神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、メンデルスゾーンの交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第5集です。第4集から第8集までは弦楽のための交響曲が収録されており、この第5集では第7番、第9番、第10番が収録されています。
弦楽のための交響曲は番号順に成立したとされているので、番号順に聴くことはその変遷をたどることになる訳なのですが、収録の都合上この第5集だけは第7番の次に第9番、第10番がくるという内容になってしまっていますが、それでも作品の変遷をたどるという特色はいささかも損なわれてはいません。
この第5集に収録されている3つの作品のうち、きちんと複数楽章がある第7番と第9番はその完成度の高さも素晴らしく、若き日のメンデルスゾーンの天才ぶりを象徴する作品群となっています。
メンデルスゾーンはよく、当時モーツァルトの再来だと持てはやされたとありますが、良く知られている作品からは意外とその具体的な像が見えにくいかと思います。ある程度の年齢であれば経験もある訳ですから、そもそも才能があればモーツァルトくらいのレヴェルになってもおかしくないという考え方もできるからです。
私たちが知っている作品はさすがにメンデルスゾーンが大人になってからの作品が多いのですが、この弦楽のための交響曲はメンデルスゾーンが12歳〜14歳にかけて作曲したものなのです。バッハの対位法が存分に採用されているのがこの第7番と第9番だと言えますが、それでも音楽は前期ロマン派です。バッハだけではありません。時には大バッハの息子であるカール・フィリップ・エマヌエル、つまり多感様式が採用されていたり、モーツァルトだったりするわけですが、それらの影響がしっかりと前期ロマン派の音楽で統合されている、その点こそモーツァルトの再来と言われるゆえんだと判断していいと思います。
弦楽のための交響曲 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)
特に第9番は演奏時間も長く長大な作品となっており、5つの交響曲を予感させるに十分です。この1曲だけでも、5つの交響曲と共に収録されたのは意味があると言えるでしょう。
第10番は1楽章しかない作品ですが、恐らく他の楽章が失われたと考えるのが相当なのではないかと思います。楽章がつながったような感じが聴いていてしないのです。恐らく、この1楽章だけが残されたのでしょう。
マズア、ゲヴァントハウスの演奏は生命力がありつつ、気品を失わなっていません。しっかりと演奏すれば5つの交響曲に匹敵することを証明してみせています。図書館に収蔵されるにふさわしい名演だと言えるでしょう。
聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
弦楽のための交響曲第7番ニ短調MWV.N 7
弦楽のための交響曲第9番ハ長調「スイス」MWV.N 9
弦楽のための交響曲第10番ロ短調MWV.N 10
クルト・マズア指揮
ライプツィヒ・ケヴァントハウス管弦楽団
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