かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハチャトウリャン ピアノ協奏曲他

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はハチャトウリャンのピアノ協奏曲を取り上げます。

ハチャトウリャンの作品ばかりを収めたものを御紹介するのは、多分これが初めてだと思います。勿論、世の中にはハチャトウリャンの作品集のCDはそこそこあるわけですが・・・・・特段、知られていない作曲家でもないからです。

このアルバムの最後にはガイーヌが収録されていますが、むしろそれでめちゃ有名な作曲家ですし。

アラム・ハチャトゥリアン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3

このブログでも、名曲集でまさにガイーヌが入っていたために紹介しています。

マイ・コレクション:剣の舞 管弦楽名曲集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/395

剣の舞が聴きたくて買った上記エントリのCDで、剣の舞だけではなかったため、以前から他の作品も入っていたらとは思っていましたが、何と、ピアノ協奏曲で実現するとは思いませんでした・・・・・

そもそも、この音源を借りたのも、ハチャトウリャンの管弦楽作品全体への興味からです。その切っ掛けは上記エントリのガイーヌでした。その意味では、このアルバムは出会うべくして出会ったと言えるでしょう。

ハチャトウリャンのピアノ協奏曲は、作曲が1936年という時代を反映してか、初演は旧ソ連で行われましたが、すぐ欧米でも初演され、瞬く間に広がっていきました。

ピアノ協奏曲 (ハチャトゥリアン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%A2%E3%83%8E%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%8F%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3)

基本、私はハチャトウリャンの作品を旧ソ連の作品とは聴きません。あくまでも、グルジアジョージア)の作曲家という位置づけです。確かに、勉学はソ連が設立したアカデミーですが、ハチャトウリャン自身は自分がアルメニア人であるという意識と、グルジアの国民という意識を最期まで捨てなかった人です。旧ソ連の作曲家の中でも特に民族色の強い作曲家です。そのせいもあって、欧米でもたくさん演奏された作曲家です。

実際、あまりクラシックを知らない人でも、ショスタコーヴィチよりもハチャトウリャンのほうが、発音しにくいはずなのによく知られているはずです。それはハチャトウリャンが基本的に国民楽派に連なる作曲家だと言えるからです。それは第二次世界大戦を連合国が戦い抜く中で、宣伝効果をもったものでもあったわけです。

そのせいもあって、最近では旧ソ連の作品に親和性を持つ人たちはハチャトウリャンよりもショスタコーヴィチを好む傾向がありますが、私としてはどちらも好きなんです。その割には、ショスタコーヴィチに傾いていたので、今ではハチャトウリャンも聴くようになっています。

このピアノ協奏曲は、映画音楽的な部分もありつつ、民族色を反映した作品です。その意味では、ラフマニノフの影響も見える作品で、20世紀音楽の影響もしっかりと受けている、正統派の作品だと言えるでしょう。

続く「仮面舞踏会」は有名な作品。もう説明はいらないと思いますが、一応ウィキを。

仮面舞踏会 (ハチャトゥリアン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%AE%E9%9D%A2%E8%88%9E%E8%B8%8F%E4%BC%9A_(%E3%83%8F%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3)

この作品の特色と言えば、オペラあるいはバレエ音楽からの組曲だと思いがちです。ここに収録されているのは確かに組曲なのですが、その組曲の原曲は、劇音楽だと言う事です。確かにバレエ音楽的な部分が第1曲目の「ワルツ」にはあるので勘違いしますが、実は劇音楽なんです。今風にもっとわかりやすく言えば、劇音楽とは、サウンド・トラックです。それを組曲へと再構築したのが、この作品と言うわけです。それはそれで、ハチャトウリャンの創作が多岐にわたっていることでもあります。この有名な作品をもともと劇音楽なんだーと聴きなおしてみると、また違った印象があると思います。

最後が、以前も取り上げたことがある「ガイーヌ」。名曲集よりも1曲ふえて4曲収録されているのは嬉しいですね。一度、しっかりと全曲を聴いてみたいと思っています。とは言え、この作品の成立過程や、成功した時のことを踏まえますと、そうなかなか簡単ではないんですが・・・・・

ガイーヌ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%8C

全曲はこのように、第2次世界大戦時のソ連社会を色濃く反映しているんですね。そのため現在ではなかなか全曲版にお目にかかれません。とはいえ、私はそろそろいいんじゃない?って思うんです。だって、それはハチャトウリャンが悪いのではなく、そのように要請し、強制したソ連当局が悪いんでしょ?プロパガンダそのものだからなかなか西側世界が受け入れられない部分もあるでしょうし、現在のロシアでも、スターリンがやったことを考えるとという意識もあるでしょう。でも、それでいいのかなあって思う私がいます。言うことをきかなければ殺された時代です・・・・・

先日、アンジェイ・ワイダ監督がなくなりましたが、「カティンの森」を作った監督なら、ハチャトウリャンをどのように描くだろうかと考えます。色々問題作ですが、バレエ音楽ということで、じつはクラシックの伝統を真正面から受け継いだ作品でもあります。そのような作品の方が「プロパガンダには向いている」と言うことを私たちが知るだけでも、この作品を聴く意味は充分あると思うんですがねえ。民俗色も強い作品ですし、少なくとも外面的には中央政府が各共和国を尊重しようとしていた証拠でもあります。ただ、じっさいはそうでもなかったわけですが。スターリンが指導者でなかったら、そもそも、ボリシェビキが政権を握っていなかったら、或はロシア革命が無かったら・・・・・これ等の作品を聴いて、そんなことまで考えられるようになれば、それもまた私たちにとって素晴らしい思考世界を提供してくれることでしょう。

演奏するはピアノがオーベリアン。アメリカ人である彼は旧ソ連へ留学して名だたる演奏家に師事したピアニストです。民族色の強い作品を豊潤に演奏し、生命力を宿らせ、西側の演奏家でありながらも、まるでソ連演奏家が弾いているかのような錯覚に陥ります。オケはスコティッシュ・ナショナル管弦楽団で、このブログでも何度かご紹介している、イギリスの素晴らしいオケ。指揮するはネーメ・ヤルヴィと、これまた渋い組み合わせです。ヤルヴィとスコティッシュ・ナショナル管のコンビはまことに息の合ったもので、その饒舌な演奏が作品に艶を与え、素晴らしいアンサンブルが綾を生み出し、豊潤で美しい演奏をきかせてくれます。それはまさに、音楽とは酔うものであり、楽しめたりプロパガンダにされたりするんだと言うことを、しっかりと私たちにメッセージしています。




聴いている音源
アラム・イリイチ・ハチャトウリャン作曲
ピアノ協奏曲変ニ長調
組曲「仮面舞踏会」
バレエ音楽「ガイーヌ」(抜粋)
コンスタンチン・オーベリアン(ピアノ)
ネーメ・ヤルヴィ指揮
スコティッシュ・ナショナル管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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