かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:クレセント・フィルハーモニー管弦楽団第33回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は平成30年8月12日に行われました、クレセント・フィルハーモニー管弦楽団第33回定期演奏会を御紹介します。

このオケ、中大オケの定期演奏会には大抵チラシが入っているので、以前から聴きに行きたい団体だったのですが、今まで週末は土曜日しか空いていないという状況だったため、時には他の団体を優先したことも何度もあり、聞き逃していたのが残念な団体だったのです。

実は、私はうすうす気づいていました、このオケがどんな人たちで構成されているかを・・・・・一つのヒントは、団体名にあるんです。多分、中大出身なら、だれでも気づくのではないでしょうか。

勿論、中大オケの定演に毎回チラシが入っているというのも、重要なヒントなのですが、中大生で「クレセント(三日月、或はその形をした窓の締め金具)」と言えば、多摩キャンパスにある、その名を冠した、形そっくりのホール(講堂)を想起するのではないでしょうか。そうなのです、このオケは、中大オケのOBOGたちによって2002年に設立されたアマチュアオケなのです。

http://crephil.moo.jp/index.html

だからこそ、ずっと聴きに行きたかったオケ、なのです。中大を卒業した団員たちが、どんな演奏をするのか。楽しみではないですか!

え、なぜですかって?オーケストラで演奏するということが、学生時代だけのことであっていいでしょうか?勿論、そういう人も中に入るはずですし、学生時代だけというのを否定はしません。しかし、それで人生はより豊かになるでしょうか?

私は、学生時代は音楽ではなく古美術に没頭し、史蹟研究会所属だったのですが、卒業してもほぼ毎年正倉院展は行くようにしています。勿論、仕事の関係で行けなかったり、その年資金不足だったりして、行けない年もありました。それでも、断続的に正倉院展へは行くようにしています。そして、その宝物たちは、行くたびに私にいろんなことを語りかけてきて、その宝物が持つ「メッセージ」を受け取るのがとても愉しみなのです。それは私が社会人として様々な経験を積んだが故、なのです。そんな機会が、オケの団員たちにもあればいいなと、ずっと思ってきたのです。

とは言え、アマチュアオケも、飽和状態であることも確かです。社会人になって中大とは関係ない団体に入って活躍するのもいいですが、その場は狭いと言えます。なら、OBやOGたちが自分たちでいろんな団体を作ってもいいわけなのです。そして、社会人として継続して活動すれば、学生時代にはない経験を、職場で、プライベートで経験する筈です。その経験がどの程度演奏に反映されるのか。宮前フィルや小平市民オケなどのような素晴らしい演奏になるのかどうか、とても楽しみではないですか!だからです。

今回のプログラムは、偶然か、その前の週に行ったボヘミアン・フィルハーモニックさんと同じドヴォルザーク。聴き比べを望んだのではなく、実は予定はこのクレセント・フィルさんのほうが先に入って、ボヘミアン・フィルさんは後から無理やり予定に突っ込んだという経緯があります・・・・・

�@田丸和弥 クラリネット四重奏のための小組曲
�Aドヴォルザーク 弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」より第4楽章(クラリネット四重奏版、鈴木栄一編曲)
�Bドヴォルザーク チェロ協奏曲ロ短調作品104
�Cドヴォルザーク 交響曲第9番新世界より

1曲目の作品は、クレセント・フィルのOBで作曲家の田丸氏による作品。軽妙でどこかポピュラー音楽っぽい部分も内包しつつ、クラリネットうしのかけ合いが楽しい作品。オケは実は中大オケの団員、つまり学生も入っているのですがクラリネットはOBOGのみ。アマチュアとは思えないしっかりとした音色と堂々たる演奏は、作品の質の良さを引きたてます。というより、その演奏で「このオケ、只者ではないかも」と私は思い始めていました。

2曲目は、あの「アメリカ」をクラリネットだけでやってしまおうというのです。あー、ここだと弦がかなりアインザッツ強めだよな〜とか思いながらも、クラリネットの暖か味のある音による演奏にすっかり魅了されていました。編曲が素晴らしいのだと思いますが、そもそも、団員がうまいんです!

それが如実に表れたのが、3曲目のドヴォコン、つまりはチェロ協奏曲だったのです。クレセント・フィルがボヘミアン・フィルさんよりも素晴らしい点は、全体的にアマチュアらしい痩せた音がない、ということなのです。こういった中で学生が演奏するのはとてもいい経験だと思いますし、将来は正団員として、或は他のオケで活躍すると言う事もあるわけです。中大はとてもいいシステムを開発したなあと思います。

