かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:モーツァルト宗教音楽全集7

今回のマイ・コレは、モーツァルトの宗教音楽全集の第7集です。収録曲は「クレド・ミサ」と「聖体の祝日のためのリタニア」です。

クレド・ミサは以前エントリもあげていますが、リタニアは初めてご紹介するかと思います。

モーツァルト ミサ曲ハ長調K.257「クレド・ミサ」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/182

クレド・ミサについては上記エントリで詳しくご紹介しているので、そちらを参照していただくとして、リタニアとは何かといいますと、祈祷歌の一種で、中世にて好まれた曲です。具体的なものは、以下のサイトから引用することとしましょう。

聖母マリアのためのリタニア」
K195(186d)
http://www.mirai.ne.jp/~nal/mozart_K195.htm

「『切なる願い』という意味のギリシア語に由来するリタニアは1人の先導者が主なる神や聖母マリアなどに賛美の言葉をもって呼びかけ、その1句ごとに会衆が「われらのために祈り給え」や「われらを憐れみ給え」といった折返し句をもって応えるという、応答形式による祈祷であり、箴言的な祈求からなるものである。リタニアは中世において大変愛好され、絶えず新しいものが生み出されていたようであるが、現在では「聖母マリアのためのリタニア」を含め5種が公認されているだけである。音楽史においては、16世紀末に多声声楽曲としてのリタニアが盛んに書かれるようになり、19世紀初頭にいたるまで、南ドイツやオーストリアの地域において、なかでも特にウィーンやザルツブルクにおいて、多くのリタニアが生み出された。」

このサイトはあくまでもK.195の説明ですが、ネットではこれが一番端的に説明していると思います。ただ、このCDに収録されているK.243では厳密にはその形式を守ってはいません。これは想像ですが、この曲においては先導者の言葉には音楽がついていないのだと思います。転調などはすでに中期の様相を呈しているにも関わらず、ミサ曲どうよう古い形式を保持しているというこが言えるかと思います。

一方で、このリタニアは革新的な部分も含まれていると唱える学者もいます。

K.243 聖体の祝日のためのリタニア
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op2/k243.html

確かに、この曲には二重フーガが大規模に展開されていて、それはベートーヴェンの第九の比ではありません。それでいて、きちんとコロレドの指示にも時間という意味では従っています。ですので、私は単純に上記サイトでアインシュタインが言っていることにはくみしませんが、ド・ニの意見には傾聴すべき点がいくつもあると思います。

その意味で、ド・ニの言う「モーツァルトにとって信仰の中心である聖体において具現される「受肉」による神の慈愛の神秘が、これほど深く音楽になっている曲は、彼のミサ曲の「御からだを受け」を除いては見当たらない。 この『尊き聖体の秘跡のための連祷』は、モーツァルトの宗教音楽のなかでも、もっと頻繁に演奏されてよい曲の一つであろう。」という意見には全く同感です。彼が言うようにこの曲には先進性がちりばめています。

ミサ曲を取り上げる合唱団はいくつもありますが、リタニアを取り上げる合唱団はさすがにアマチュアでもほとんどないのではないでしょうか(プロは残念ながら全くなので論外です)。しかし、こういった一見形式的に古くさいように見えて実は一歩先を行くという作品がモーツァルトにはピアノ協奏曲などにも多いことを顧みる時、その点を重視してリタニアを取り上げることはとても大事なのではないかと思います。

モーツァルトはリタニアを4曲書いていますが、実はこの全集の中で初めて取り上げられるのが、最後のリタニアであるこのK.243です。ミサ曲でも2番目に早くも戴冠ミサを取り上げたり、比較的成立が遅い作品から取り上げている傾向がこの前週にはあるように思います。まるで遡っていくように・・・・・そういう編集もアリかもしれません。モーツァルトの音楽の「根源」を探す旅のようで、それもまた面白きかな、という気がします。

実は、この第7集はすでに私は別個にCDで持っているのです。それが実はこの全集を購入するきっかけになってもいます。以前取り上げたノイマンの全集が廃盤となり、次善のものを探していた時に巡り合ったのが、この第7集のクレド・ミサの演奏だったのです。

特に、クレド・ミサのクレドの、八分音符を十分に跳ねさせている演奏は、この曲がモーツァルトらしく構造的に素晴らしい点を吹かびあがらせることに成功しているからなのです。動き回るオケに、ゆったりと歌う合唱。しかしべったりではなく、はねていることで緊張感のある演奏が、この曲が名曲であることを雄弁に語っているからです。

しかし、全集に収録されている演奏が必ずしもすべて跳ねているわけではないことに、購入後残念に思ったのですが、今では、それもまた味があると思えるようになりました。

つくづくこの全集は、長く聴き続けないとその真価が分からないものなのだなと思いますし、モーツァルトの宗教音楽そのものが、そういった側面を持つのだろうと思います。



聴いているCD
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ミサ曲ハ長調K.257「クレド・ミサ」
聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調K.243
アンジェラ・マリア・ブラーシ(ソプラノ)
エリーザベト・フォン・マグヌス(アルト)
デオン・ファン・デル・ワルト(テノール
アリスター・マイルズ(バス)
アーノルト・シェーンベルク合唱団(合唱指揮:エルヴィン・オルトナー)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
(Teldec WPCS-6488)



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