神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズで元音源ナクソスのリストピアノ作品全集を採り上げていますが、今回はその第20集を取り上げます。
一体いつまで続くんだというこのシリーズですが、まだ2ヶ月くらいは続きますので、よろしくお願いいたしますm(_ _)m
え〜、おなかいっぱいです、と言われましても、そもそもナクソスのシリーズがそうなのですから、仕方ありません。ま、食休みしてもいいと思いますが、必ず戻ってきてくださるとありがたいです。
で、第20集はベートーヴェンの交響曲トランスクリプションから一休みして、リスト自身が作曲した作品へと戻ります。ピアニストの絶頂から一線を引いたあたりの1840年代後半から1860年代に作曲された、練習曲が収録の中心となります。
第1曲目は2つの練習曲。リストが作曲家として名声を博する1860年代の作曲で、技術をこれでもかと露出させるのではなく、作品の内面性を表現するために技術を使うようになっている作品です。
2つの演奏会用練習曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/2%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%BC%94%E5%A5%8F%E4%BC%9A%E7%94%A8%E7%B7%B4%E7%BF%92%E6%9B%B2
リスト : 2つの演奏会用練習曲
Liszt, Franz : 2 Konzertetuden S.145 R.6
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2257/
ピティナの解説では絵画的という表現が使われていますが、まさしくこの作品は後のドビュッシーらに影響を与えた作品だと言っていいでしょう。
2曲目が3つの練習曲。数字では大きいので2曲目になったのかもしれませんが、作曲はこのほうが先です。リストがピアニストだけではなく作曲家として活躍し始めた1840年代の作品で、このほうが技術を露出する面が残っています。
3つの演奏会用練習曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/3%E3%81%A4%E3%81%AE%E6%BC%94%E5%A5%8F%E4%BC%9A%E7%94%A8%E7%B7%B4%E7%BF%92%E6%9B%B2
リスト : 3つの演奏会用練習曲
Liszt, Franz : Trois études de concert S.144 R.5
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/1440/
いずれも、演奏会用と名づけられているように、作品が表情豊かなので、単に「弾きました」ではなく、自分の技術をいかに表現をするのに使うのかという視点があって初めて弾ける作品ばかりです。実際、この音源でもアコーギクが存分に使われており、ひけらかすのではなく伝えると言う意識が伝わってきます。
3曲目が12の練習曲ですが、正式には「すべての長・短調の練習のための48の練習曲」と言います。恐らくツェルニ―を意識したのでしょうが、実際には12曲までしか採用されませんでした。
リスト : すべての長・短調の練習のための48の練習曲(24の練習曲)
Liszt, Franz : Etude en 48 exercices dans tous les tons majeurs et mineures S.136 R.1
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/2148/
かつ、実は以前述べていますが、超絶技巧練習曲の元となった作品です。
超絶技巧練習曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E7%B5%B6%E6%8A%80%E5%B7%A7%E7%B7%B4%E7%BF%92%E6%9B%B2
驚くことに、この12の練習曲の方がより後半生の作品に近いのです。リスト作品の本当の姿とはいったいなんでしょう?個人が重視され始めた時代において、リストの作曲に対する苦悩がこれからは見て取れます。本当は技術をひけらかすようなことなんてしたくなかったのではないでしょうか。でも、ファンがそれを求めればする時代です。それで生計を立てていたのですから。でも、リストは本当はメンデルスゾーンのような作品を、もっと高度な技術を持って作曲したかった・・・・・私には、そんなリストの声が聞えます。
その次には、サロン風小品が二つ並びます。元の音源ではサール番号は一つのようですが、ピティナを引きますと二つになっており、それぞれ関連しているが独立した作品となっています。この二つの方がより激しく、ともすれば技術をひけらかすような作品となっています。
最後がマゼッパ。元音源ではサール番号は136となっていますが、ピティナでは138で、ウィキでも一緒なので、138を採用します。つまり、超絶技巧練習曲は、1840年代の幾つかの作品が元となっていることが、これではっきりするわけなのですね。その意味では、これらのカップリングは、リスト作品の本当の顔を知ってほしいと言う、編集側の意思が見え隠れします。
演奏はウィリアム・ウルフラムですが、超絶技巧だから必死に弾いている感じなのかと言えば全然そうでななく、涼しい顔をしています、軽めのタッチで、まるで歌うよう。リストの本当の「心」は、多分こうなんじゃない?と言わんばかりです。それが私たちに強烈な印象を残し、聴きながら作品の背景を見ていきますと、なるほど〜とうなずく演奏なのです。
私自身も、リストという作曲家を勘違いしているのではないかと、頭をガツンを叩かれたような音源です。
聴いている音源
フランツ・リスト作曲
2つの演奏会用練習曲S.145/R6
3つの演奏会用練習曲S.144/R5
12の練習曲S.136/R1
サロン小品 - 仕上げの練習曲S.142/R4a
怒りをこめて - 仕上げの練習曲S.143/R4b
マゼッパS.138/R2c
ウィリアム・ウルフラム(ピアノ)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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