神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲を取り上げていますが、今回はその第3集を取り上げます。
この全集は番号順ではないのが特徴ですが、本来私はあまり好みません。作風の軌跡を楽しむことも、私のクラシック音楽の楽しみ方の一つだからです。
でも、初めてヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲を聴く人にとっては、最良の教材なのかもしれないって思います。なぜならば、特にこの第3集はウィキのこの記述を半ば否定する作品と演奏になっているからです。
「民謡風な魅力はあるものの、交響曲の項でも述べたように古典的な形式という枠組みが足かせとなって、才気の飛翔を妨げている憾みがある。」
エイトル・ヴィラ=ロボス
弦楽四重奏曲
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%A4%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%A9%EF%BC%9D%E3%83%AD%E3%83%9C%E3%82%B9#.E5.BC.A6.E6.A5.BD.E5.9B.9B.E9.87.8D.E5.A5.8F.E6.9B.B2
本当に?と私は第1集を聴いている時から皆様に述べていますが、じっさいに聴いてみますと、むしろ作曲した時代の影響こそ色濃く受けていることが分かります。
第3集に収録されているのは、第7番と第15番。1942年と1952年の作曲です。新古典主義音楽すら古いものとなり、電子音楽すら出て来始めた時代なのです。和声も不協和音多用ですし、そうなりますと必ずしもブラジル民謡に立脚するというわけではなくなります。
勿論、ヴィラ=ロボスの音楽の魅力はブラジル風バッハのように、ブラジル民謡を上手にクラシックの様式で表現したところにあると言えますが、むしろブラジル風バッハのほうが古典的様式の影響を受けているように私には見えます。この弦楽四重奏曲ではむしろ思いっきり冒険しています。
それは古典的様式よりも、弦楽四重奏曲がベートーヴェンによってクラシックの主要ジャンルへと格上げされ、確立されたことに立脚するのではないかと思います。つまり、ベートーヴェンは「交響曲で実験し、弦楽四重奏曲に反映させた」というものです。このほうが念頭にあるんじゃないかなあと思います。
その意味では、私はこの二つの作品はとても伝統に立脚しているように思います。古典的様式というよりも、その伝統により足枷となったのかもしれませんが、ブラジル風バッハとは一味違う、とてもクラシックしている作品を聴くのもまた楽しいものです。
演奏しているラテンアメリカ四重奏団は、その不協和音ぶりだったり、冒険ぶりを楽しんでいます。特徴あるリズムをしっかりと刻みながら、ノリノリです。本来不協和音多用ですと難しくなりがちですが、そんなものはみじんとしてないかのように、生き生きと生命力溢れる演奏です。不協和音?それも人間の一つの感情じゃね?って感じで、不協和音多様なのにさわやかで、清涼な風が吹き抜けていくかのようです。
少なくとも、私の評価は現状では「ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲はもっと評価すべき」ですし、演奏から演奏者達の「もっと評価しようよ」という想いがしっかりと伝わってくるのです。
聴いている音源
エイトル・ヴィラ=ロボス作曲
弦楽四重奏曲第7番(1942年)
弦楽四重奏曲第15番(1954年)
ラテンアメリカ四重奏団
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