かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:フランスのチェロと管弦楽のための曲

今回の神奈川県立図書館所蔵CDは、ラロのチェロ協奏曲などフランスのチェロと管弦楽のための作品集です。リン・ハレルのチェロ、シャイ―指揮ベルリン放送交響楽団の演奏です。

収録されている作曲家はラロ、サン=サーンス、そしてフォーレの三人で、それぞれ味わい深い作品となっています。それをハレルの表現力豊かな演奏としっかりとサポートするオケが彩っています。

ラロは、この音源を借りた1年ほど前、私が初めて聴いた作曲家でした。ラロと言いますと「スペイン交響曲(実はヴァイオリン協奏曲の第2番)」で有名な作曲家で、一見しますとスペインの作曲家と間違ってしまいますが、国籍としてはフランスです。しかし、彼のルーツがスペインのバスク地方にあることから、スペインの香がする作品が多いことで知られています。

エドゥアール・ラロ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%89%E3%82%A5%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%AD

しかし、彼が学んだのがパリ音楽院であること、そして彼が師事した演奏家たちがフランスを代表する音楽家であったことなど、彼の音楽のベースはあくまでもフランスです。

彼は演奏家として素晴らしかったこともあり、実は交響曲よりもはるかに協奏曲を作曲した人でした。スペイン交響曲も実際にはヴァイオリン協奏曲第2番の通称ですし、実は交響曲は一つしか書いていません。しかし、協奏曲となるとヴァイオリンやヴィオラなど彼が本来得意とした楽器からこの音源に収録されているチェロ、はたまたピアノのものまで作曲しています。

その意味で、サン=サーンスカップリングされていることはとても素晴らしいことだと言えるでしょう。サン=サーンス交響曲よりも協奏曲のほうが多い作曲家です。

カミーユ・サン=サーンス
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%A6%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B9

そもそも、この音源を借りた時、このサン=サーンスのチェロ協奏曲に惹かれて借りたのですから。しかし、ここに収録されているラロとサン=サーンスとでは、実は同じ協奏曲でありながら実に異なっています。

まずラロのチェロ協奏曲ですが、1877年に作曲されました。ちょうど彼の作品が世で評価され始めた時期の作品です。超絶技巧を前面に押し出しながらも、それ故表現力がもとめられるこの曲は、フランス後期ロマン派の色香の中にスペイン風がちりばめられている作品です。

チェロ協奏曲 (ラロ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%A9%E3%83%AD)

ハレルの演奏からは、まるで抜けるような大空が見えるとともに、気高さを感じるものとなっています。

形式的には、三楽章制を取るまさしくロマン派の作品というべきもので、冒険はあくまでも演奏技巧にとどめています。

ところが、サン=サーンスのチェロ協奏曲第2番はそうは行きません。実はサン=サーンスのこの曲は、20世紀の作品なのです。1902年に作曲されたこの作品は、サン=サーンス67歳のときの作品です。サン=サーンスの人生においても後半の作品ですし、また、音楽史においても後期ロマン派の最後の時代にさしかかった時期の作品でもあります。

チェロ協奏曲第2番 (サン=サーンス)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%82%B5%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B9)

ウィキでは「よく演奏される第1番とは対照的に滅多に演奏されない」とありますが、借りてきたときにはそんなに珍しい作品であることを知らずに借りてきたのです。ベートーヴェンの変奏曲と並び、とにかくフランスの作曲家の作品が聴きたいと思っていた時期だったからです。

しかし、演奏されないのも無理はないかと思います。時間的にとても短いのですね。この音源でも16分ほどで終わってしまいます。メインで演奏される機会はほとんどないでしょう。しかし、この時代の協奏曲の置かれた立場というもの、つまり古典派までは協奏曲が主で交響曲が従だったものが、この時代からは協奏曲が従で交響曲が主となって、現代に繋がっていることを考えますと、逆に中プロで使える曲だとわたしは思いますし、また、時間的にもサン=サーンスはそういったことを年頭においていたのでは?と思いたくなってきます。

サン=サーンスがとても形式的には冒険をした作曲家であったということも背景にあるように思います。このチェロ協奏曲第2番は2楽章制ですが、だからといって決して伝統的な3楽章制を壊したわけではありません。第1楽章と第2楽章の役割をなすのが第1楽章なのです。そういったサン=サーンス独特の制作手法といったものが理解できていないと、つまらないでしょう。

かとって、音楽的には超絶技巧が目白押しですし、ラロ同様聴いていて飽きることはないと私は思うのですが・・・・・

翻って見れば、サン=サーンスのこういった形式が、その後の音楽に与えた影響は限りなく大きいと思います。たとえばシマノフスキしかり、スクリャービンしかり、同じフランスではラヴェルしかりです。三人とも形式的には楽章構成などサン=サーンスの影響を受けていると言っていいでしょう。

最後のフォーレは形式的にはサン=サーンスの影響をあまり受けていないように思われますが、音楽的には決して影響を受けていないとは思えません。なぜならば、フォーレサン=サーンスからピアノを習っているからです。形式的には保守的なことをやっているように思いますし、器楽曲ではそうでしょう。このエレジーにしてもそれほど冒険はしていないように思います。しかし、宗教曲である「レクイエム」では、伝統的にあったセクエンツィアを外すなど、実は現在のミサ曲に繋がるようなことをやってのけています。

ガブリエル・フォーレ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%96%E3%83%AA%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AC

レクイエム (フォーレ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%A0_(%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AC)

そういったテクストでエレジーを再確認してみると、とてもロマンティックな旋律の中に、超絶技巧を織り交ぜ、それを沈殿させるなど、聴いていて味わい深いものがあります。もともとこの曲はソナタに使う予定だったようですが、今日では管弦楽で演奏されることが多い曲です。1883年にまずソナタ用として作曲されましたが、後にエドゥアール・コロンヌの依頼によってフォーレ自身により管弦楽曲に編曲されましたが、実際にそれが演奏されたのは、サン=サーンスのチェロ協奏曲が作曲されたのと同じ1902年で、チェリストはカザルスでした。

19世紀から20世紀のフランスを彩った、三人の作曲家たちの作品を聴き比べますと、それぞれに特徴があり、味わい深いものがあることに気が付かされます。特に、ラロはある意味民族主義的な音楽をフランスに持ち込んだひとであり、その点でサン=サーンスとも関連付けられることも有ります。当時のヨーロッパの社会が確実にフランス音楽にも押し寄せていたことを教えてくれます。

そもそも、その震源地は18世紀のパリだったのだということを、改めて感じるところです。



聴いている音源
エドゥアール・ラロ作曲
チェロ協奏曲ニ短調
シャルル・カミユ・サン=サーンス作曲
チェロ協奏曲第2番ニ短調作品119
ガブリエル・フォーレ作曲
エレジー 作品24
リン・ハレル(チェロ)
リッカルド・シャイー指揮
ベルリン放送交響楽団



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