今回のマイ・コレは、モーツァルト宗教音楽全集の第9集を取り上げます。
第9集と第10集は、細かい曲を集めたという編集です。この第9集にはその代表作品とも言える「アヴェ・ヴェルム・コルプス」も収録されています。
本来は、1曲づつご紹介しなくてはいけないくらいのヴォリュームがありますが、そうなりますと文章が長くなりますので、今回はそのアプローチはやめておきます。ただ、そうしたいと思う理由は、こういった小さな作品にこそ、モーツァルトの宗教音楽の魅力はあるのだということなのです。
比較的大きい作品になる「聖墓の音楽」といい、いくつかのキリエといい、この第9集にも大小さまざまな「決して粗末には扱えない作品」が詰まっています。転調の素晴らしさやフーガの美しさなど、あげればきりがありません。
もし、一曲ずつに興味がありましたら、事典を買うかもしくは以下のサイトを参照してみてください。
Mozart con grazia
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/index.html
ケッヘル番号で調べるのが一番早いと思います。モーツァルトに関しては私は基本「モーツァルト事典」を参照していますが、時間がない場合はこちらだけで書く場合もあります。それくらい、信用できるサイトだと思います。
そのいろんな小品を集めたこの第9集の編集方針は、その小品の様々な側面に焦点を当てているということになろうかと思います。第1曲目の「聖墓の音楽」はモーツァルトの「カンタータ」です。カンタータと言いますとバッハがあまりにも有名ですが、実はモーツァルトも作曲しています。それがこの曲なのです。それゆえか、この曲はモダンでも収録があると上記サイトには説明があります。
その他にはモテットや独立したキリエなどが収録されています、特にキリエはだんだん素晴らしい作品が聴けるようになっている点が「宗教音楽全集」の名にふさわしいものとなっています。
モーツァルトの宗教音楽の中で実はミサ曲の次に多いのがこのキリエなのです。単にそれだけを作曲したというケースもありますが、基本的にはミサ曲を作曲しようと思っていたのだけれどもできなくてキリエだけが遺されたというケースが多いのです。これが何を意味するのかと言いますと、モーツァルトは頭から作曲をする人であった、ということなのです。
私はこれがレクイエムの前においてあるということに注目しています。実際、ほとんどの全集がこういった作品は一通り収録した後につけたしのように収録することが多いのですが、このアーノンクールのものはそうせず、レクイエムの前に置いたのです。なぜかは、レクイエムを聴けば分かりますが、それはまたレクイエムの時に説明しましょう。
始め私はなぜこんなところにアヴェ・ヴェルム・コルプスを置いているのだろうと不思議に思ったものでしたが、キリエに注目してみますと、逆にアヴェ・ヴェルム・コルプスはここにしか入れようがなかったと言えるかと思います。よくあるように戴冠ミサとのカップリングではなければ、小品集に入れるしかないわけなのですから。そして、アーノンクールはアヴェ・ヴェルム・コルプスが名曲であるということを踏まえながら(だからこそ、一番最後に来ているわけです)、しかし注目してほしいのはキリエである、ということなのですね。
その点でも、この全集を買っておいてよかったと思っています。
聴いているCD
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
聖墓の音楽K.42(35a)
キリエ ヘ長調K.33
聖霊よ、来たれ ハ長調K.47
聖ベネディクトゥス祭のオフェルトリウム ハ長調K.34「登りたまえ、天への道」
オザンナ ト長調K.223
キリエ 変ホ長調K.322(296a)=Anh.12(296b)
キリエ ハ長調K.323(Anh.15)
レジナ・チェリ 変ロ長調K.127
ミゼレーレ イ短調K.85(73s)
アンティフォナ ニ短調K.86(73v)「まず神の御国を求めよ」
キリエ ニ短調K.90
タントゥム・エルゴ 変ロ長調K.142(Anh.186d)
アヴェ・ヴェルム・コルプス ニ長調K.618
バーバラ・ボニー、シルヴィア・マグネアー、シャルロッテ・マルジオーノ(ソプラノ)
エリーザベト・フォン・マグヌス(アルト)
クリストフ・プレーガルディエン(テノール)
トーマス・ハンプソン(バス)
アーノルト・シェーンベルク合唱団(合唱指揮:エルヴィン・オルトナー)
ニコラウス・アーノンクール指揮
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
(Teldec WPCS-6490)
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