かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ルーマニアのヴィルトォーソ達による「フルート協奏曲」

今回のマイ・コレは、モーツァルトのフルート協奏曲集です。ヴォルフガング・グレース指揮、ヨーロッパ・シンフォニー、フルートはコンスタンティン・タルマチウです。

この聴きなれない面々による、有名なモーツァルトのフルート協奏曲。ルーマニアのオケといえば、このブログを読まれているコアな読者の方はピン!と来るかもしれません。そうです、これはBMGから出ていた「Arte Nova」レーベルなのです。

いまなら図書館で借りてきたかもしれません(いや、実際に借りてきています)。しかし当時は貸し出していることも知りませんから、ひたすら廉価盤を買い求めたわけなのです。その理由としてはやはりBCJにはまってしまったという面が大きいですねえ。そんな金持ちじゃあるまいし、3,000円のCDを何枚も買えるような御身分ではありませんことよ、おーほっほ!

ということで、買ったのがこのCDでした。当時、モーツァルトの協奏曲にとても興味が向いてきていた時期で、合唱団員だった私としては、人の声に近い楽器からアプローチをしていったというわけなのです。

それと、小学校の下校時に流れていた音楽がモーツァルトファゴット協奏曲だったことが、このフルート協奏曲へ興味を向けさせた理由の一つです。というより、当時そのファゴット協奏曲が欲しかったのです。しかし、売り切れていたので、予算の都合上、このフルート協奏曲を買い求めたというわけです。

さて、モーツァルトはフルート協奏曲を二つ残していますが、作曲したのは第1番だけなのです。第2番はオーボエ協奏曲を移調したものであることが、1920年オーボエ協奏曲のスコアが発見されたことで判明しました。

オーボエ協奏曲 (モーツァルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%9C%E3%82%A8%E5%8D%94%E5%A5%8F%E6%9B%B2_(%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%84%E3%82%A1%E3%83%AB%E3%83%88)

こういったことを知りますと、モーツァルトもしっかりとバッハ以来の伝統をうけついでいるのだなということを知ることが出来ます。昨日ご紹介した大ミサハ短調も、形式的にはバッハのロ短調ミサそっくりですし、どこかでモーツァルトハイドンだけでなく、バッハを追いかけていたように私は思います。

この二つのフルート協奏曲が成立したのは、マンハイム・パリ旅行最中の1778年1月から2月にかけての時期です。この旅行は実りあるものがなく、さらには母を亡くすという精神的につらいことまで重なった中での成立ということが重要なファクターだと私は思っています。しかも、お金の魅力に負けてあまり好きではないフルートという楽器のために作曲したのですが、その成果は素晴らしいものです。

第1番はヴィルトォーソあふれる(そのため、「フルートと管弦楽のためのアンダンテ」という曲を第2楽章の差し替え用として作曲したと言われていまして、それもカップリングされています)一方古典派の会話する協奏曲であり、ピアノ協奏曲で見せたような対等な関係をフルート協奏曲でも現出させています。清潔感と平明さにあふれるその音楽は、聴くものすべてを癒します。奇をてらうことなく急〜緩〜急を徹底的に極めた形式美も素晴らしいです。

でも、どこかにモーツァルトのやる気のなさというのは見えるのではないか?と思う方もいらっしゃると思います。実は私もそう思っている一人でして、その証拠はあります。フルート協奏曲は契約上は3曲作曲することになっていましたが、モーツァルトは2つしか「納品」していません。しかも、そのうち一つはもともとオーボエ協奏曲です。この点にモーツァルトのやる気のなさが垣間見えますね。

しかしながら、その作品は決して手を抜いていません。こういった「逃げかた」というものは、私たちが生きるうえでも参考になる点が多いように思います。

そんな背景を持っているこの二つのフルート協奏曲を、このCDではとてもさわやかに演奏しています。流麗で端整。私好みの素晴らしい演奏で、今でも頻繁に聴いているものの一つです。指揮者、オケ、ソリストどれも日本では無名ですが、全く遜色ありません。繰り返しでは弱くするなど、基本もきちんと押さえていますし、それで価格は880円。これ、13年ほど前でですよ。今でも十分バジェットプライスです。

ルーマニアと言いますと、実はスズキが工場を持っていることでも有名ですが、とてもポテンシャルを持った国だと思います。そのメイド・イン・ルーマニアの車が日本にも逆輸入されていますが、評価は意外といいのです。特に、数年前に発売されたSV4という車がありますが、それはTVKの番組で評論家が大絶賛していたほどです。私はこのCDを聴いていましたので、なるほどと膝を叩いたものです。

まあ、本当に重箱の隅をつつくような点を上げますと、もう少しだけ上下する音型で演奏が丁寧だったらなあというのがマイナス面ですが、そんなことは全く気になりません。それはソリストの点なので。オケはアンサンブルの点で全く問題ないですし、指揮者のアプローチも信頼置けるものです。

Arte Novaのシリーズ、再販しませんかねえ。日本語解説付で、880円ですよ。なしであれば、多分ブリリアント・クラシックスとほぼ同じ価格だと思うのですが・・・・・



聴いているCD
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
フルート協奏曲第1番ト長調K.313
フルート協奏曲第2番ニ長調K.314
フルートと管弦楽のためのアンダンテ ハ長調K.315
コンスタンティン・タルマチウ(フルート)
ヴォルフガング・グレース指揮
ヨーロッパ・シンフォニー
(Arte Nova BVCC-6016)



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