かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ヴィラ=ロボス ブラジル風バッハ全曲1

もう8月ですねえ。それでも、「今月のお買いもの」コーナーはまだ6月に購入したものを取り上げますToT

今回は、ヴィラ=ロボス作曲の「ブラジル風バッハ」全曲です。3枚組の1枚目をご紹介します。カラブトチェウスキー指揮、ブラジル交響楽団の演奏。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。

それにしても、2ヶ月遅れでちょうど、この曲集が合う季節になりましたね〜。というのも、この曲はとてもブラジル的な音楽だからなんです。

まず、クラシック初心者の方のために作曲者をご紹介しましょう。エイトル・ヴィラ=ロボスはブラジルの作曲家で、時代的には現代、それも新古典主義にカテゴライズされる作曲家です。20世紀を代表する作曲家の一人で、多くの作品を世に出しましたがその中で一番有名なのが、この「ブラジル風バッハ」なのです。

エイトル・ヴィラ=ロボス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%A9%EF%BC%9D%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%82%B9

ブラジル風バッハが彼の代表作と言われるには、訳があります。彼のキャリアはカフェでのチェリストから始まりますが、その時代から彼はブラジルの民謡を収集し始めます。その後1920年代にヨーロッパへ留学。そこで出会ったのが、新古典主義でした。このブラジル風バッハはそういった彼のキャリアが生んだ比較的早い時期の、彼の音楽的方向性を定めた音楽なのです。

ブラジル風バッハ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%AB%E9%A2%A8%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F

ウィキの説明に「「ブラジル風バッハ」という日本語訳は、「ブラジルの民俗音楽とバッハの作曲様式の融合」というヴィラ=ロボスの意図をうまく捉えてはいるが、原題の「バッハ風・ブラジル風の音楽」という本来の意味を必ずしも反映してはいない」とありますが、まさしくその通りだと思います。そもそも、この音楽は彼が新古典主義に準拠して作曲したブラジルの音楽なのですから。

新古典主義音楽
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E5%8F%A4%E5%85%B8%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E9%9F%B3%E6%A5%BD

新古典主義音楽というのは、誤解されやすいと思っています。私もこのブラジル風バッハを聴くまで、誤解していたのです。新古典主義音楽とは基本的にドイツロマン派を否定する音楽なのですから。ドイツで生まれた音楽を否定するのではなく、ドイツで発展しヨーロッパに広まった、ロマン派の音楽を否定することだったからです。ですから、国民楽派とも若干スタンスは異なります。国民楽派ロマン主義ナショナリズム的な発露ですが、新古典主義はもっとソフトなナショナリズムだからです。

だからこそ、ヴィラ=ロボスは素直にバッハを取り入れることができたといえるかと思いますし、それ故、彼の代表作とも言われるのです。その後彼は必ずしもバッハに囚われず、祖国ブラジルの音楽に根差した古典的作品を数多く生み出していきます。

まず、第1曲目の第1番ですが、チェロ8本による演奏用の作品で、1930年に作曲されました。3つの楽章からなりますが、これもバッハの舞曲風な構成になっていながら、バロックではなくブラジルの民俗音楽を聴いているかのような旋律が鳴り響きます。そもそも、チェロが8本という編成がバッハの時代とは全く異なります。しかし、形式的にはフーガがあったりと、まさしくバッハ風でもあるわけです。この第1番からすでに「バッハ風、ブラジル風」という原題のほうが曲の特徴をよく表しているなと思います。

2曲目の第2番は、実は私が一番最初に聴いたブラジル風バッハでした。当時はなかなかその題名の意味するものが理解できませんでしたが、今ではこの曲も「バッハ風、ブラジル風」であると思います。やはり「ブラジル風バッハ」というのは少し誤解を招くような気がします。これも楽章構成的にはバッハなのですが、音楽的はまさしくブラジルなのです。バロック的なものは音楽において全くありません。その点こそがこの楽曲の特徴となっています。第2番においては第4楽章「カイピラの小さな汽車」が有名ですが、機関車の蒸気音まで再現するなど、鉄道音楽としても秀逸です。

私はこの曲が成立するうえに欠かせなかった曲に、オネゲルの「パシフィック231」があると思っています。実は、第2番はパシフィック231の10年後に作曲された作品で、ヴィラ=ロボスがパリへ留学した年に「パシフィック231」が作曲されているのです。

パシフィック231 (オネゲル)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%B7%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF231_(%E3%82%AA%E3%83%8D%E3%82%B2%E3%83%AB)

この曲と、第2番の第4楽章「カイピラの小さな汽車」とはとても似ています。どちらも汽車の動きに注目して作曲されており、機械的です。それは明らかにロマン主義とは一線を画しており、新古典主義的な音楽だといえるでしょう。オネゲル自身が、新古典主義であった「フランス六人組」の一人だったのですから。

ヴィラ=ロボスはさらに深化させ、風景の一部にして突き離し、結果とても美しく、しかし聴きやすい音楽にしてみせました。

最後の第3番はピアノ協奏曲とも言える曲です。実際にアインガングもある曲ですが、楽章構成はバッハの舞曲風です。その上で、音楽はブラジル的となっているのが特徴です。1934年の作曲で、4楽章から成ります。

演奏面ですが、ブラジルのオケの演奏が聴ける機会などなかなかありませんが、少しだけ浮ついた部分があるように思います。しかし全体的には聴くに支障はなく、祖国の作曲家に対するリスペクトが伝わってきます。そもそも、「ブラジル風バッハ」が全曲収められているものはなかなかなく、銀座山野楽器においても在りませんでした。以前はブラジル風バッハ全曲と言えばナクソスだったのですが、ナクソスの棚にも見当たりません。そこで、中古のディスクユニオンだったという訳なのですが、逆にあたりでした。全曲収録されている上に、番号順で聴けるのはこの曲集を俯瞰することができるため、ありがたいことです。

それにしても、第1番は室内楽、第2番は管弦楽、第3番はピアノ協奏曲とも言える3曲。個性が十分あふれて出ているといっていいでしょう。それを、ごく当たり前に演奏するブラジル響。

私たち日本人は、BRICsを過小評価し過ぎているかもしれません。



聴いているCD
エイトル・ヴィラ=ロボス作曲
ブラジル風バッハ第1番・第2番・第3番
イザーク・カラブトチェウスキー指揮
ブラジル交響楽団
(imp JSL 143-1)



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