かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ヴィラ=ロボス ブラジル風バッハ3

今月のお買いもの、6月に購入したものを遅れてご紹介していますが、 今回はヴィラ=ロボスのブラジル風バッハの第3回目です。

ブラジル風バッハの全集の3枚目は、第7番〜第9番が収録されていますが、この3曲はいずれも管弦楽曲です。

第7番は1942年、第8番が1944年、そして第9番が1945年に作曲されていますが、この年代は、新古典主義が衰退していく時期と重なります。そのせいか、音楽自体もかなり変化を遂げているように思われます。

第7番と第8番は、基本的にブラジルの旋律を使うことが主眼となっていまして、それをバッハのバロック様式に当てはめていくというスタイルをとります。ブラジル風バッハと言われますが、そもそも最大楽章数が4つしかないわけで、シンフォニアでもないですし協奏曲でもありません。まさしく「バッハ風、ブラジル風」という原題が指し示す通りなのです。

そのうちの、「ブラジル風」という側面が強い作品が3枚目では第7番と第8番であるといえましょう。ブラジルの民俗音楽、特に舞曲をバッハの様式に当てはめつつ、最終楽章はいずれもフーガとしています。この最終楽章はむしろバロックの様式となっているわけです。

ですから、この二つの曲からはほとんどバロック的な響きは聴かれません。最終楽章のフーガですら、私たちが聴き慣れているバロック音楽的ではありません。しかし、様式的なことは沿っている(トッカータは急速な音楽、ジーグは8分の6拍子)わけでして、その点こそ、この作品の魅力なのです。それは、ブラジル風バッハという作品が、かなり知的な作品であるということの証しでもあります。

なるほど、日本では売れないかもしれませんね・・・・・最近、国内盤はさっぱり見かけません。このCDが中古市場へ出たのは、単にこの演奏に、ムラがあるということだけではないような気がします。

一方、第9番は見るからにバッハのバロック的なものとブラジルの民俗音楽が融合したような作品となっています。1楽章しかなくそれもプレリュードとフーガ。そこに見事にブラジルの民俗音楽を落とし込み、その上でバロック的な音楽が展開されています。様式だけでなく音楽もというのが第9番の特徴だといえます。

もともとアカペラだというのですから、そのもともとのを是非とも聴いてみたいように思います。バロックの時代は声楽重視とは言え、器楽がその地位を高めた時代ですので、実はアカペラ曲はルネサンスに比べ相対的に少なくなっているにも関わらず、ここでヴィラ=ロボスはアカペラをなぜ選択したのかが非常に重要だと思うからです。

そして、なぜそれを管弦楽曲へ編曲したのか・・・・・ネットにはざんねんながらそれを解説してくれているものはないように思います。私としては、それは新古典主義の行き着いた先ではなかったかと思います。つまり、第9番においては、単に「バッハ風、ブラジル風」ではなく、さらにルネサンスというものまで見据えた結果だったのではないかという気がするのです。

実は、この第2次世界大戦終了前後という時代は、無伴奏合唱曲、つまりはアカペラですが、それが復興した時代でした。同じ時期、新古典主義の作曲家が同じことをやっています。プーランクがその人です。

今日の一枚:プーランク カンタータ「人間の顔」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/39

プーランクのような新古典主義の作曲家だけではなく、多くの作曲家たちがアカペラの曲を作曲した時代です。その影響は日本も少なからず受けています(むしろ、日本はバロック的な様式であるピアノ伴奏というほうが強かったのではありますが)。

ですから、実は私は無伴奏合唱曲のほうが、ヴィラ=ロボスが最初に意図したものに近いように思いますが、それを管弦楽に編曲したということは、ブラジルという国が、距離的には遠いけれど文化的にはヨーロッパの周縁国であったということを想起せざるを得ません。

本来、こういった作品はもっと聴かれるべきですし、また演奏機会も増えるべきだと思います。とても聴きやすい旋律に彩られていながら、実はとても知的な作品だからです。クラシックの本当の魅力とはなんだろうと、聴き手に考えさせる音楽です。演奏家もブームが去ったからと言って放り投げてほしくないなあと思います。こういった曲はまさしく演奏家こそ情報発信できる作品なのですから。


聴いているCD
エイトル・ヴィラ=ロボス作曲
ブラジル風バッハ第7番・第8番・第9番
イザーク・カラブトチェフスキ―指揮
ブラジル交響楽団
(imp JSL 143-3)



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