今月のお買いもの、平成29年9月に購入した、ハイレゾ音源のバレンボイム指揮シュターツカペレ・ベルリンのベートーヴェン交響曲全集から、第3番「英雄」を取り上げます。
ここまでの2つの交響曲の演奏が素晴らしかっただけに、第3番にはかなりの期待を込めてしまうのですが、過度な期待は禁物です。スウィトナーが指揮したものとほぼ同じ程度のテンポに、最初は拍子抜けしますから。
しかし、テンポはほぼ同じでも、他の部分の表現力は、同じオケとは思えないほど、がらりと変わり、荘厳で熱があり、それでいて冷静な、素晴らしい演奏に仕上がっています。
特にすばらしいのがフレージング。バレンボイムと言えば、元々はピアニストなんです。ですから、むしろカラヤンのような快速になってもおかしくないんですが、テンポはいい感じにしつつ、フレージングを大切にするなんざあ、あなたホントにピアニスト?って感じです。素晴らしい!
スウィトナーだと落ち着いてしまって聴こえるものも、バレンボイムですとアグレッシヴに聴こえるんです。オケ、同じです。こういった演奏を聴くことは本当に素晴らしいですね。
日本のオケがとよく言われますが、私はそれは団員の表現力ではなく、事務局がだらしがないだけだと思っています。もし団員を言うのであれば、異なる他者を受け入れようとしない、偏狭な姿勢であると言えるでしょう。ヨーロッパは個性を大切にするので、旧東独であったにせよ、その間柄培ったアンサンブルの仕方は大切にしつつも、異なる他者を迎え入れることで自分たちが変ることを受けれいれることができます。この演奏はその典型であると言えるでしょう。
一方で、日本のオケはどうでしょう。実力のあるオケが多い割には、個性は感じられないのではないでしょうか。素晴らしい演奏を楽しむことはできるようになりましたが、そこに何かが欠けていると感じることはないでしょうか。それが「異なる他者を受け入れられるか」と言う事なのであれば、日本のオケを物足りなく感じるのは、むしろ海外オケを聴き慣れていれば当然だと言えるでしょう。
でも、それは私達聴衆が望んできたことなのです。海外オケと同等の実力を、日本人のみで、と。それは私たちの愛国心なのか、それとも国家主義なのでしょうか。私達自身、胸に問う必要があるでしょう。日本にあるオケであり、私達日本人が支えるのであれば日本のオケであり、そこに集う団員がどこの国籍であれ、日本のオケの団員であるということを誇りに持つことを、私達は否定し続けてきました。その結果が、個性の欠如であり、何かが物足りず、国家主義に走らないと自尊心を満足できないのであれば、それは私たち自身に原因があります。
そんなことを、この演奏は気づかせてくれます。シュターツカペレ・ベルリンはそれほど外国人演奏家が多いとは言えませんが、それでも異なる他者との交わりの中で、どんな化学反応があるのかを楽しむだけの余裕があります。これがヨーロッパの伝統です。そこに私たちは気づいているでしょうか。
まさに「英雄」という作品であるからこそ、注意が必要なのですが、バレンボイムも、シュターツカペレ・ベルリンも、その注意を怠らず、しっかりとした骨太の演奏に仕上げています。ハイレゾだからこそ、その細部がしっかりと浮かび上がり、作品の素晴らしさが自然と演奏から滲み出るという点もあるかもしれません。
聴いているハイレゾ
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第3番変ホ長調作品55「英雄」
ダニエル・バレンボイム指揮
シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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