東京の図書館から、5回シリーズで取り上げております、小金井市立図書館のライブラリである、アルトゥール・ルービンシュタインが弾くショパンのピアノ曲、今回はポロネーズです。
ショパンはポロネーズを全部で16曲作曲していますが、このアルバムに収録されたのは7曲。第1番から第7番です。この7曲は有名な作品でありよく取り上げられる作品でもあります。
ポロネーズはポーランドの民謡であり舞曲です。もともとはポーランド宮廷が発祥ともいわれています。そもそもはポロネーズとは「ポーランド風」という意味であり、フランスで取り入れられたためそのように言われるわけですが、実際にはポーランドでは当たり前のリズムであるわけです。ショパンが活躍したのがパリだったのでポロネーズという名称を使ったと言えます。バロック時代ですと宮廷で舞曲が多く演奏され舞踏会で踊られたわけで、実はその延長線上でクラシック音楽でも使われるのですが、市民革命を経て大衆化されるのです。ショパンのポロネーズもそんな歴史の中で成立したものです。
ルービンシュタインはそんな歴史を踏まえつつも、意外と重たくない演奏を心掛けているような印象です。録音が1960年代ですから年齢のせいであるとしてもいいのかもしれませんが標題がついている作品では多少軽めのタッチ、ついていない曲では意外と強めのタッチの演奏も見受けられます。この辺りは、単に楽曲が成立した歴史ではなく、自身の人生とショパンの人生を重ね合わせているような印象を受けるのです。
特に第3番「軍隊」では弱めのタッチが認められます。その代わり第6番「英雄」では強めのタッチもあります。このように、ショパンが祖国の作曲家だからと言って力強く演奏するというような表面的な表現ではなく、作品の背景を抑えたうえで自らの視点や感性を加えているのです。
ショパンは「ピアノの詩人」と呼ばれますしまるで詩吟のような音楽もありますが、ルービンシュタインはその称号にこだわらずのびのびと自身の解釈を展開しています。そのため、私の印象としては、アシュケナージの若い演奏よりは、このルービンシュタインの老練な演奏のほうが好みです。とはいえ、細かい部分では「それはちょっと違うなあ」と思う点もありますが。ですがそれこそまさに細かい点であり、大したことではありません。
ルービンシュタインというピアニストの偉大さはどこにあるのかと言われれば、この複眼的な視野だと私は思います。ですがそれは決して幸せな人生から出来上がったものではなく、「なので幸せな人生などいらないのだ!」とかいう勢力を評価するつもりもありませんが、しかしルービンシュタインはその経験を表現に生かした点で、現代を生きる私たちに、強いメッセージを放っていると感じています。
聴いている音源
フレデリック・ショパン作曲
ポロネーズ第1番嬰ハ短調作品26-1
ポロネーズ第2番変ホ長調作品26-2
ポロネーズ第3番イ長調作品40-1「軍隊」
ポロネーズ第4番ハ短調作品40-2
ポロネーズ第5番嬰ヘ短調作品44
ポロネーズ第6番変イ長調作品53「英雄」
ポロネーズ第7番変イ長調作品61「幻想ポロネーズ」
アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
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