かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:フィンジ クラリネット協奏曲他

昨日は体調を崩しましてアップを見送らせていただきました。ご心配をおかけいたしましたが、今日はなんとか大丈夫です。

それでは、いつも通り行きたいと思います。

今月のお買いもの、5枚目の今回はフィンジのクラリネット協奏曲他です。ナクソスから出ているもので、祖国イングランドのオケによる演奏です。

そもそもこの作曲家のCDは以前から狙っていました。銀座山野楽器で買い求めたものですが、いま山野ではフィンジのコーナーが設けられています。それほど今、じわじわと人気が出ている作曲家でもあります。

この作曲家を知ったのはmixiのコミュでした。そこで教えていただいたその美しい旋律に心を奪われ、いずれ自分でCDが欲しいと思ったのがきっかけです。それがようやくかなったことになります。

まず、フィンジという作曲家についてご紹介しましょう。20世紀イギリスの作曲家で、生まれも20世紀という作曲家です。戦争、特に第1次大戦で友人と家族を失い、それが彼の音楽の表情を形作っています。

ジェラルド・フィンジ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B8

インスピレーションの基礎として、ワーズワースやトーマス・ハーディといった文学者の詩がありますが、日本では文学がもてはやされても、それにインスパイアされたフィンジの作品が大きく取り上げられることはなかったような気がします。

フィンジの作品は大まかに言えばとても絵画的で、その分詩的でもあります。それは一方で映画音楽的な側面を持つものでもあります。しかしフィンジの音楽はそれが嫌味にならないくらい、透明感にあふれ、創造的です。それはおそらく、音楽がその時代においてはとても保守的であるということが理由なのだと思います。

標題となっているクラリネット協奏曲で説明しましょう。3楽章形式でアタッカもない、ごく普通の協奏曲です。オケが出てその後にクラリネットが出ていますし、その旋律もほぼ同じものが繰り返されるというとても保守的な形式です。そこに透明感のある絵画あるいは詩的な旋律が乗っています。その和音としては確かに現代的なものが存在します。

ここに、フィンジの魅力が詰まっているように思います。決して珍しいことをやっているわけではないんです。この作品は1949年のものですが、その時代大陸ではもはや旋律が存在するのかどうかという作品も出ています。しかしこのフィンジの音楽は、あくまでも時代的にはシマノフスキくらいで止まっています。しかしそれが全く古くさくないのです。それでいてきちんと心情や風景なども描かれている点が素晴らしいと思います。

他の作品もそういった点にあふれています。5つのバガテルもそうですし、特に「恋の骨折り損」からの3つのモノローグは、まさしく心象風景といった印象で楽しませてくれます。決してうつむいてだけでもないですし、無理に前を向こうともしません。前向きではあるんですがそれが決して本人が無理して頑張っているという感じではないんですね。ごく普通に時間がそれを解決してくれたんだ、と言わんばかりの自然さです。

こういった作品がかける才能は素晴らしいですね。よほど大戦の苦しい時期を苦難の上で乗り越えてきたのだろうなと思います。

このフィンジの作品を聴いていると、いま放送されているNHKの朝ドラ「おひさま」を彷彿とさせます。決して暗くなく、でも無理した明るさでもなく、燦々と照らす太陽が作り出す陰影が、そこにはあるように思います。

そう、フィンジの作品には陰影があります。単なるクラシック伝統のコントラストというだけではなく、まさしく絵画的なコントラストも存在するのです。それこそが陰影であり、光と影の美しい対比というほうが正しいかもしれません。

「おひさま」のBGMも素晴らしいですが、恐らくこのフィンジを代用しても、合うでしょう。ヤマト復活編で使われたようなクラシックとは違い(そもそもヤマトの音楽は何度も言いますがライト・モティーフですから合わないのが当たり前)、フィンジの音楽はまさしく風景でもあるわけなので、合うでしょう。

クラリネットはとても温かい音色を出しますが、このCDではその特色が前面に押し出されています。それは多分に演奏者がそれをきちんと意識して演奏しているからなのだろうと思います。合唱もそうなのですが、管楽器は息の長いフレーズや低く弱い音でどれだけ正確にきちんと音を出すかが大事なのです。そこを全く手を抜いていません。ナクソスではありますが、この点は最大評価していいのではと思います。

そして、そのクラリネットという楽器が、フィンジの音楽にとてもよくにあっているなと思います。クラリネット協奏曲では少し伝統を意識して音楽自体が硬くなっている点もありますが、それ以外はのびのびとした心象風景が広がります。そこに、温かいクラリネットがよくにあいます。

そもそも、数あるフィンジのCDの中から、まずこのクラリネット協奏曲を聴いてみようと思ったのは、管楽協奏曲というのがほとんど古典派〜前期ロマン派で途絶えているにも関わらず、フィンジは管楽協奏曲、それもモーツァルトウェーバーで名曲がそろっているクラリネットで作曲したという点に惹かれたからです。確かにクラリネット協奏曲では先人を意識しすぎている点もありますが、彼がなぜクラリネットを選択したのかは、聞けばすぐわかると思います。

その暖かい音色が、なんと彼の音楽とマッチしていることか・・・・・

じわじわと感動が湧き上がってくるのを、こらえきれません。



聴いているCD
ジェラルド・フィンジ作曲
クラリネット協奏曲作品31
5つのバガテル 作品23a
恋の骨折り損」からの3つのモノローグ 作品28
セヴァ―ン狂詩曲 作品3
弦楽オーケストラのためのロマンス 作品11
ヴァイオリン・ソロと小管弦楽のための入祭唱ヘ長調 作品6
ロバート・プレイン(クラリネット
ハワード・グリフィス指揮
ノーザン・シンフォニア
(Naxos 8.553566)



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