その全体的に痩せた音がなく、第1楽章冒頭のppからffまで至る主題呈示部は圧巻!ですが、ソリストが・・・・・

ソリストは、藤元裕也さん。若いゆえにどれほど情熱に溢れる演奏が聴けるかと思いきや、あれ?ソリストにどこか痩せた音が散見されるのですが・・・・・

特にオケと対比しますと、体が殆ど動いていない。ドヴォコンのプロの演奏を生で聴いたことがある人ならわかるかと思いますが、ドヴォコンは演奏するだけでスポーツかと思うくらい体を動かすはずなのです。それくらいじゃないといい音は出ませんし、何よりもメロディーメーカー・ドヴォルザーク故の「カンタービレ」を表現することができないはずなのです。例えば、ロストロポーヴィチ、或はヨーヨー・マ。私はヨーヨー・マが演奏したものをかつてVHSで録画してありましたけれど、全身を使って、体をゆすりまくって演奏していました。それくらいじゃないと、オケパートが持つ壮大さとカンタービレに対応できず、「協奏」できないのです。

これではなあ、と思います。まあ、オケとしてはプロとやるなんてそうそうないですし、特に学生団員はあまりある機会ではないはずなので、喜んで演奏していましたが、私はオケが素晴らしいだけにとても残念でした。しかも、もう一つ残念なのは、藤元氏は日芸、つまり日大芸術学部出身ということ、なのです。

今、甲子園では、日大の付属校であり、私の母校である日大三高が、優勝目指してグラウンドでプレーしています。ナインたちは勝つために全身全霊でプレーしています。甲子園という、地方のトーナメントを勝ち上がってきたチームと戦うということは、全身全霊を傾けなければいい試合をして負けるということすらかなわない、レヴェルが高い場所です。

ソリストも同じだと思います。ましてや、クレセント・フィルという、質の高いオケと演奏をするのであれば、もっと魂を込めた、体全体を使う演奏をしてほしかったです。そうすればおのずと、魂がこもった、情熱的な演奏になったはずで、中大と日大がアウフヘーベンするという、素晴らしいものになったはずで、とても残念です。

日大OBとして、付属校の三高ナインに学ぶ点はたくさんあると思います。是非とも次の演奏の参考にしてもらえばと思います。その演奏をよくフォローして、いい演奏をし続けたオケにはもう拍手を送るしかありませんでした。まるで投手を守備で盛り立てる内外野のよう。ちょうど三高が勝ちあがっていた時だったので、その点でももう感動していました。

そして、そのオケの素晴らしい点がぜーんぶ出たのが、4曲目、メインのドヴォ9「新世界より」でした。第1楽章の都会的な蒸気機関車のようなリズムと汽笛のあとに、壮麗なインディアン「ハイアワサの歌」から採用した第1主題の力強さとカンタービレ!それがホールを突き抜けるかの如く鳴り響き音が下りてくるさまはもう天国かと思うくらいです。

最後まで痩せた音が殆ど散見されず、いい演奏のまま突っ走ったは圧巻!指揮者の高野氏のタクトも素晴らしい!ちょうどいい塩梅でアコーギクをするんですよね。それにしっかりとついていくオケがまたいい!

特にすばらしいのは、フルートでした。じつは、フルートは半分が学生、つまり中大オケの団員なんですよね。しかし社会人に交じっても物おじせずに最高のパフォーマンスを示してくれました。この点は、三高ナインのほうが参考にした方がいいくらいかもしれませんね。そもそもが社会人と一緒でもそん色ないレヴェルを持っているから故ですが、それをしっかりと出すのは本当に難しいんです。今回は三鷹市芸術文化センター風のホールが会場でしたが、こういったいいホールは自分に音が返ってこないんです。しかし、中大生はいいホールで演奏をしていますから、いいホールでどのようにすれば自分たちの「演奏」がしっかり出せるか(高校野球で言えばどれだけ自分たちの野球ができるか)が分かっているんです。だからこその結果だと思います。私は演奏を聴いてこのように評論をすることでしか貢献できませんが、もっと直接支援しているOB・OGの皆さまの努力の賜物だと思います。その上で、学生もしっかりと精進していることが、この結果につながったのだと思います。

その意味では、とてもいいオケだと思います。社会人が学生を受け入れ、しかもアウフヘーベンし、その上で一つとなって素晴らしい演奏へと結実していく・・・・・こんな幸せなことがあるでしょうか!中大オケよりもはるかにクレセント・フィルさんを応援したくなりました。勿論、中大オケと一緒に、です。

次回は来年1月に、メインがチャイコフスキー交響曲第1番という、あまり演奏されない、しかし素晴らしい作品を演奏するということですから、これは行かないと!南大沢のホールはまだ行ったことがないんですが、クレセント・フィルにとっての「甲子園」が、多摩地域にはたくさんあるなと思います。次回はどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、楽しみです!




聴いてきたコンサート
クレセント・フィルハーモニー管弦楽団第33回定期演奏会
丸和弥作曲
クラリネット四重奏のための小組曲
アントニン・ドヴォルザーク作曲
弦楽四重奏曲第12番ヘ長調作品96「アメリカ」より第4楽章(鈴木栄一編曲によるクラリネット四重奏版)
チェロ協奏曲ロ短調作品104
交響曲第9番ホ短調作品95「新世界より
藤元裕也(チェロ)
高野哲夫指揮
クレセント・フィルハーモニー管弦楽団

平成30(2018)年8月12日、東京三鷹三鷹市立芸術文化センター風のホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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