かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ガーディナーとオルケストレル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティクによるベートーヴェン交響曲全集3

東京の図書館から、4回シリーズで取り上げております、ジョン・エリオット・ガーディナー指揮オルケストレルレヴォリュショネル・エ・ロマンティクによるベートヴェンの交響曲の全集、今回はその第3集を取り上げます。

第3集には、交響曲第5番「運命」と第6番「田園」が収録されています。はい、実はこの全集、番号順です。それにしても、第5番と第6番が一緒のアルバムというのは、珍しくはないですが、全集の中としては珍しいとも言えるでしょう。若干CDだと時間が足らないこともありますので。

ところが、このアルバムでは、第5番は32分ほど、第6番は40分ほどと、快速なので全体で約72分。あらまあ、一枚にすっかり収まっております。とはいえです、時間だけ見ますと、第6番がものすごく快速で、第5番はそれほどでもないって思いますよね。

しかし、実際に聴いてみますと、より快速に聴こえるのは第5番であり、第6番はそれほど快速に聴こえないんです。しかし、数字的には明らかに第6番のほうが快速です。ここが、ガーディナーの指揮の不思議なところです。

よく聞きますと、第5番の演奏において、あまりアクセントがつけられていません。一方、第6番にはアクセントが付きまくりと言っていいのです。なぜなのか?と考えても答えが見つかりません・・・

「運命」って題名に囚われているのでは?という意見もあるかもしれませんが、「運命」という表題は実は日本だけで通じる名称です。海外では普通に第5番交響曲です。ただ、ストーリーとして、運命に立ち向かうというのはあるので、恐らくそのストーリーに囚われたのではという気がしています。

実際、演奏としては、第5番は「英雄」に比べますとはるかに感動的で、魂を揺さぶります。特に、第4楽章に入ってからの怒涛の音楽は感動的。そこを勘案すると、ガーディナー古楽的アプローチにとらわれすぎていると言えると思います。

確かに、楽器の性能という点を考えれば、どうしてもテンポは現代よりも快速だと思うのですが、果たして、現代的なアクセントがつけられないほどの性能だったのか?と考えますと、私自身は答えはNoです。それはすでに、バッハ・コレギウム・ジャパンがバッハの作品で証明しています。

いわんや、もう少し時代が下った、オルケストレルレヴォリュショネル・エ・ロマンティクをや、です。そもそも、オルケストレルレヴォリュショネル・エ・ロマンティクはピリオドとはいえ、バッハの時代とは異なるというコンセプトで結成された古楽オーケストラです。アクセントをつけることが出来ないなど考えられません。明らかに、ガーディナーの解釈の結果だと言えるでしょう。

ストーリーの中に、ベートーヴェンがどんな思いを込めたのか。ピリオド楽器からのアプローチで攻めて欲しかったなあという気がします。ヨーロッパは日本よりもはるかに早く古楽演奏が勃興し、広まったわけなのですが、学究的な所で止まってしまっている演奏だなあという気がします。日本ではこの演奏などがスタンダードとして広まってしまったがために、モダンオケに於いて快速だと「学究的」と言う批判が出るのでしょう。

しかし、古楽演奏をよく聞く人であればお分かりだと思いますが、古楽演奏と言っても様々で、中には学究的であってもスコアリーディングの末作曲者の意図はどこかをしっかり見極め、自分の表現、言葉にしている指揮者や団体はいくらでもあります。さらに言えば、例えばバッハ・コレギウム・ジャパンテレマン室内管弦楽団は、このガーディナーのアプローチに異を唱えた団体だと言ってもいいのでは?と思います。バッハ・コレギウム・ジャパン古楽演奏に於いて革命を起こし、クラシック音楽の発展に貢献したと言えば言いすぎでしょうか。

このアルバムでは、一方で第6番はアクセントがしっかりついていることで、リズムが際立ち、それがベートーヴェンが表現したかった「田舎における自分の気持ち」が存分に表現されているように感じます。時間的には第5番よりも圧倒的に快速なのに、です。この差を、鈴木雅明氏が聞き逃すわけがないだろうと思うのです。私よりもはるかにオーソリティなので・・・それがプロの仕事ですから。

出版当初、このアルバムは「新しいベートヴェンの交響曲の演奏モデル」とまでもてはやされましたが、私自身はそのあとにいくらでもスタンダードと言えるだけの演奏が出てきていると感じています。それはこの第3集などの演奏を聴いて、指揮者や演奏家たちが批判精神で乗り越えた結果だと思います。下手すればそれは、NHKの「新プロジェクトX」で取り上げられてもおかしくないとすら思っています。特に、バッハ・コレギウム・ジャパンに関しては、十分番組で取り上げられてもおかしくないでしょう。

つまり、このアルバムは現代においては、日本の古楽団体がいかに世界レベルなのかを、如実に物語る演奏になっている、と言うことなのです。その意味において、聴かれるべき演奏だと思います。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」
交響曲第6番ヘ長調作品68「田園」
ジョン・エリオット・ガーディナー指揮
オルケストレルレヴォリュショネル・エ・ロマンティク

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