かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:バッハ ブランデンブルク協奏曲1

神奈川県立図書館所蔵CD、今回と次回の2回にわたりまして、バッハのブランデンブルク協奏曲を取り上げます。演奏はヘルムート・リリング指揮、オレゴン・バッハ祝祭室内管弦楽団です。

とっても有名なこの作品、このブログではようやく取り上げることが出来ました。なぜかと言えば、ブランデンブルク協奏曲とは、6つの協奏曲から成る曲集であるから、ぜーんぶ聴きたいという私の欲がこれまでなかなか聞くのを遠ざけてきたからでした。

ブランデンブルク協奏曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%96%E3%83%AB%E3%82%AF%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2

このアルバムは番号順で収録されていますが、実際の成立は番号順ではない、という事になります。じゃあ、なんで借りたんですか?と突っ込まれる方もいらっしゃると思いますが、一応番号順に聴いてみて、何か発見があるかもと思ったからです。

図書館で借りてきて、リッピングして聴いているわけですから、成立順に聴きたければ、ちょっとだけ面倒ですが、ファイルを成立順になるように編集し直して、並び直せばいいだけですから。こういうときにこそ、パソコンで聴く意義があるのです。

ただ、この有名なブランデンブルク協奏曲、実はとても古い様式で書かれています。なぜなら、楽章構成が決して3楽章と決まっているわけではないからです。独奏楽器がありますが、むしろ様式としては合奏協奏曲(コンチェルト・グロッソ)に近いのです。成立時期がヴァイマールやケーテンという時期ですが、ヴィヴァルディがそれよりも早く3楽章形式を確立していることを考えると、バッハはまだ古い様式をここでは使っているという事が言えます。

しかし、実際に音楽を聴きますと、独奏楽器とオケが一緒に演奏されていたりと、当時としては革新的な部分も存在する、実はとても珍しい作品であるのです。ヴィヴァルディはその確立した様式で四季を作曲したのが1725年。ブランデンブルク協奏曲が成立し、おそらく御前で演奏されたのが1719年。最終稿が成立したのが1721年。つまり、この作品のほうが四季よりも古いんです。

え?とみなさん驚かれることでしょう。ヴィヴァルディのほうが古くって、バッハが新しいのですよね?と突っ込まれる方もいらっしゃると思いますが・・・・・・

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%83%90%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F

アントニオ・ヴィヴァルディ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3

じつは、それほどヴィヴァルディは先輩ではないんです。確かに年上ですし、亡くなったのもその分早いのですが、ほぼ同時代を生きた二人なのです。以前も確かコレッリなどを取り上げた時に言及しているかと思いますが・・・・・

つまり、バッハはヴィヴァルディから様々なものを学んで、自家薬篭中のものにしていった、まさにその過程を示したとも言うべき作品が、このブランデンブルク協奏曲なのです。

成立順に聴きますと、むしろ違和感が残ります。なぜなら、一番最初に成立したはずの第6番は3楽章形式で、後から成立したはずの第1番が4楽章だからです。これはいったい何を意味するのでしょう?

そもそも、このブランデンブルク協奏曲というのは、直筆譜のフランス語題名では、協奏曲ごった煮を意味しています(単なる「様々な協奏曲集」なので)。ヴィヴァルディに学んでいたバッハが、自分の成果、実力を示すために編集した作品集であるからなのです。

むしろ、当時の音楽先進地域がイタリアであったことを、このブランデンブルク協奏曲如実に語っているのです。バッハもこの後に成立させた協奏曲は、殆どすべて3楽章制の急〜緩〜急を取っています。それは上記でも触れましたが、ヴィヴァルディの様式を自分のものとした証しなのです。

モダン楽器での演奏であるこのアルバムは、とにかく軽めに演奏しています。リヒターのような重々しさはなく、ピッチがモダンであるだけであとはピリオドと殆ど変らぬスタイルになっています。それは明らかに、音楽史を俯瞰した結果に基づいていると言えます。リリンクは決して感情を排除する指揮者ではないんですが・・・・・

マイ・コレクション:リリンクのマタイ受難曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/640

それでも、適度な重々しさはあり、演奏に気品を与えています。ですから、全体のテクスチュアが、聴き手にはっきりと受け取れるのですね。

恐らく、オケであるオレゴン・バッハ祝祭室内管弦楽団は、母体がリリンクと関係のあるシュツットガルト・バッハ合奏団ではないかと思います。音楽祭で常設のオケがあるってことはほとんどありません。それは世界的に見てもサイトウ・キネンくらいで、後はほとんど一つないし複数のオケが化けるのが普通です(例えば、ベルリン・ドイツ・オペラはベルリン・フィルが母体ですし、バイロイトもドイツの複数のオケが集まってというケースが多いのです)。ですから、オレゴンの場合も、リリンクが音楽監督であれば、オケの母体はシュツットガルト・バッハ・カントライである可能性が高いわけです。ネットでは拾えませんが・・・・・

であれば、端正な演奏、しかし軽く重々しくなく、適度な重さが気品を与えるというのは納得です。まさしく、リリンクのバッハ研究の成果がいかんなく発揮されている演奏であると言えるでしょう。




聴いている音源
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ作曲
ブランデンブルク協奏曲
第1番ヘ長調BWV1046
第2番ヘ長調BWV1047
第3番ト長調BWV1048
ヘルムート・リリング指揮
オレゴン・バッハ祝祭室内管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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