かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、リストのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回はその第2回目。第2集を取り上げます。

第2集には有名な「超絶技巧練習曲」が収められています。誠にヴィルトォーソな題名で、いかにもリストらしいのですが、この作品は実は「リストらしさ」というだけではないんです。

超絶技巧練習曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E7%B5%B6%E6%8A%80%E5%B7%A7%E7%B7%B4%E7%BF%92%E6%9B%B2

リスト : 超絶技巧練習曲
Liszt, Franz : Etudes d'exécution transcendante S.139 R.2b
http://www.piano.or.jp/enc/pieces/1420/

そう、この作品はまず、バッハ・リスペクト、あるいはベートーヴェン・リスペクトから始まっている、という点を押さえておく必要があるように思うのです。

バッハの「平均律クラヴィーア」を目指したことは明白で、それはショパンもそうだったように、リストもそうであったと言えるでしょう。さらにリストにはベートーヴェン・リスペクトがある訳で、それがヴィルトォーソな練習曲、まさに「調節技巧練習曲」に至ったと言えます。

それがよく分かる作品こそ、第4曲目である「マゼッパ」だと思います。マゼッパはまずピアノ作品として成立しますが、その後管弦楽作品の交響詩として成立します(神奈川県立図書館所蔵CD:リスト 交響詩http://yaplog.jp/yk6974/archive/831)。そののちさらに編曲されたのが、この超絶技巧練習曲第4曲なのですが、その変遷を見れば、まるでバッハだと言えます。

リストが生きた時代、オーケストラを聴くことは贅沢だったのです。それよりも編成が小さいものがもっと身近であり、そしてその代表として、発達著しいピアノがあったのです。ですから、モーツァルトメンデルスゾーンと異なり、時代的には前期ロマン派から後期ロマン派の間を生きたリストは、弦楽四重奏曲ではなく、ピアノを選択したと言えるでしょう。

どの時代の作曲かも、ベートーヴェンを除けばほとんどの作曲家が、時代の好みに合わせた作品を書いており、リストもその例外ではありません。その好み、特にサロンで好まれた編成が、弦楽四重奏といった弦楽器を中心としたものからピアノ一つに変化しようとしていた時代だったのです。ですから、管弦楽作品をピアノ曲へと編曲するというのは、特段不思議なことではなく、むしろバッハ以来の伝統にのっとっただけとも言えるのです。

バッハ無視のように見えて実はそうではなく、そう見えるのは時代が好む編成が変化しただけ、なのです。練習曲として非常に高いレベルの作品であり、難曲と言われますが、それはもともと管弦楽作品であったマゼッパが「練習曲」として入っている点からも言えるでしょう。なぜマゼッパが3段に楽譜が書かれているのか・・・・・それは、ピアノでできるだけオーケストラを再現しようとしたからだと、私は見ています。

その意味では、ベートーヴェンが難しくてもそのままにしたという、ハンマークラヴィーアを作曲した時のエピソードと重なります。リストもこのマゼッパを、自分の「ハンマークラヴィーア」にしたのでは?と思います。それなら、腑に落ちます。

それだけの濃い内容が、この作品には詰まっている・・・・・それを練習としてマスターしてほしい、その「想い」が、この作品からはひしひしと伝わってきます。演奏者のイェネ・ヤンドーはこのシリーズでいくつかのアルバムを担当していますが、実に端正ながらも生き生きとしのびのびとした演奏を聴かせてくれます。神々しさや荘厳さが存在しつつ、そこには神々ではなく、人間がいる・・・・・

誠にロマン派らしい内容を、実に愚直に演奏で表現しているように思います。荘厳さや神々しさが表現として入ってくればそれだけ人間がどこかへ行ってしまいがちですが、そうならずにしっかりと、人間をそこに存在させているのは見事です。両立が難しいものを実に両立させており、私達日本人が知らない実力あるピアニストが、星の数ほどいることを私達に教えてくれます。




聴いている音源
フランツ・リスト作曲
超絶技巧練習曲集S139/R2b(1851年版)
イェネ・ヤンドー(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村