かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ヴィラ=ロボス 弦楽四重奏曲全集6

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲全集を取り上げていますが、今回はその第6集を取り上げます。

この第6集で全曲取り上げることとなりますが、この第6集はさらに今までの「ヴィラ=ロボスにとって、弦楽四重奏曲は意欲作である」ということが強固となっている気がします。

収録は第4番、第9番、第11番の3曲です。第4番は1917年の作曲ですが、戦争(第1次世界大戦)の影響なのか、後の二つ、第9番と第11番と同じ雰囲気を持っています。

第9番は1945年、第11番は1948年の作曲ですが、それぞれ戦争の影響を受けているのと同時に、その時代の音楽の影響を色濃く受けている作品ですが、30年も前の作品である第4番も、同じ雰囲気を持っていることに気が付かされます。

これが、この全集が番号順に並んでいない理由だと思います。勿論番号順に意味がないと言う事ではなく、番号順に聴いてしまうと、ヴィラ=ロボスの弦楽四重奏曲の真の魅力に気が付かない可能性があるという、編集者、あるいは演奏家たちの意思が込められていると言えるでしょう。

30年の時空を超えることが、演奏では可能であるわけですが、さて、聴いてみてどうですかと、演奏者であるラテンアメリカ四重奏団から挑戦状を突きつけられているかのようです。この3曲からは、私たちが知っているブラジルらしさも感じ取ることはできません。受け取れるのは、和声からこの3つの作品が明らかに、「20世紀音楽」のカテゴリに入る、という事だけです。

その上で、しっかりと弦楽四重奏曲の様式を保っていることを考えれば、その根っこは新古典主義音楽にあると言えるでしょう。私たち聴衆は、ブラジル風バッハや、ショーロスの影響が強すぎることを、はっきりと教えてくれます。

そう、ヴィラ=ロボスはあくまでも、ブラジル生まれの、新古典主義音楽及び20世紀音楽の作曲家なのです。だからこそ、時としてブラジルらしさが全面にも出ますし、引っ込むこともある・・・・・ただそれだけなのに、恐らく私たちが「ブラジル風バッハ」を期待してしまう。だからこそ、ウィキでの評価も低くなってしまうのだろうと思います。

私はこの第6集まで聴いてはっきりと申し上げることができます。ヴィラ=ロボスは素晴らしいブラジルの新古典主義音楽及び20世紀音楽の作曲家である、と。そしてその精神は確実に後世の作曲家に受けつがれている、と。

もっと言えば、南米のクラシック音楽全体に与えた影響も大きいでしょう。その最たる存在がピアソラだと言えます。ピアソラに関してはまた別途エントリを設けますが、タンゴのイメージが強く実際タンゴ作曲家でもあるピアソラは、明らかに新古典主義音楽の作曲家だと言えます。その種はヴィラ=ロボスによって蒔かれたと言っていいでしょう。

近代的な緊張感のあるアインザッツと、それにより表現される、哀愁と幻想、そして哀悼の世界・・・・・自在な技術を、惜しみなく人間の精神世界を表現するために使っているそのさまは、私たちに様々な情感を呼び起こします。時としてそれは私たちに寄り添い、時として勇気づけてもくれます。

明らかに私たちが北半球ばかりに目を向けすぎていることを、この演奏はしっかりと教えてくれるのです。この全集に出会えたことで、また私の精神世界と心が豊かになったことは間違いありません。




聴いている音源
エイトル・ヴィラ=ロボス作曲

弦楽四重奏曲第4番(1917年)
弦楽四重奏曲第9番(1945)
弦楽四重奏曲第11番(1948年)
ラテンアメリカ四重奏団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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