケ、このうまさはなんなんだ?」

演奏者は10人ほどで、しかもスタンディング。それはそれで、バロック的でいいなと思ったのですが、それよりも驚いたのは、その演奏レベルの高さだったのです。響きがアマチュアオケ特有の痩せた感じではなく、プロオケそのものだったからです。

一体この人たち、仕事何してるんだ?と思いました。仕事しながらレベルの向上を目指すのは大変ですが、不可能ではありません。でも、そういった人たちが集まれば、ある一定の割合でどうしても音は痩せてしまうのです。そこをほとんどのアマチュアオケはアンサンブルや、アインザッツをとにかく正確にすることでカバーしていますし、私が過去に「素晴らしい」と賛辞したオケもほとんどはそうやって努力し、積み上げているんですが・・・・・

このオケ、初めからすでにプロオケ並みのものを持っているんです。ヘンデルの作品が持つ、軽やかさや気品が、端正ながらも素晴らしいアンサンブルで実現されています。しかも、音が痩せることなく。

体がぞくぞくしてくるのが自分でわかりました。明らかにその演奏レベルの高さに興奮しているんです。こんなことは過去にもなかったわけはありませんでしたが、しかし今回はそのレベルも異なっていました。これはプロオケの音だ、でも、私はアマチュアオケの演奏会に来ている・・・・・

その落差に驚いているんです。それは次の「コッペリア」でさらに高まって行きました。さすがに人数が増えると、少しやせた音が混じり、特にヴィオラソロはやはりアマチュアだなあと思いましたが、でも他のオケと比べるとその差は明らかで、目隠しして「さて、この演奏は何処のプロオケでしょう?」というクイズをしたら、例えばミュンヘン・フィルだとか、パリ管だとか答えるだろうというレベルなんです。

特にコッペリアバレエ音楽でもあるので、フルオケの作品ですが、国民楽派という時代の作品ゆえのppからffまでのダイナミクスが、実に素晴らしく表現されていたのです。

コッペリア
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%83%E3%83%9A%E3%83%AA%E3%82%A2

ただ、さすがにこの曲では冒頭の出だしの金管がすこし合いませんでした。演奏者の経験かなあと思います。というのも、代わった次の作品では完璧だったからです。

そして、ベト7。普通、アマチュアオケならば、出だしは合いにくいのですが、それがほとんど完璧。少し合わないかな〜という部分もありましたが、それはすぐ修正され、完璧なアンサンブルとアインザッツ。そしてダイナミクス。オケはアップテンポでも走らず、「情熱と冷静の間」が完璧な演奏。

特に、最後第4楽章は、興奮する楽章でもあるのでオケは走りやすいんですが、それが全くなく、私としてはもう少し走ってもいいなあと思ったくらいです。でも、テンポは決して遅くなく速めでしたし、申し分ない解釈でした。でも、オケは冷静さを欠くことなく、情熱を持ったままフィナーレまで突っ込んでいきました。

第1楽章が始まった途端、実は私は涙を禁じ得ませんでした。ベト7という作品は、ベートーヴェン交響曲の中でもそれほど精神性というものが前面に押し出されている作品ではないんですが、その作品で泣いている自分がいました。その理由は、演奏がうまいからです。

このアンサンブルを生み出すのに、どれだけの練習をしたのだろうか?もしかするとプロオケの方が余暇でやられているのかもしれないが、それでもこののびのびとしたダイナミクスはいったいどこから来るのだろう・・・・・

そんなことを考えたら、その音楽の美しさで涙を流していたのです。こんな経験は他の団体の方には申し訳ないんですが、初めてでした。

最後第4楽章が終った途端、残響が消えるか消えないかのタイミングでブラヴォウ!がかかりましたが、私もかける衝動に駆られていましたので、若干遅れてかけました。

少し自分なりに演奏を分析してみると、おそらくいい結果に終わったのは、指揮者やオケの団員の、様々な知識と智恵があったからではないかと思っています。まず、ホールは紀尾井ホール。通常は室内楽を演奏することが多いホールで、東京クァルテットに縁があり、そしてフランチャイズの室内オケもあるというホールです。

http://www.kioi-hall.or.jp/

席数は800という、実は大ホールでもこじんまりとしたホールです。ですから、音の強弱をつけることに迷いがなかったという事はあるだろうと思いますし、おそらくそれを狙ってこのホールにしたと考えています。実際、高い音は強く、低い音は弱くという古典派の演奏様式も完ぺきでしたが、それもホール選択あってこそだろうと思います。団員がプロオケの団員で余暇でやっているのではないとしたら、それしか思い当りませんから。

自分たちが目指す理想を実現するには、何をどう選択すればいいのかを、良く知っていると思いました。ホールはオケにとって楽器であると言われますが、まさしくその知識を十分に身につけているオケだと思います。しかもそれが実行できるというが素晴らしいです。来年の定期の会場が杉並公会堂であるというのも、同じことが言えるだろうと思います。

東京に所謂「いいホール」と言われるホールはいくつもありますが、中には収容人数の多い、広いホールもあります。そこでアマチュアダイナミクスを十分に表現するにはやはり難しさがあるんです。それを難しくなくするには、第人数に聴いてほしいという自我を手放して、ある程度の人数でいいと割り切ることが大切なのです。そこが出来ているんです。

いや、畢竟貧乏オーケストラなんで、大きいホールでできないだけなんですよと、団員の方はおっしゃられるかもしれませんが、たとえそうだとしても、私は今のままのホール選びでいいと思います。ホールも楽器なのですから。自分たちにあう楽器を選ぶことが大切なのです。

それと、指揮者や団員の、演奏法についての知識の共有と、意思の共有が出来ているなあと思いました。ダイナミクスやアンサンブルといったものが素晴らしいためには、それだけ息が合っていないとできません。それが出来るということは、指揮者と団員の相互関係が良好であることを意味し、それは知識と意識の共有がなされないと難しいことです。これはとても幸せなことで、他の団体からすればうらやましいことなのではないでしょうか。

こんなオケに出会ったのは本当に幸せです。今後、生きている限り、聴きに行きたいと思うオーケストラです。少なくとも、ベト7は私の中では2番目の素晴らしい演奏であり、ショルティ/シカゴ響に次ぐものであると言及して、評論を終わりたいと思います。

マイ・コレクション:ベートーヴェン 交響曲第7番・第8番
http://yaplog.jp/yk6974/archive/346




聴きに行った演奏会
アンサンブル・ウィッツ第13回定期演奏会
オルグ・フリードリッヒ・ヘンデル作曲
合奏協奏曲ヘ長調作品6-9
レオ・ドリーブ作曲
バレエ音楽コッペリア」より抜粋
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第7番イ長調作品92
尾崎洋指揮
アンサンブル・ウィッツ

平成26年10月4日、東京四ツ谷紀尾井ホール

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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