かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:アンサンブル・ジュピター第15回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和元年9月22日に聴きに行きました、アンサンブル・ジュピターの第15回定期演奏会を取り上げます。

多分、とっても久しぶりだと思います、このオケ。日程がなかなか合わなかったからですが、そもそもこのオケ、早稲田フィル系統なんですよね。

ですから、中大卒の私とすれば、中大関係とバッティングすれば当然そっちを優先するって話なのでとっても久しぶりになるわけなんですが、今回は奇跡が起こりました。なんと、中大関係であるクレセント・フィルが日中にあり、このジュピターさんが夜というダブルヘッダーになったわけなんです。

そのうえで、どちらもベートーヴェン交響曲をやるというので、とてもワクワクしながら当日を迎えたのですが・・・・・夜勤明けで起きたのが、クレセントの2プロが始まったころでした・・・・・英雄、聴きたかったな。

そのため、当日はジュピターのみにしたのでした。とはいえ、さすが早稲田フィル系統だけあって、このオケは安定した実力をもっているのはもちろん、表現力に優れているのが特徴なんです。実際、当日一緒に行った合唱団時代の友人もその実力にびっくりしていました。

当日のプログラムは以下の通りです。

モーツァルト オペラ「羊飼いの王様」序曲 K.208
ベートーヴェン 交響曲第8番ヘ長調作品93
ワーグナー 楽劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
ワーグナー 歌劇「タンホイザー」序曲
ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲と「愛の死」

え、ワーグナーが最初なんですよね?適当に並べただけですよねって言う、ア・ナ・タ。読者の方ならわかると思いますがこの順番なので数字を振っています。つまり、メインがワーグナーの序曲集だってことなんです。ベト8はあくまでも2プロ。なんとおなかいっぱいなw本来聴きに行くはずだったクレセント・フィルなら当然ワーグナーを2プロにするところを、ジュピターさんはメインに持ってくるところが本当に特徴的です。

けれども、これにはしっかりと理由があるわけなんです。これは実はだんだんオケの団員が増えていくようになっているんです。それだけ音はだんだん分厚くなるので、最後は音に包まれて終わるという・・・・・おしゃれな企画だと思います。

当日はさらに冒頭でアヴェ・ヴェルム・コルプスが演奏されました。なんでも、彼らを取り続けていた写真家の方が逝去されたとのこと。弦楽器だけ出てきたので何かあったとは思いましたが・・・・・二人とも合唱団員なので、演奏が始まるや否やすぐわかりました。逝去された方のご冥福を切にお祈りします。

もう実力は確かなものなので、プロ並みにいきなり表現の方を述べましょう。モーツァルトの序曲は疾走感が本当にいい!モーツァルトらしい楽しさが前面に出ていました。続くベト8もリズム感がいいことが生命力につながっていて、ベートーヴェンの「新しい世界」が存分に描かれていたと思います。第4楽章で管が突っ込み気味になりアンサンブルが崩壊しかけましたが即立て直すのはさすがだと思います。アマチュアらしさはここくらいですね、いつ聞いても本当にプロ並みのすばらしさ!

特にアヴェ・ヴェルム・コルプスは本当に美しくかつ切ないくらい。楽器だから合唱よりは簡単とはいいつつも、やはり高音をpもしくはppで演奏し続けるのはたいへんなんです。それをなくなった仲間のために最後までしっかりやり通すのはさすが早稲田フィル系統だと思います。

後半のワーグナーも、ローエングリンも高音部のppが続く音楽が美しく、物語が持つ悲哀を存分に披露。タンホイザーもその愛と性との関係性の彩りが存分に力強く表現されていました。最後の「トリスタン」はもうワーグナー節全開!むしろソリストがオケに埋没気味で、プロのほうに奮起を期待したいところです。オケに負けずに歌い上げていれば、もう完璧でした。

ジュピターさんはどうやら当面当日のロケーションである杉並公会堂を本拠とするみたいで、実にホールを楽器として使いこなしていると思いました。その点も安心して聴いていられるアマオケだと思います。その分つくづく、わが中央大学の方を考えざるをえませんでした。クレセントだけではなくもう一つくらいOBによるオケを作ってもいいんじゃないかって気がします。クレセントだけでもいいとは思いますが、OBが卒業後もクラシック音楽を表現できる場を作るということはとても大切なことだと思います。

生きづらい現代において、表現する場があることは「自分らしさ」を維持する、あるいは取り戻すという点で非常に有効であり、また安心できる一つの場所としても機能します。早稲田フィル系統はその「安全な場所」がいくつかそんざいすることが素晴らしく、そのうちの一つがジュピターさんであることを鑑みると、中大オケもさらに考えるべき時代が来ているような気がします。

その意味ではクレセントの次回も期待ですし、このジュピターさんの次回の「運命」と「田園」もまた、非常に期待できるプログラム。日程が合えばまた足を運びたいと思います。

 


聴いてきたコンサート
アンサンブル・ジュピター第15回定期演奏会
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト
アヴェ・ヴェルム・コルプス K.618
歌劇「羊飼いの王」序曲K.208
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第8番ヘ長調作品93
リヒャルト・ワーグナー作曲
歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲
歌劇「タンホイザー」序曲
楽劇「トリスタンとイゾルデ」第1幕への前奏曲と「愛の死」
沖田文子(ソプラノ、「愛の死」)
安藤亮指揮
アンサンブル・ジュピター

令和元(2019)年9月22日、東京杉並、杉並公会堂大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。