かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン 交響曲全集6

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズでメンデルスゾーン交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第6集を取り上げます。

第6集は第8番を飛び越えて、弦楽のための交響曲第11番と第12番、そして1楽章しか残されていない断章が収録されています。

第11番と第12番はともに、正式な番号付きとはまた一味違う、成熟した作品となっており、メンデルスゾーンの作曲家としての果実が実を結び、零れ落ちそうな作品だと言えます。

弦楽のための交響曲 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

というのも、この二つの作品は、楽章数においても5つと3つと、それまでの作品とはちがう様相を見せており、和声的にも古典派から前期ロマン派へと傾いているからです。特に、第12番は3楽章という数字が私としては気になります。勿論、そもそもこれらの交響曲は原語では「シンフォニア」となっているように、バロックモーツァルトあたりまでの様式を意識して作曲されているのは明らかなため、なら特段おかしくはないんですが・・・・・

宗教改革」を取り上げた時、3楽章はメンデルスゾーンにとっても意味がある数字ではないかと疑問を投げかけたかと思います。そもそも、三楽章という形式は、フランスバロックにその源流をたどることができるからです。それはこのようにバッハ〜モーツァルトへと至る様式をまるで辿るかのように作曲したメンデルスゾーンに、知識として内なる世界になかったとは、私はあまり考えられないのです。

最後に収録されている1楽章のみの作品は第13番目となるはずの作品です。それは結局完成せず、未完成に終わりますし、楽譜にもそのように記入があります。それはまさしく、番号付きの交響曲、第1番が第13番目となり、メンデルスゾーンもそのように記載しているわけなのです。ここに一つのメッセージがあるように思います。

つまり、第12番は「弦楽のための交響曲シンフォニア)」を卒業する作品であり、次なる作品は「交響曲第1番(シンフォニー)」である、宣言なのではないか、という事です。この弦楽のための交響曲では最初から4楽章形式で作曲されていますので、楽章数で音楽史をなぞったとは当然言えません。それよりもそれ以外の様式においてなぞっているわけです。

その、前時代までをなぞった作品はここで終わり、メンデルスゾーン家のサロンから自分は卒業するのだ・・・・・そんな意味合いがあったとすれば、これらの楽章数はごく自然な気がするのです。それは後の作曲家達に多大な影響を与えたのではないかと思います。

まだ第8番が残っている段階でこういうのもなんですが、メンデルスゾーンのこれらの「シンフォニア」は、後期ロマン派以降の作曲家たちの作品に影響として残っているように思うのです。たとえばシンフォニア第1番(あえてこのように言います)は、まるでドヴォルザークの弦楽セレナーデそっくりです。でも、作曲はメンデルスゾーンのほうが先です。つまり、ドヴォルザークメンデルスゾーンの作品に確かに触れていたということになります。

また、これら音楽史を辿り、自らの作品に取り入れていくというスタイルは、後にブラームスによって洗練された形で確立されていきます。そしてそれは、第1次大戦後の、国民楽派の熱狂から覚めたヨーロッパ楽壇に、新古典主義音楽のうねりを生み出すことになります。

そうみてみると、有名な5つの交響曲のみならず、これ等12プラス1の、「弦楽のための交響曲」は、音楽史において非常に重要な地位を占めることになります。だからこそ、本来別々に収録されてもおかしくない作品が、「交響曲全集」というくくりにおいて一緒になっているのだと思います。今更ながら、この全集のすごさ、そして重要さを認識させられるとともに、この全集をライブラリとして所蔵した、神奈川県立図書館の司書さんたちの目の確かさに敬服します。

演奏は、弦楽のための交響曲は全てマズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウズ管ですが、本当にステディでかつ生命力あふれる演奏を聴かせてくれます。第11番第5楽章などはフーガが展開されているにもかかわらず、5楽章制の最終楽章であるということを意識してか、バロックとロマン派の統合がしっかりと鳴っていますし、作品をよく知り尽くした演奏だなと思います。ともすれば知的作業だけで終わってしまいそうな作品にもしっかりと生命が宿っており、その生命力を救い上げることに見事に成功しています。

これぞプロの仕事です。




聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
弦楽のための交響曲第11番ヘ長調/ヘ短調MWV.N 11
弦楽のための交響曲第12番ト短調MWV.N 12
弦楽のための交響曲の一楽章ハ短調MWV.N 14(第13番、譜面には番号記載なし)
クルト・マズア指揮
ライプツィヒ・ケヴァントハウス管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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