神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、モーツァルト全集から宗教音楽を取り上げていますが、今回はその第12回目です。いよいよ、ミサ曲以外の作品が並んできます。指揮はふたたびケーゲル、ライプツィヒ放送交響楽団他の演奏です。
収録されているのは元后、童貞聖マリアのためのリタニア 変ロ長調K.109と聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調K.243、そして主日のための挽歌(ヴェスペレ)ハ長調K.321の3曲です。
やはり、この全集でもミサ曲以外となるとリタニアとヴェスペレがまず来ました。ミサ曲以外でのモーツァルトの宗教曲と言えば、基本的にこの二つであることは間違いありません。
さて、ここではケーゲルは淡々と音楽を鳴らすことに傾注していまして、ミサ曲で見られたような激しさというものは影をひそめています。その代り、アインザッツの鋭さなどが演奏における特徴となっています。そのため、テンポ的にはゆったりとしているにもかかわらず、冗長な感じを受けません。
勿論、一つ一つの作品がそれほど長くないということも有りますが、それにしても聴いていますとあっという間に時間が過ぎてゆきます。それだけ、惹き付けられる演奏であるといえるでしょう。
さらに、軽めの演奏もケーゲルにしては珍しいと思います。特にK.243の「活けるパン」でのテノールとオケの軽さは爽快で、快活という言葉がぴったりです!
管弦楽曲におけるケーゲルの演奏を知っていらっしゃる人からしますと驚かれるかもしれませんが、全くもって快活かつ軽快です。それでいて、荘重な部分もしっかりとあって、全体的なバランスがとてもいいのが素晴らしいです。
ともすれば、宗教曲は重々しく演奏するのが基本だといいたいような演奏が多い中で、ケーゲルのこの姿勢はとても評価できると思います。その点では、ミサ曲よりもむしろミサ曲以外のほうがケーゲルは聴くべき演奏が多いように思います。ミサ・ブレヴィスですと抜かしている部分があるわけですが、ミサ曲外のジャンルではまず信用して聴いていられます。
宗教曲を聴いているにもかかわらず、なぜか気持ちが愉しくなってくるような、そんな演奏である上に、緊張感も適度に持っていて、このどこに突っ込めばいいのでしょう?合唱団も実力を伴っていますし、へたすればピリオドのアーノンクールよりも素晴らしいかもしれません・・・・・
勿論、この演奏もピリオドの影響を恐らく受けているでしょう。ピリオド演奏というのは実はけっこう歴史は古いもので、日本でブームになった以前から存在しています。ただ、現在まで全集で出ているのはこのケーゲル以降に収録されたアーノンクールのものしかピリオドではないのが現状です。ですから、私はアーノンクールの全集にこの演奏は影響を与えたという訳でして、実際にはピリオド演奏の歴史から言えば、ケーゲルも充分ピリオド演奏の影響を受けているといえるかと思います。
それができたのはひとえに東ドイツという国の存在が大きかったでしょう。いったん宗教的なイメージから離れてみて、純粋にスコアと向き合ってみた結果、たどり着いたのがこの演奏なのだとすれば、いろいろ納得できる点が軽さやテンポ、緊張感などに見いだすことができるからです。その上でモダンならではのバランス感覚。それがさらにピリオドにも影響を与えてゆく・・・・・ヨーロッパの文化・芸術の深さを感じることができる演奏だと思います。
聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
元后、童貞聖マリアのためのリタニア 変ロ長調K.109(74e)
聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調K.243
主日のための挽歌(ヴェスペレ)ハ長調K.321
レナーテ・フランク=ライネッケ(ソプラノ、K.243)
白井光子(ソプラノ、K.109、321)
アンネリース・ブルテマイスター(アルト、K.243)
ハイディ・リース(アルト、K.109、321)
エーベルハルト・ビュヒナー(テノール)
ヘルマン・クリスティアン・ポルスター(バス)
ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:ホルスト・ノイマン)
ヴァルター・ハインツ・ベルンシュタイン、フォルカー・ブロイティガム(オルガン)
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ライプツィヒ放送交響楽団
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