かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト全集より 宗教音楽1

今回の神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーは、モーツァルト全集に収録されているモーツァルトの宗教音楽全集です。

モーツァルトの宗教音楽については、すでに「マイ・コレクション」のコーナーでピリオド演奏のものをご紹介していますが、その上でなぜこれを借りたのかといえば、この全集のほとんどがモダンだからです(残念ながら大ミサハ短調だけピリオドです)。

宗教音楽のモダン演奏であれば、古い巨匠の指揮で結構あるのでは?と思う方も多いかと思いますが、ところがそれがそうでもありません。数の上では確かにモダンの演奏は数多く存在しますが、モーツァルトの宗教音楽(特にミサ曲)を俯瞰するとなると、そのほとんどは比較的新しい、しかも旧西側ではなく東側の演奏しかないのが現状です。

この全集もそれゆえに、ベートーヴェンブルックナーの演奏で名高いケーゲルの指揮、ライプツィヒ放送交響楽団が比較的大部分を占めます。ただ、それは私の好きな合唱団でもある、ライプツィヒ放送合唱団が合唱を務めるという点で、素晴らしいことでもあります。

旧東側の合唱団は、ビブラートがない素直な発声が特徴で、アマチュア合唱団に入っていた時分は私もそれを理想としてうたっていました。特に、高音部でファルセットに逃げないのが素晴らしく、透明感のある演奏となるのが特徴です。

この全集は、かつてフィリップスから出ていた分売をひとまとめにしたという経緯から、作曲順でもなく、旧全集の番号順でもないのが残念ではあるんですが、モダン演奏の一つの解釈を示している点で、とても貴重な音源です。

まず、第1集の第1曲目はK.66「ドミニクス・ミサ」です。1769年に作曲されたこの作品は、重厚な形式を持ち、ミサ通常文にしっかりと音楽が付けられている作品で、私も好きな作品の一つです。ここでケーゲルは、重厚ではあるんですが、決してべったりしすぎない演奏を心がけています。八分音符の跳ねる感じを重視し、しかしそれをしすぎないことをオケ、合唱団共に徹底させています。それがピリオドの跳ねすぎるような演奏を聴いて慣れてしまっても、それほど違和感がないことへとつながっています。

この点、私は初めて聴いたときにビックリしました。それは音楽のメリハリへとつながっていて、モーツァルトの音楽に生命を吹き込んでいます。そもそも、ロマン派の時代モーツァルトの宗教音楽はあまりにも派手すぎと批判された歴史がありますが、しかしそこにこそ彼の宗教観と信仰心があることを、社会主義者であったケーゲルに教えられているのです。

実は、私はこの全集がケーゲルだったことから借りたという側面があります。それはすでにご紹介している、シューベルトのミサ曲を聴いて同じ感想を受けたからです。そしてそれがモーツァルトでも一緒であることに、衝撃を受けました。

マイ・コレクション:シューベルト スターバト・マーテル
http://yaplog.jp/yk6974/archive/871

私はこのエントリで、こう述べています。それはこの音源でも全く一緒だと言っておきたいと思います。


演奏面では、ケーゲルはとても細部まできちんと表現することをオケや合唱団に求めつつ、ドラマティックな音楽を創り上げています。ロケーションは記載がないですが、恐らくキリスト教会であろうと思います。残響が目立つのがその証拠ですが、それでも細部が分かるのは素晴らしい点だと思います。


次のK.49もおなじことが言えます。その上で、実はもしケーゲルを社会主義者として批判するのであれば指摘してほしいのに多くの人が抜け落ちている点が、このK.49ではグローリアとクレドの冒頭語句が抜けているという点なのです。なぜ抜けているのか?それは楽譜に書かれていないからです。

しかし、西側の団体であるピリオドのアーノンクール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスは、そこを省略していません。楽譜には無くても、実はそこはグレゴリア聖歌の旋律から引用してソリストがアカペラで歌うことが暗黙の了解になっているからです。しかしそこをケーゲルは抜いています。それは明らかに、当時のイデオロギーが関わっています。その点でケーゲル、あるいは旧東側の団体を批判することはないように思います。

その点、現在ではそんな対立はほとんどなくなりました。だからこそ、以前から私はモダンの演奏を期待すると常々述べているわけなのです。社会主義に異を唱えたければ簡単な話です。モーツァルトの宗教曲をモダンできちんとした形で演奏する、それだけです。相手を非難する必要も、叩き潰す必要もありません。この日本ではそれを実行することが憲法で認められています。

このケーゲルの全集はそれを私たち日本人に突きつけていると、まず第1集で述べておきたいと思います。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ミサ曲ハ長調K.66「ドミニクス・ミサ」
ミサ・ブレヴィス ト長調K.49(47d)
エディト・マティス(ソプラノ)
ローズマリー・ラング(アルト)
ウーヴェ・ハイルマン(テノール
ヤン=ヘンドリク・ローテリング(バス)
ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:イェルク・=ペーター・ヴァイグレ)
ミヒャエル=クリストフリート・ヴィンクラー(オルガン)
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ライプツィヒ放送交響楽団



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