東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回は、ローマ三部作なのですが、演奏が軍楽隊、なのです。
まあ、自衛隊を軍隊と呼ぶのかとなれば、とてもセンシティヴな問題なのでここではやめておきますが、その自衛隊の音楽隊の演奏なのです。三隊の中では最も新しい歴史を持つ、航空自衛隊航空中央音楽隊の演奏、なのです。
http://www.mod.go.jp/asdf/acb/
自衛隊三隊はそれぞれに音楽隊を持ち、そのトップの楽団として中央音楽隊(海自は東京音楽隊)を持ちます。そしてそれぞれに演奏できるホールを持っているんですが、空自だけは陸自の東立川駐屯地に間借りしています。その東立川駐屯地内にある、合奏堂での収録です。
しかし、自衛隊三隊の演奏を並べて聴きますと、航空自衛隊だけはどこかコスモポリタンな、ちょっと違う音色があるのが分かります。それだけ新しいので既存の枠にとらわれないのが良いんだと思います(その点では、某幕僚長は本当に残念な人だったなあって思うんですよね、本当に)。
そんな航空自衛隊の特色が存分に発揮されているのが、このアルバムに収録された、ローマ三部作だと思います。正直言いますと、演奏としては「松」に関してはアマチュアの土気シビックウィンドオーケストラのほうが好きなんですが、全体としての完成度から言いますとさすが航空自衛隊航空中央音楽隊だと思います。
いずれにしても、ローマ三部作は吹奏楽でも人気のプログラムで、この演奏は木村吉宏氏による編曲を使っています。
この空自航空中央音楽隊の演奏で特にすばらしいのは、三部作の中でも「噴水」だと、私は思います。それ以外だと、実は私も鑑賞会を主宰しているのですが、その鑑賞会でオケにどれもかなわなかったんですが、私が聴いてもオケとそん色ないのが「噴水」だと思うのです。
「ローマの松」は、空自だと最初は強すぎ、最後の「アッピア街道の松」では壮大さに重きを置きすぎて、今度は軍楽隊としての力強さがどこかへ行ってしまっているように思うのです。また、「ローマの祭り」では色彩感に欠ける部分もあります。その全体のバランスがもっとも取れているのが、「ローマの噴水」なのです。
最初は編曲のせいなのかなって思ったのですが、多分、土気シビックウィンドオーケストラも同じ編曲を使っているはずなので、指揮者の進藤二佐のセンスなんじゃないかなあって思います。これはせっかくの空自中央音楽隊の才能がもったいないんじゃないかなあって思います。
でも、このアルバムは意欲的なもので、高く評価したいと思います。こういったクラシックの作品をあえて全部吹奏楽でしっかり演奏しようという企画は、単に日本のプロパガンダを超えて、日本の吹奏楽の水準を示すものとして素晴らしいと思うからです。特に空自の場合、その柔らかい音色が陸自や海自と比べ特徴なので、それをどう活かすかが指揮者に求められる資質だと思います。
その点で、進藤二佐は必ずしもいい仕事をしているとは、きびしく見れば思えないと言うのが私の印象なのです。空自という、軍楽隊という特色を時には前面に出しつつも、豊潤なアンサンブルを特徴とする空自の特徴を生かしていくという演奏が聴きたいんですよねえ。それが少ないのが残念なんです。だって、下手すればこれは佼成ウィンドだとか、オオサカシオンなどのプロ、或はヒモネス・ウィンドや土気シビックウィンドオーケストラなどのアマチュアだって出せる音色だから、です。
単に、どうだ、日本の「空軍」の演奏はすごいだろ〜ではなく、航空自衛隊だからこその「サウンド」を追求するほうがいいと思うからなんです。そうすればおのずと、いやあ、日本の「空軍」の演奏はいいよね〜と自然と各国から評価されるものだと思うんです。そのほうが、私たち国民としては誇りですね。
本来、その空自サウンドを追求することのほうが、ローマ三部作のように、音色が複数あって、その音色によって様々なものを表現している作品には向いているはずなんです。これが陸自や海自だと下手に伝統が邪魔をして、ローマ三部作のような作品を演奏しきれないと思います。航空自衛隊だからこそ、なんです。そこを間違わないで欲しいなあって思います。
それでも、全体としてはまとまったアンサンブルで、色彩感もしっかりあるのは、空自ならではで素晴らしいと思いますし、「ローマの松」第3曲「ジャニコロの松」最後にあるナイチンゲールの音がしっかりと入っているのは素晴らしく、実は私が持っているオケ版では抜けているんです。そういった細かい点は日本人ならではです。更なる演奏の向上を望むところです。
聴いている演奏
オットリオ・レスピーギ作曲(木村吉宏編曲)
交響詩「ローマの噴水」
交響詩「ローマの松」
交響詩「ローマの祭り」
進藤 潤 二佐指揮
航空自衛隊航空中央音楽隊
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。
このブログは「にほんブログ村」に参加しています。
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村
にほんブログ村