かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト全集より 宗教音楽14

今回の神奈川県立図書館所蔵CDのコーナーは、モーツァルト全集からの宗教音楽の第14回目です。ヴェスペレK.339とキリエK.341、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、そして「エクスルターテ・ユビラーテ」です。

まあ、モーツァルトのミサ曲以外で有名な宗教曲を集めてみましたというアルバムですね。指揮はケーゲルではなくサー・コリン・デイヴィスロンドン交響楽団他の演奏です。この組み合わせにほとんどはずれはないですし、この音源でも大きな欠点はないと思います。

が、私自身としては不満を持っています。それはヴェスペレでいくつかべったりな演奏がある点なんですね。全体的にはそれほどべったりではないのですけれど^^;

特にそれを感じますのが、K.339の第4曲目「ラウダーテ・プエリ」です。ここはフーガなのですが、とても重々しく演奏しています。それはそれで間違いではないんですが、この曲が全体として持っている生命というものを、半減させているような気がするのです。

K.339 証聖者の荘厳晩課
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op3/k339.html

かなり大胆な躍動感を持つこの曲の、生き生きとした生命感といったものをそいでいる演奏なのではないかという気がするのです。その代り、アンサンブルの完璧さはさすがデイヴィスの統率力でしょう。

その点では、シュライアーとどちらかはかなり迷うところですが、私としてはやはりシュライアーを挙げたいと思います。次点がこのデイヴィスではないでしょうか。

マイ・コレクション:シュライアーの「戴冠ミサ」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/452

合唱団は大がかりなので、ミサ曲はそっけないというような人の概念をくつがえす演奏であることは確かだと思います。

編集面でそれが念頭にあったのでしょう、次に来ているのがキリエK.341です。以前も述べているかと思いますが、この曲は断片なのではなく、ミサ曲を作曲しようとしていてまずキリエを作曲したというものです。モーツァルトの頭の中にはすでに全体の青写真は完成していたと思いますが(恐らく通奏低音くらいは)、それだけでは「お金」にならないので、まずはキリエだけ完成させたという訳です。

K.341 (368a) キリエ ニ短調
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op3/k341.html

もし、この作品が学者の言うとおり1787年12月〜89年2月の成立だとしますと、確かにキリエ以外を作曲している暇はないのです。その時期のモーツァルトは大変忙しかったのですから。ただ、だんだん仕事が少なくなってきていた時期でもありました。そのことから、モーツァルトは教会の楽長への就職活動をしています(レクイエムを作曲した91年にシュテファン大聖堂の無給の副楽長になったのはそういった努力のたまものでした)。そのためのプレゼン資料だったとすれば、納得がいきます。さらに、音楽的にもハ短調ミサ曲のような雰囲気をたたえていますので、私もこのその時期の成立説に同意しています。

この曲の編成がまた結構大規模なのですね。年代を決定する決め手となっているクラリネットの導入など、基本的にザルツブルク時代のミサ曲の編成ではありません。もう少し大規模な合唱団を念頭に置いていたことでしょう。

其れゆえか、実はK.339では若干合唱団が前に出すぎという面も否めないのです(ただ、それは大きくバランスを崩しているわけではありません)。いっぽうでそれは「アヴェ・ヴェルム・コルプス」ではいい効果を挙げてもいます。この曲は強弱記号がppがほとんどを占めていまして、とても難しい曲なのです。その上で、ほとんどが二分音符と長音が支配します。となると、息継ぎの問題が発生し、それが低音部での聞き取りにくさへと繋がります。シュライアーの盤で唯一評価が下がるのがその点でして、それをこのデイヴィスのものは人数でカバーしているように思います。「アヴェ・ヴェルム・コルプス」はお勧めです!

最後の「エクスルターテ・ユビラーテ」は可もなく不可もなくと言ったところでしょうか。プロであればまあ当たり前の水準をたたき出していると思います。前半のソリストによるカデンツァが私にとっては不満であるだけで、演奏自体が嫌いであるわけではありません。実際、モダンでは私はこれだけしかありませんし(他はすべてピリオド)、文句は言えないでしょうね(なら、買え!ってことですから)。

ただ、デイヴィスという指揮者は本当に宗教曲を重々しく演奏するのが好きな指揮者ですね〜。ベートーヴェンのミサ・ソレムニスもそうですけれど、もう少し軽めでもいいような気がするんですが・・・・・そのほうが、古典派の宗教曲はむしろ筋肉質で生き生きとした曲へと生まれ変わるような気が、私はするのです。以前ご紹介した以下の音源のように・・・・・

マイ・コレクション:ジンマンのミサ・ソレムニス
http://yaplog.jp/yk6974/archive/946

今月のお買いもの:ベートーヴェン ミサ曲ハ長調
http://yaplog.jp/yk6974/archive/961



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
証聖者のための盛儀晩課(ヴェスペレ)ハ長調K.339
キリエ ニ短調K.341(368a)
モテット「アヴェ・ヴェルム・コルプス」K.618
モテット「エクスルターテ・イウビラーテ」K.165(158a)
キリ・テ・カナワ(ソプラノ、K.165、339)
エリザベス・べインブリッジ(アルト、K339)
ラインランド・デイヴィス(テノール、K.339)
クヴィン・ハウエル(バス、K.339)
ロンドン交響合唱団(合唱指揮:アーサー・オールダム
ジョン・コンスタブル(オルガン)
サー・コリン・デイヴィス指揮
ロンドン交響楽団



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