かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト全集から 宗教音楽4

神奈川県立図書館所蔵CD、今回はモーツァルト全集からの宗教音楽の第4集です。「孤児院ミサ」とオルガンソロ・ミサの2曲が収録されています。

孤児院ミサはミサ・ソレムニスですが、オルガンソロ・ミサはミサ・ブレヴィスです。しかし、歌詞のつけ方はまるでミサ・ソレムニスのようです。グローリアにはアンティフォナがないからです。

ですから、この演奏ではどちらでもグローリアは「グローリア イン エクセルシス デオ」で始まります。ただ、クレドだけは異なり、「オルガンソロ・ミサ」では旧東側らしく「パートレム オムニポテンテム」から始まってしまいます。

これが、私がおかしいと指摘している点なのです。それは歌わないと!

ただ、演奏は素晴らしいです。八分音符を跳ねるようにしてリズムカルな演奏は宗教曲である二つに生命力を与えていますし、その上でミサ・ソレムニスである「孤児院ミサ」では、べったりとした演奏も取り混ぜて、荘重なのに生き生きとした作品に仕上げています。

この点は、恐らくケーゲルが素晴らしい点ではないかと思います。唯物的にスコアリーディングをすれば、確かにケーゲル的な結論にならざるを得ないでしょうから。それは他の古典派の作品がどのように演奏されているかを考えた時、容易に導き出せる結論でもあります。

それを、西側は宗教的にとり扱いすぎてきたきらいがあります。モーツァルトの時代は確かに今よりも宗教的権威が力を持っていた時代ではありますが、宗教的権威の力というものは、すでにルネサンスを頂点として弱まっていましたし、何よりオペラ的な楽曲が好まれた時代で、モーツァルトのミサ曲もその影響を多分に受けているわけです。

その証拠に、オーソリティであるアーノンクールも同じアプローチをしています。これは単に西側の一員としてケーゲルに対抗すべく真似したのではなく、史料とスコアリーディングをした結果、ケーゲルの解釈を認めざるを得ないという結論に達したからだとわたしは思います。アーノンクールは若干リットさせていますが・・・・

ケーゲルはそのリット、つまりリタルダンドが全くありません。最後までテンポは等速で演奏し、フィナーレへ突っ込みます。社会主義リアリズムによって、一歩引いて冷静に分析したからこそ辿り着いた結論であろうと思います。それは私も評価したいと思います。それを否定してしまうと、史実というか、クラシック演奏における約束事が間違っていることになりかねないからです。それは伝統を無視することに繋がってしまいます。

其れよりも批判すべきは、アンティフォナを歌わせていないという点に尽きるのです。私がネットで検索した限りでは、そこに言及するブログは一つもありませんでした。それは、宗教曲を「演奏した」経験がないことを如実に語っています。

だから私はことあるごとに、アマチュア合唱団の奮起を問うているわけです。それが日本で実現できるのは、手弁当のアマチュアだけだからです。実際、海外では日本のアマチュア合唱団はどこでも高評価です。なぜでしょう?それは、きちんと伝統というものを知って演奏しているからにほかならないからです。ラテン語の発音、アンティフォナを省略しないことなどがその理由です。その上で、海外まで演奏に行く団体は大抵それなりに実力もあります。それは評価するというものです。

ところが、国内ではまったく評価されない。ここに、日本と海外とのギャップが存在します。もしケーゲルが今でも生きていて、日本のオケと合唱団でモーツァルトのミサ曲を全曲演奏するとなったら、いったいアンティフォナを省略するだろうかと考えます。

私は、おそらく省略しないだろうと思います。これはもしかすると、アンティフォナを抜かさざるを得なかった可能性もあるからです。それは当時の東ドイツがどんな国家だったかを考えれば、すぐわかることでしょう。日本だからこそ、できることもあるのです。

私たちはそういう幸せな国に生まれたことを、この演奏は教えてもくれるのです。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ミサ曲ハ短調K.139(47a)「孤児院ミサ」
ミサ曲ハ長調K.259「オルガンソロ・ミサ」
チェレスティーナ・カサビエトラ(ソプラノ)
アンネリーネ・ブルマイスター(アルト)
ペーター・シュライヤー(テノール
ヘルマン・クリスティアン・ポルスター(バス)
ライプツィヒ放送合唱団(合唱指揮:ホルストノイマン
ヴァルター・ハインツ・ベルシュタイン(オルガン)
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ライプツィヒ放送交響楽団



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