かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:バッハ・コレギウム・ジャパン第152回定期演奏会ライブ配信を聴いて

コンサート雑感、今回は令和4(2022)年10月30日に行われた、バッハ・コレギウム・ジャパンBCJ、以下この略称を使います)の第152回定期演奏会を聴いてのレビューです。

とはいえ、現在私は難病を患っているため現地へ聴きに行くことはできず、ライブ配信、それもアーカイブを聴いてのレビューとなります。

このエントリが上がっているころにはすでにアーカイブは削除されていると思いますが、久しぶりにBCJのライブ演奏を聴くのは本当に喜びです。特に今回指揮者は鈴木雅明氏ではなく鈴木優人氏。優人氏が雅明氏の息子さんであることはよく知られていますが、私は結構優人氏のスコアリーディング、そして解釈は評価するものです。それゆえに今回の配信はとてもうれしいものでした。

最近、音楽よりはyoutubeを見ることが多いのですが、そんな時にBCJライブ配信をやるということ、そしてその指揮が優人氏であることで私はとてもワクワクしました。しかもメインはモーツァルトのレイクエム。これは実はお父さんである雅明氏の指揮したものをCDで持っております。

ykanchan.hatenablog.com

この時、BCJのファンでもある私としては珍しくネガティブなレビューとなっています。一応私もアマチュアながらモーツァルトのレクイエムであれば歌った経験もありますので、ある程度の譜読みもした経験がありますもので・・・・・

この取り上げたCDの演奏の校訂者が、今回タクトを振っている優人氏なんですね。ですから注目はがぜん、校訂者が振ったら一体どのような演奏になるのか、になります。そしてまず結論を申し上げますと、実に素晴らしい演奏である、ということです。お父さんよりもですかって?もちろんです。

まず驚かされたのは、1プロのモーツァルト交響曲第39番。なんと生き生きとした演奏であることか!しかも、オーケストラも本当に楽しそうなんです。何よりも振っている優人氏が楽しそうなんです。これはライブ配信の醍醐味だなあと思います。

実際音質という意味で言えばyoutubeですからmp3なんですが、しかしそんなハンデをものともしない生命力が演奏には存在するのです。思わず画面を見て私も体が動いてしまいます。モーツァルトの音楽にある、魂からの愉悦。それがもうそこにあるんです。思わずうなりました。

それを受けての、レクイエム。この演奏会はおそらく優人氏が主導しているんだろうなと思います。オール・モーツァルト・プログラムでかつ、長調短調を組み合わせる・・・・・これぞモーツァルトの芸術を凝縮したプログラムだと言えるからです。人生の喜びを表現した長調、そしてモーツァルトの内面のドグマが現出する短調。どれを取ってもモーツァルトという作曲家の内面性へと至るためです。

モーツァルトの芸術の根幹である、オーケストラが動き回り合唱は長音多用などもしっかり踏まえつつ、しかし八分音符を跳ねさせるなど、古典派に造詣が深い優人氏ならではの解釈は私としては喝采するものです。そして父雅明氏が振ったときに感じた違和感は、やはり父と息子は別人格である、ということに尽きるんだなあということです。

つまり、雅明氏は優人氏の校訂をしっかりとくみ取らずむしろ自分流に解釈した、ということだと思います。それは雅明氏の個性ですが一方で優人氏の校訂が意味することからは離れてしまったような気がするのです。しかし今回、校訂者自身である優人氏のタクトは雄弁に物語っており、ルックス・エテルナも過度に飛び跳ねることはせずむしろ強調のように聴こえましたし、リフレインも同じように演奏させるなど、バロックの大家である父とは違う、古典派のオーソリティという側面が存分に出た名演であると感じました。

こうなると、BCJははっきりと新たな時代に入ったと言えるでしょう。バロックオーソリティである父雅明氏、そして古典派のオーソリティとしての息子優人氏という、二人のオーソリティがいる団体という、古楽モダンの区別なく例を見ない団体へと進化したと言えるでしょう。今後は二人で役割分担をしてくのかなあ、という気がしています。年末の第九は優人氏の指揮!ぜひとも配信をお願いしたいところです。

さて、このエントリが上がるころには、BCJは2020年にコロナ禍で挫折したヨーロッパツアーへ出ておりすでに現地にいるはずです。日本から最大のエールを送るものです。

 


聴いたコンサート
バッハ・コレギウム・ジャパン第152回定期演奏会
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第39番変ホ長調K543
レクイエム ニ短調K626(補筆校訂:鈴木優人)
森 麻季(ソプラノ)
藤木大地(アルト)
櫻田 亮(テノール
ドミニク・ヴェルナー(バス)
鈴木優人指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン

令和4(2022)年10月30日、東京新宿、東京オペラシティ コンサートホール タケミツ・メモリアル

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。