かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:リスト パガニーニ練習曲

今月のお買いもの、平成28年10月に購入したものを御紹介しています。今回はディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ナクソスから出ている、リストのパガニーニ練習曲をご紹介します。

このCDは、以前「神奈川県立図書館所蔵CD」のコーナーで取り上げました、リストのピアノ作品全集の一つで、図書館には残念ながらないので、今回買い求めた次第です。ちなみに、第42集になります。

リストと言えば、この作品を想起する方も多いのではないでしょうか。カテゴリー別では練習曲ですが、内容としてはトランスクリプションと言ってもいいでしょう。

リスト : パガニーニ大練習曲集
Liszt, Franz : Grandes études de Paganini S.141 R.3b
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2234/

パガニーニによる大練習曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%AC%E3%83%8B%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%A4%A7%E7%B7%B4%E7%BF%92%E6%9B%B2

ピアノ作品を聴くときにはあまり参考にはならないこともあるウィキですが、このCDにおいてはそうでもありません。なぜなら、このCDには、カップリングとして「パガニーニによる超絶技巧練習曲集」が収録されているからです。

リスト : パガニーニによる超絶技巧練習曲集
Liszt, Franz : Études d'exécution transcendante d'après Paganini S.140 R.3a
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/1433/

通常、最初の「超絶技巧練習曲集」のほうが難易度が高いとされています。確かに、和音の跳躍や、左右の音型など、弾きにくい要素は、聴いてみても初版のほうだと思います。ではなぜ、リストはこの二つの作品を残したのでしょう。

この作品は、リストの作品の中でもエポックメイキングな作品です。なぜなら、その後のリストのアーティストとしての人生を決定づける作品だからです。アニメ「ワンピース」ではないですが、「ピアノのパガニーニに、俺はなる!」と宣言した、その結果だからです。

で、初版ではとことん、パガニーニらしさをピアノで表現しようとし、特に「ラ・カンパネラ」では原作に忠実であろうとし、二つのヴァイオリン協奏曲から主題を採っており、通常私たちが知っている「ラ・カンパネラ」とは様相が異なります(ただ、パガニーニも聴いている私としては、違和感はありません)。でも、です。

あえて、リストは今わたしたちが知っている形へと変えました。それは結果として、演奏の難易度を下げました。けれども、芸術性はより増したのです。初版よりもシンプルであることで、内面性が充実され、リストの個性もそこに反省されることとなりました。そのため、パガニーニという作曲家を離れ、リストのピアノ作品として、新たに生命が与えられることとなりました。

それは、リストの作品が年を追うにつれ、外形的な美しさよりも、高い技術を使ってより内面を表現しようとする方向へと舵を切って行った、リストの創作の歴史そのものを予見することになったように思います。その意味でも、この二つの作品はリストの作品の中においてエポックメイキングな作品だと思います。

演奏は、ゴラン・フィリペツ。一つ一つの音がクリアで、伊達にナクソスが完璧な演奏だと宣伝はしないなあと思います。では技巧だけが光るのかと言えば、その高い演奏技術が、この二つの作品の「差」を際だたせることによって、リストが二つの作品において追及しようとしたもの、或は表現しようとしたものが自然と浮かび上がるのです。しかも、それをしなやかなタッチによって、実に喜びに満ちて演奏されているのです。

それはまるで、フィリペツがこの二つの差をまるで楽しみ、その楽しむことを喜んでいるようにも聴こえます。それは私たち聴衆にとっても、この二つの作品を聴けること、そしてその差と、その差が意味するものを楽しみ、その結果喜びを感じることを意味します。再生装置を通して、演奏者と聴衆がともに共感する時間・・・・・何と素晴らしいことでしょう!

リストの作品はともすれば、外形的と言われて蔑まれる傾向がありますが、そんなことはありません。特に晩年の巡礼の年や「伝説」を聴いている私としては、リストがこの二つによって何を言いたいのかを聴き取ろうと「対話」するので、聴いていて楽しく、至上の喜びを感じます。

是非とも、ひとりでも多くのひとに、この喜びを体験して頂ければと思います。




聴いているCD
フランツ・リスト作曲
パガニーニによる大練習曲S141/R3b
パガニーニによる超絶威技巧練習曲集S140/R3a
ヴェニスの謝肉祭S700a/R655
ゴラン・フィリペツ(ピアノ)
(Naxos 8.573458)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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