神奈川県立図書館所蔵CDショパンピアの作品全集の今回は第6集を取り上げます。収録されているのはポロネーズです。
ショパンと言えば、私はポロネーズという印象の方が強いです。そのせいなのか、私はショパンはロマン派よりもむしろ国民楽派としてとらえているくらいです。
その理由として、ポロネーズがその名の通り、ポーランドの舞曲であるという点が挙げられます。
ポロネーズ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AD%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%BA
ベートーヴェンの取り上げているこのポロネーズですが、きちんとポーランドのリズムを刻むようになったもので有名になったのは、ショパンのピアノ曲においてです。
特に、軍隊ポロネーズ(ポロネーズ第3番)や英雄ポロネーズ(ポロネーズ第6番)などはそのリズムが顕著ですし、宇宙戦艦ヤマト復活編でも使われた第5番もそのリズムが顕著です。
その点を解説したのが、NHKの番組「名曲探偵アマデウス」でした。
明日のジョウイチ 〜ショパン ポロネーズ変イ長調「英雄」
http://www.nhk.or.jp/amadeus/quest/32.html
この時特に注目していたのが、やはりリズムだったのです。登場ピアノストは仲道郁代女史でしたが、一番苦労するのはリズムなのだそうです。
そういった独特のリズムがあるポロネーズですが、このアシュケナージはそれを実にさらりと演奏してしまいます。私としてはもう少し民謡風な「粘り」がある、少しだけアコーギクがある演奏が好みなのですが・・・・・
しかし、ここでようやくショパンの代表ジャンルともいえるポロネーズを持ってくるところに、アシュケナージの言いたいことが見えてきます。
ショパンはなぜ祖国を旅立たねばならなかったのか。それは、彼の才能が祖国では発揮しきれないくらいの素晴らしさだったからで、外国に活路を見いだすしかなかったからです。バッハやベートーヴェンの作品を手本としながら、自らの道を切り開いてきたショパンにいきなり襲う悲劇が、ワルシャワ蜂起失敗だったのです。
11月蜂起
http://ja.wikipedia.org/wiki/11%E6%9C%88%E8%9C%82%E8%B5%B7
この時代、すでにポーランドは独立国としての体裁を失っていました。それを回復せんとして起こったのが11月革命で、実際にはポーランド軍によるロシア軍を相手にした独立戦争と言っていいものです。
そういった時代の気風が音楽に反映されたのが、私はあきらかに第3番や第6番だと思っています。特に第3番に関しては、私はその思いを強く持っています。
軍隊ポロネーズ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BB%8D%E9%9A%8A%E3%83%9D%E3%83%AD%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%BA
ウィキではショパンらしくないという記述もありますが、あえてそう作曲した可能性もあると私は思っています。そもそも、ショパンは初めウィーンに行くのですが、そのウィーンはワルシャワ蜂起を受け反ポーランドの姿勢を明確にします。それを受けてショパンはパリへとのがれるわけです。そこで、第3番を意図を隠すために、素晴らしい構造を持つ第4番と一対に作曲したという推理も成り立つからです。
優しい音楽のほうが伝播力が強い。これは以前からラフにおいても私が言及している点ですが、それはショパンでも一緒であると思っています。バッハやベートーヴェンを尊敬する作曲家です。どう自分の愛国心を表現すべきなのか、それを祖国へ伝わるようにするためにはどうすればいいのか、さんざん考えたはずです。
アシュケナージだからこそ、そこを考えてほしい・・・・・・そういった「想い」が、この編集からは伝わってきます。それ故なのか、アシュケナージの演奏は第3番や第6番においては本当にすっきりとしたものなのに、それ以外は粘りのある、ロマンティックなアプローチになっています。
ショパンはつい音楽そのもので終わってしまう作曲家で、ショスタコーヴィッチなどと比べて歴史的なものをあまり理解しようとせずに聴いてしまいますが、こういった当時の情勢を頭に入れて聴きますと、またちがった側面を教えてくれます。
聴いている音源
フレデリック・ショパン作曲
ポロネーズ
第1番 嬰ハ短調作品26-1(1834〜1835)
第2番 変ロ長調作品26-2(1834〜1835)
第3番 イ長調作品40-1「軍隊」(1838)
第4番 ハ短調作品40-2(1838〜1839)
第5番 嬰ヘ短調作品44(1840〜1841)
第6番 変イ長調作品53「英雄」(1842)
第7番 変イ長調作品61「幻想」(1845〜1846)
ウラディーミル・アシュケナージ(ピアノ)
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