神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はモツレクを取り上げます。
え、モツレクって?うまいモツってこと?って、そんなあ。何をおっしゃいますか!勿論、モーツァルトの「レクイエム」K626のことです。
で、モツレクはこのブログでもカラヤンのを始め、コシュラー、BCJと幅広く取り上げてきました。勿論私が好きな極だからですが、今回はベームとウィーン・フィルとのものが登場です。勿論、元音源はドイツ・グラモフォン。
モツレクだけで6つぐらいすでに音源を持っているうえで、図書館で借りるための理由は、やはり演奏の差を楽しみたいという点がもっとも強い動機です。一応、モーツァルトのレクイエムって作品がどんなもんかって、私の過去のエントリを挙げておきます。
モーツァルト レクイエム ニ短調K.626
http://yaplog.jp/yk6974/archive/188
ベームのこの演奏も勿論、ジュスマイヤー版です。録音年代が1971年ですから、当然と言えるでしょう。冒険しても、その年にでたバイヤー版を採用するのがせいぜいでしょうが、ベームと言うビッグネームになってしまうと、そういった冒険はなかなか出来なくなってしまうものです・・・・・
その点では、BCJはさすがでしたが、その校訂があまり良くなったのが評価が私の中では低く、このベームのもののほうが高いんですよねえ。
今月のお買いもの:BCJ モーツァルト レクイエム他
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1260
ベームはステディに演奏を心がけており、私の中ではカラヤンのものに次ぐものとなっています。そもそも、この演奏も「棚卸」期間中に借りてきたものでして、カラヤンに近いものをと考えた時に辿りついたのでした。でも・・・・・
ベームは、特に戦争で亡くなられた人たちに囚われてしまったのかなって思います。ベームだからこそどっしりとしているのは問題ないんですが、むしろ合唱団なんです・・・・・採用したのは、ウィーン国立歌劇場合唱団。え・・・・・
実は、すでに持っていたカラヤン/ウィーン・フィルのものは、合唱団がウィーン楽友協会合唱団なんです。楽友協会合唱団はコンサートが主で、ロケーションもムジークフェラインが多いわけですが、国立歌劇場合唱団は勿論国立歌劇場が多いわけです。で、ロケーションは実はムジークフェライン・・・・・
ん?でかすぎないか?
そういうことなんです。合唱団の編成がというか、オペラの感覚で行っちゃってるんですね。だからこそ、私にとっては多少の違和感がある。でも、これがベームの指示であり、希望であったとするなら、その「違和感」にこそ、演奏の本質があるはず、です。
ウィーン国立歌劇場管弦楽団も、ウィーン・フィルも、実は同じ人たちが構成しており、その目的によって国立歌劇場管弦楽団となり公務員となるのか、それとも「世界最初のアマチュアイズム・オケ」であるウィーン・フィルなのかが違いますし、その演奏するホールもオペラ座とムジークフェラインと異なります。ところがウィーン国立歌劇場合唱団とウィーン楽友協会合唱団では構成が異なるんです。
その差が如実に出たのかなあって思います。その点がアンサンブルは素晴らしいのに残念な点。そしてそれは実は、カラヤンとウィーン・フィルの最期のモツレクがバランス、生命力ともに素晴らしいが、それがなぜなのかを端的に証明しているんですね。極論すれば、合唱団がウィーン楽友協会合唱団だったから。これがこのベームのように国立歌劇場合唱団だったら、カラヤンもアンチから言われているように「外面的」というそしりをまぬかれなかったでしょう。
ベームは確かに音作りの職人で、そこに徹底的に民主的プロセスを入れる人でしたが、それゆえにバランスが崩れたりすることがある・・・・・こういうことを指摘する人は少ないと思います。一方のカラヤンは、喧嘩しながら音楽を作りあげていく方法で、じっさいベルリン・フィルとは何度も喧嘩しているわけですが、ベームへの尊敬とウィーン・フィルの豊潤なアンサンブルへの敬愛もまた、非常に高い人だったことが、ベームとカラヤンの二つのウィーン・フィルの演奏で判ると言う、素晴らしいものでもある思います。
ソリストはのびのびしておりかつ力強い。本当に聴いていてうっとりなのに、合唱団が起こすんです。まあ、寝落ちるよりはいいかもしれませんが、その結果、慟哭と言うには十分素晴らしい演奏になっていると思います。残念なのは、カラヤンとウィーン・フィルのように嗚咽と残された者の心の中に芽生える「昇天のよろこび」は少し薄いかな、と言う点です。
かのベームにして、表現しきれないものを残す作品、それがモーツァルトのレクイエムであり、それがモーツァルトのレクイエムが持つエネルギーだと言っていいと思います。
聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
レクイエム ニ短調K.626
エディト・マティス(ソプラノ)
ユリア・ハマリ(アルト)
ヴィエスワフ・オフマン(テノール)
カール・リッダーブッシュ(バス)
ウィーン国立歌劇場合唱連盟(合唱指揮:ノルベルト・バラッチュ)
ハンス・ハーゼルベック(オルガン)
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
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