かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:モーツァルト宗教音楽全集8

今回のマイ・コレはモーツァルトの宗教音楽全集の第8集です。聖三位一体の主日のミサK.167、シュパウル・ミサK.258、キリエK.89、オフェルトリウムK.222(205a)、オルガン・ソロ・ミサK.259の4曲とてんこ盛りです。

シュパウル・ミサとオルガン・ソロ・ミサはいずれもミサ・ブレヴィスでケッヘル番号も並んでいることから、以前はどちらがシュパウル・ミサたり得るかという論争もありました(オルガン・ソロ・ミサという記述があることもその混乱に拍車をかけていたのですが)、取りあえずその論争には決着がついて(新全集)、シュパウル・ミサについては名称廃止、オルガン・ソロ・ミサについてはそのままとなっています。この全集もそれに従っています。ただ、この二つを並べたというのは、明らかにアーノンクールが「シュパウル・ミサ」の名称を意識している証拠でもあります。

モーツァルト ミサ・ブレヴィス ハ長調K.258
http://yaplog.jp/yk6974/archive/178

モーツァルト ミサ・ブレヴィス ハ長調K.259「オルガン・ソロ・ミサ」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/179

K.259はもちろん、ベネディクトゥスにオルガン・ソロがあることからそういわれるわけなのですが、この第8集は録音がカジノ、つまり公会堂と教会と二か所で行われていますが、このK.259はその前のK.258とともに教会で録音されています。そして、聖三位一体の主日のミサとキリエ、オフェルトリウムが公会堂での録音です。しかし、いずれもオルガンの存在感があり、なおかつ合唱団のアンサンブルの細部まで浮き上がっています。アーノルト・シェーンベルク合唱団が力のある団体であるということをはっきりと証明しています。

オケもとても表現力豊かです。というと、後期ロマン派のような壮大さを想像される方も多いかと思いますが、むしろ強弱の豊かさというべきなのだと思います。アクセントをどうつけるのか、その点が本当に豊かです。そういった細かいことでも音楽は壮麗さと美しさ、そして輝きを放つのだということをこの演奏からは如実に受け取ることが出来ます。もちろん、それはもともとの音楽の素晴らしさもありますが、それだけは語れない部分がこの演奏にはあります。

特に、聖三位一体の主日のミサに関しましては、ペーター・ノイマンの演奏も持っているからこそそれを感じるのだと申し上げておきます。

マイ・コレクション:モーツァルトミサ曲全集2
http://yaplog.jp/yk6974/archive/564

このエントリでも述べました「リズムの対比」の構造が、この演奏ではさらに突き詰められていまして、モーツァルトの音楽の素晴らしさを知り尽くしているからこそできるアーノンクールの素晴らしさだと思います。

さて、このCDではミサ曲の他にキリエとオフェルトリウムが収録されています。モーツァルトの「キリエ」曲は、断片、単独と実はバラエティに富んでいますが、このキリエK.89(73k)は単独曲となっています。

K.89 キリエ ト長調
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op0/k89.html

アカペラの曲でして、まるでルネサンスにタイムスリップしたかのような雰囲気を持っています。ただ、対位法ですから当然ルネサンスの音楽ではありませんが、こういった音楽が当時確かに存在していたということは、私たちは知っておいていいのではと思います。初演ではヴァイオリンが付いたようですが、アカペラということはヴァイオリンパートはその場で通奏低音として使った可能性が高く、そもそもアカペラの曲として書かれたのだと思います。女性パートだけというのも、それで合点がいきます。聖歌隊が演奏するということを念頭においているということなのですから。

さて、面白いのはK.222「主のお憐れみを」です。この曲はCantabo in aeternum(永遠にほめ歌おう)という部分の繰り返しが特に印象的なのですが、これが第九そっくりなのですね。実は私は以前からベートーヴェンの第九はその起源をモーツァルトの音楽の分析に持つと思っているのですが、もちろんそれは確証などありません。しかし、ベートーヴェンモーツァルトの楽曲を研究していたのは知られていることですし、またモーツァルトの音楽を使って変奏曲も書いています。モーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』の「手を取り合って」の主題による12の変奏曲 ハ長調 WoO.28やモーツァルトの『魔笛』の「娘か女か」の主題による12の変奏曲 ヘ長調 Op.66などがそれです。

そのCantabo in aeternumの部分でまるで歓喜の調べのような旋律に私たちは出会います(しかも展開してます!)。その上で、この曲はその歌詞の部分はフーガになっている点に私は注目しています。しかも、ニ短調という調性!

もちろん、それだけで第九と関連付けるのは性急ですが、ベートーヴェンモーツァルトの楽曲を研究していた事実と向き合うと、もしかするとという疑念はぬぐえません。

聖節の奉献歌「主の御憐みを」 ニ短調K.222 (205a)
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op2/k222.html

こういった小さな作品にも注目すべき点がたくさんあるよと、アーノンクールはさりげなく主張しています。ついでに言いますと、ミサ曲はすべてハ長調が収録されているという点にも、アーノンクールの意図が見え隠れしています。



聴いているCD
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ミサ曲ハ長調K.167「聖三位一体の主日のミサ」
ミサ・ブレヴィスハ長調K.258
キリエ ト長調K89(73k)
オフェルトリウム ニ短調K.222(205a)「主のお憐れみを」
ミサ・ブレヴィス ハ長調K.259「オルガン・ソロ・ミサ」
バーバラ・ボニー(ソプラノ)
エリーザベト・フォン・マグヌス(アルト)
ヘルベルト・リッペルト(テノール、K.258)、ウーヴェ・ハイルマン(テノール、K.259)
アリスター・マイルズ(バス、K.258)、ジル・カシュマイユ(バス、K.259)
アーノルト・シェーンベルク合唱団(合唱指揮:エルヴィン・オルトナー)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
(Teldec WPCS-6489)



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