かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ロマン派のフルート協奏曲集

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、元音源エラートの、フルート協奏曲の歴史を辿るシリーズを取り上げていますが、今回はその中でロマン派の物を取り上げます。

ロマン派があるんだったら、その後もあるんでしょ?っていう、ア・ナ・タ。そのとーり!ありますが、もう少し先になると思います。そこまでは固めて借りなかったので・・・・・

で、ロマン派ですが、この音源では3人の作曲家の作品が収録されています。ライネッケ、メルカダンテ、ロンベルクです。

え、名前初めてききますって人も、いるかもしれません。聴衆であれば特段それは珍しい話ではないですし、日本人であればなおさらです。しかし、ググってみればおお!演奏家の人たちなら当然知っている名前なんだなあって判るはずです。

カール・ライネッケ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8D%E3%83%83%E3%82%B1

サヴェリオ・メルカダンテ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%80%E3%83%B3%E3%83%86

ベルンハルト・ロンベルク
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%B3%E3%83%8F%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF

借りてきたCDではロンベルクは「ベルナルト」ってあったのですが、恐らく間違いですね。正確にはベルンハルト、です。CDDBでもそのようになっています。

3人とも、けっこう教育などでは業績をのこしている人たちだったり、楽器や楽譜の歴史において名を遺した人たちであるわけです。唯一その作品によって名を遺したのがメルカダンテだと言えるでしょう。その上で、3人に共通する者は、その強烈な個性です。同じロマン派で知られている作曲家に引けを取らないばかりか、性格的にはワーグナークラスだと言えます^^;

ワーグナーはその作品も強烈な個性を放っていたので作品も未だに演奏されていますが、この3人は作品はそれほど個性的ではないんです。どれも美しく、時には泥臭いんですが、本人たちの個性が反映されているとは言い難いんです。まあ、体制迎合と言うか、多分、作品と自分の個性とは別物だって思っていたのでしょうね。その意味では、ライネッケの説明にあるように、ライネッケだけではなく3人とも音楽は保守的であると言っていいでしょう。

勿論、様式としてはロマン派です。決して前時代的ではないんです。ただ、ロマン派とは、ベートーヴェンやその影響を受けた人たちが切り開いた、「自分の個性を明確に作品に反映させる」という運動です。これら3人は和声的には受け継いでも、そこに自らの個性を反映させることを避けた人たち、だったんです。

ですから、演奏頻度は死後確実に下がっていった人たち、と言えるでしょう。しかし、日の目を見る時は来ます。その運動の中で、温故知新を唱えた人がいたのです。それが、ドビュッシーでした。ドビュッシーはフランス・バロックに眼を向けることで、新たな時代を切り開いた人でした。その運動がなければ、これらのロマン派の作曲家たちが顧みられることはなかったでしょう。

その意味では、ここに収録されている作品たちは、すばらしいものばかりですが、個性が少ないために埋もれたものの、近代の音楽運動の中で再評価を受けた作品ばかりだと言えるでしょう。特に私としてはロンベルクのフルート協奏曲は好きです。ベートーヴェンと同じ時代を生きた人でもあるせいか、何となくメンデルスゾーン的な雰囲気も持っており、フルートという、聴き手にとってはすがすがしい音が聴ける楽器において、実に深い感情と思考の沈殿が表現されている、味わい深い作品です。

フルートを奏するは、このシリーズでずっと独奏を担当しているランパル。私たちはナクソスの登場でランパルのようなビッグネームがこのような埋もれた作曲家の作品を演奏することを想像していませんが、このエラートのシリーズはそんなことがないことを教えてくれます。ランパルの実にステディでつやのあるフルートが表現する美しさや内面性は、さすがランパルと唸ります。私たち聴き手になじみない作品が生命力を放ち、語り始めるのです。私たちの作品をもっと味わって!と。その魔法の力は素晴らしい!これぞ、リアルな「魔笛」だと言えるでしょう。

サポートするオケも、実に素晴らしいです。バンベルクはよく知られているオケですが、モンテカルロはそうでもありませんし、ましてや歌劇場オケです。でも、この選択こそさすがだなあって思うんです。つまり、このシリーズは徹底的に音楽史を俯瞰しているんですよ。ロマン派だからこそ、ようやく歌劇場オケなんですし、バンベルクなんですよ。そのすべてと見事な饗宴を繰り広げるランパルはさすがプロですが、なおさらだからこそなぜ室内オケから大規模オケまでなの?って聴衆たる私たちも興味を持つ方が良いわけです。さすればその素晴らしい演奏から得られるものはたくさんあります。

ウィーン・フィルだからとか、カラヤンだカラとか、と言う理由で私は決して選んできませんでしたが、その選び方は一つの明確な正しい方法だと言うことを、ランパルに共感してもらっているような気がします。




聴いている音源
ロマン派のフルート協奏曲集
カール・ライネッケ作曲
フルート協奏曲ニ長調作品283
サヴェリオ・メルカダンテ作曲
フルート協奏曲ホ短調
ベルナルド・ロンベルク作曲
フルート協奏曲作品17
ジャン=ピエール・ランパル(フルート)
テオドール・グシュルバウアー指揮
バンベルク交響楽団(ライネッケ)
クラウディオ・シモーネ指揮
イ・ソリスティ・ヴェンティ(メルカダンテ)
モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団(ロンベルク)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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