かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ショスタコーヴィチ 交響曲全集9

神奈川県立図書館所蔵CD、ショスタコーヴィチ交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第9集です。第13番「バビ・ヤール」です。

この第13番は、合唱とオケが最初から登場する、様式的にはマーラー交響曲(あるいは、先日とりあげたホルスト)の系譜に連なる作品ですが、その内容はラディカルです・・・・・

交響曲第13番 (ショスタコーヴィチ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC13%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%81)

歌詞もウィキの該当ページは載っていますので、是非とも一読していただきたいのですが、その内容、共産主義の犬!等と言っている人には、到底受け入れ不可能であるかと思います。これ、完全に体制批判なのです。

しかも、もしこれがスターリンの時代であれば、確実に命がなかったことでしょう。それだけ、ラディカルなのです。でも、ちょっと前までの日本であれば、特段問題とならなかった内容です(残念ながら、今の日本ではこのような作品を発表すれば命がないでしょう)。

その、ちょっと前までの日本では問題にならないようなことを、まだまだ嫌がらせが横行する社会において、やってのけたのがこの作品の初演とという事になります。

ある意味、この作品はそれまでの交響曲の歴史上、頂点とも言えましょう。ベートーヴェンの第九や、マーラー交響曲で培われてきたものが、このバビ・ヤールで結実しているのです。ただ、あまりにもラディカルなので、そんなものは吹っ飛んでしまっていますが・・・・・

恐らく、第9番で政府が要請したような作品を書かずに、あっかんべーしたのは、このような作品を作りたかったがためだと言えるかもしれません。第九を彷彿とさせるその構造、内容は、聴く者を圧倒します。

それまでの歴史に裏付けられた歌詞。引き立てる音楽・・・・・交響詩のような作品で、それはそれでショスタコーヴィチの語法でもありますが、そこに明らかにこの作品では政治的メッセージを込めています。ショスタコが自分でも抑圧していたもの(でないと、社会からの抑圧に耐えきれない)が解放された結果が、此れであったと言えます。

つまり、体制に迎合したことで、ショスタコを体制の犬というのは、間違っていることを、この作品は明確に示しています。特に第1楽章や第3楽章、第4楽章では、その批判は強烈です。特に私が共感するのは、第1楽章と第5楽章です。第1楽章でフランスの士官がスパイ容疑の冤罪をかけられたことを引用して、同じことが自分の国でも行われたのだと告白し、糾弾しているのは素晴らしいと思います。日本もつい最近まで、そんな素晴らしい国でしたが・・・・・

第5楽章では、ぶれない素晴らしさです。これが社会主義国で作曲されたなどと、誰が信じましょう?でも、社会主義国で作曲されたのは史実であり、今の所、ゴーストライターが書いたという史料は出てきていません・・・・・

この作品では、あっかんべーが一つもありません。ストレートに言いたいことが表現されているように思います。本来、ショスタコーヴィチはこういったものに共感を覚える人なのだという事を、明確に私たちに示しています。

バルシャイは、だからなのか、激しさよりも端正さを重視して演奏させています。勿論、激しい部分もありますし、そのダイナミクスは圧巻ですが、それよりも、殆どの部分である、嘆きや呻き、苦しみの吐露といった部分にこそ、素晴らしいアンサンブルを要求し、徹底的に自分の祖国が犯した「過ち」を、西側のオケと自国の合唱団に表現させています。それは反語として、私達現代日本人の魂に突き刺さります。

こういった作品が聴けることを、素直に感謝できる社会が続いてほしいものです。




聴いている音源
ドミトリー・ショスタコーヴィチ作曲
交響曲第13番変ロ短調作品113「バビ・ヤール」(バスと合唱、オーケストラのための)
セルゲイ・アレクサシュキン(バス)
モスクワ合唱アカデミー
ルドルフ・バルシャイ指揮
ケルン西部ドイツ放送交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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