かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ラロとサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲

神奈川県立図書館所蔵CD、今回はラロとサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲がカップリングされたものを取り上げます。チョン・キョンファのヴァイオリン、デュトワ指揮モントリオール交響楽団です。

楽曲と演奏家の組み合わせに惹かれて借りたものです。チョンとデュトワそしてモントリオール響の組み合わせは以前、チャイコフスキーメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲のCDでも取り上げています。また、ラロとサン=サーンスの組み合わせは、チェロ協奏曲を取り上げた時にやっています。

マイ・コレクション:チャイコフスキーメンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/326

神奈川県立図書館所蔵CD:フランスのチェロと管弦楽のための曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/839

つまり、この二つが念頭にあって、この音源を借りているというわけなのです。

そもそもラロはヴァイオリニストです。当然、有名なのはヴァイオリン曲のほうになります。しかし、どのサイトを見ても華麗なる一発屋という記述が・・・・・

その意味では、私はチェロ協奏曲から入ってよかったと思います。決して彼は華麗なる一発屋ではありません。室内楽も多く作曲していますし、そのどれもスペイン気質が根底に流れていますが、変化に富み魅力あるものばかりです。

エドゥアール・ラロ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%89%E3%82%A5%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%AD

まず第1曲目はスペイン交響曲。え、このエントリはヴァイオリン協奏曲だよね?とおっしゃるかと思いますが、このスペイン交響曲はヴァイオリン協奏曲第2番なのです。

スペイン交響曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2

恐らく、華麗なる一発屋と言われるゆえんが、この曲にあるのでしょう。多くの人がこの曲を「交響曲」と勘違いしているのだと思います。確かに、楽章構成は伝統的な協奏曲とは似ても似つかず、むしろ現代音楽の「ピアノ付交響曲」に近いのです(そのヴァイオリンヴァージョンだと)。多くの人が交響曲と間違っても不思議はありません。しかし、楽曲は全体的にヴァイオリン協奏曲としての内容を備えています。カデンツァがあり、ヴァイオリンとオケがセッションしていますし、また会話もしています。ですから、交響曲の「オケの一部」という形とはまったく違います。

第2曲目がサン=サーンスのヴァイオリン協奏曲の第1番です。これもあまり評価の高くない曲です。こんなサイトがあるくらいです。

ベートーヴェンD-minor
サン=サーンス ヴァイオリン協奏曲第1番イ長調
(解説)
http://beethovendminor.web.fc2.com/equale4/saint-saens/saens_vncon1.html

まあ、私も独自の視点を持っていますけれど、循環形式が使いまわしというのはどうも・・・・・

というのは、循環形式が成立した背景には、リストやサン=サーンスが宗教音楽に造詣が深いという側面があるのです。

リストの宗教音楽はたとえそれがピアノ曲であってもさほど取り上げられることがなく、一部の人たちだけに知られているにすぎませんが、とても高貴な素晴らしい楽曲であり、リストの作品において重要な位置を占めます。いっぽう、サン=サーンスも、オルガニストという顔があることから宗教曲に造詣が深く、自身もミサ曲をはじめいくつか宗教曲を作曲しています。さらにピアニストであったことからリストとの親交もあります。

特に、循環形式に似たものはモーツァルトの戴冠ミサにおいてさえ出てきます(それは循環形式とは呼びませんが)から、実にヨーロッパの音楽において重要な形式なのです。元をたどっていけば、ルネサンスの楽曲までさかのぼります。

そういった音楽史を理解していないと、音楽の使いまわしという批評が出るのだと思います。

特に、サン=サーンスは所謂「温故知新」を音楽で表現したような作品を数多く作曲しており、このヴァイオリン協奏曲第1番もそういった作品の一つにすぎません。では、ソナタ形式は使いまわしとは言わないのですか?ということになってしまいます。

あくまでも、サン=サーンスは古典的な形式をその時代に合った形へと変化させたにすぎないのです。古くさいという指摘はともかく、音楽の使いまわしというのは、ではモーツァルトは?という指摘を生みます。

上記サイトでも言及されていますが、もっと音楽の本質を心のおもむくまま、まさしく心で聴きとる必要があるでしょう。

チョンは、決して華美に流れず、しかししっかりと音楽を鳴らしています。絶妙な強弱の表現などが、音楽に高い精神性を与え、美しさと気高さを現出させています。まさしく、聴き手に心で聴いてほしいかのごとく、です。

オケも、サポート万全です。華麗なモントリオールという意識で聴きますと、スペイン交響曲の冒頭などその力強さと激しさに腰を抜かすでしょう。それでいて、決して乱れぬアンサンブル。「情熱と冷静の間」が絶妙にとれた演奏です。

もちろん、もう少し暴れるというか、情熱的でありながら冷静だともっといいとは思いますが、果たして私たちは、ラロが華麗なる一発屋などという評価で演奏者にそれを求めることが出来るのでしょうか?私はこの演奏をききますと、はたと考えてしまいます。



聴いている音源
エドゥアール・ラロ作曲
スペイン交響曲ニ短調作品21
カミーユ・サン=サーンス作曲
ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調作品20
チョン・キョンファ(ヴァイオリン)
シャルル・デュトワ指揮
モントリオール交響楽団



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