今月のお買いもの、5枚目はM.ハイドンのミサ・サンクティ・アロイジ他です。ミクロ―シュ・サボー指揮、ギョル・フィル他です。銀座山野楽器本店にて買い求めました。
このCDのタイトル曲である、ミサ・サンクティ・アロイジ(聖アロイジ・ミサ)は、1777年に作曲された曲です。この曲の特徴は、男声がない、つまり、女声だけであるということです。
このCDの合唱団は、ギョル少女合唱団。ソリストもソプラノとコントラルトのみです。それだけではなく、このCDには他に3曲小品が収められていますがそのどれも女声用の曲なのです。
女声用と言いますと、合唱をやっている人からすれば、近年の日本の合唱界の状況なのかと勘違いしそうですが、1777年の作品です。恐らく、聖歌隊を念頭に作曲されたものであろうと思います。
ブックレットにはそのあたりの詳しい解説がないのですが、パートが二つしかないことから、通常の合唱団の編成よりは小さなものであろうと想像できます。ミサ・ソレムニスよりはミサ・ブレヴィスに近い曲であると思います。
しかしながら、曲の演奏時間としては、モーツァルトの戴冠ミサほどの長さがありますのでミサ・ソレムニスと考えても差し支えないかもしれません。それに、クレドの構成などを見ても、ミサ・ソレムニスであろうと思います。
この奇妙なことを理解するには、この作品が作曲された、1777年という時期を念頭に置く必要があります。M.ハイドンはこのところ取り上げていますがもう一度ウィキの項目を上げておきましょう。
ミヒャエル・ハイドン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%92%E3%83%A3%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%B3
彼はモーツァルトと同じ、ザルツブルク宮廷楽団に勤めていたという事実に目を向ける必要があります。そう、この曲もコロレドの「ミサ曲は45分以内」という制限の中で作曲されたものなのです。
それでこの様式は納得なのです。M.ハイドンもモーツァルト同様に時間短縮の必要に迫られて作曲したものだった、ということなのです。
モーツァルトに比べますと残念ながらドラスティックな点が全く足りません。しかし、静かな音楽の中に静かに美しさが存在する曲です。特にクレド以降の楽曲の美しさは筆舌し難く、M.ハイドンの能力の高さをはっきりと示しています。モーツァルトがすごすぎるだけなのです。
ふたつのセクエンツィアと一つのオフェルトリウムもかわいらしく美しい曲で、セクエンツィアは1778年の11月と12月に、そしてオフェルトリウムが1787年に作曲されたものですが、どれも清潔で気品が漂っています。アマチュアでないとなかなかM.ハイドンの曲は取り上げないでしょうが、是非とももっと演奏機会があってもいい曲だと思います。
さて、演奏面ですが、ギョル少女合唱団は以前にもコダーイの合唱曲で聴いていますが素晴らしいアンサンブルです。声は少女合唱団独特ですが、それがオケと一緒になってもまったく問題がなく、軽くかつ美しい演奏になっているのが素晴らしい点です。オケも小さい編成なのでしょう、ともに各パートがしっかりと浮かび上がっていまして、形式美だけでなく音楽そのものの美しさも自然と浮かび上がっています。
こういった演奏は、特に日本のアマチュア合唱団にとっては大変参考になるのではと思います。高音部の演奏の仕方は特に、必聴です。
聴いているCD
ミヒャエル・ハイドン作曲
ミサ・サンクティ・アロイジ
オフェルトリウム・プロ・フェスト・SS・イノセンティウム
セクエンツィア・アド・フェストゥム・S.P.アウグスティーニ
オフェルトリウム・プロ・フェスト・クルスクンケス・エスターエ・ヴィルジニス・エト・マルティリス
エヴァ・マルトン(ソプラノ)
カタリン・スジョケファルヴィ・ナジイ(ソプラノ)
ズーザ・ネメス(コントラルト)
ギョル少女合唱団
ミクロ―シュ・サボー指揮
ギョル・フィルハーモニー管弦楽団
(Hungaroton HCD 11678)
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