芸術の秋、ですね〜。
そして、合唱をやられていらっしゃる方々は、第九の季節になりましたね。
え、第九は年の瀬なんじゃないのという、ア・ナ・タ。ゲネプロだけで歌えるほど、やわなもんではありませんぜ、「第九」ってえのは。
はっつぁん、そんなことを言っちゃあ、いけませんよ。
最低、毎年歌っている団体でも8月末から9月にかけて練習が始まります。私が川崎市民第九で歌っていたときは8月末から練習が始まっていました。
ですから、今ちょうど合唱団員にとっては真っ最中なのです。
その理由として、曲そのもののむずかしさと、最近ではどの版をつかうか(ブライトコプフ・ウント・ヘルテルか、新ベーレンライター原典版かなど)、そして発音は口語体にするのか文語体のままで行くのかが問題になるので、早めにアクションを起こさないと練習に支障をきたすのです。
さて、このブログでも何度か触れてきました、ドイツ語の口語体発音。いわゆる最後のerをエルと発音せずアーと発音する現代ドイツ語の発音ですが、それをなかなか合唱団員は受け入れようとしません。しかし、それには何度か触れていますが理由があります。それは、合唱団員がその発音に慣れているということがありますが、慣れているいう理由だけではありません。それは、もともとベートーヴェンが文語体発音でリズムを作っていることが理由なのです。
ただ、それをerの発音部分で見てみますと、面白いことがわかります。たとえば、練習番号M、543小節めを見てみましょう。ここはerが頻繁に出てきますが、実は付点四分音符なんですね。通常、文語体でということを理由とするとき、erの部分で音の動きがないとそれを言うことはできません。明らかにそこにリズムが設定されているからです。ところが、この部分はerの音だけで付点四分音符です。つまり、それだけ伸ばしてくださいという指示にベートーヴェンはしているわけです。
ならば、口語体でも別段問題はありません。先日アップしましたブリュッヘンの第九ですが、解説にこんなことが書いてありました。
「口語体にするとリズムがおかしくなるので、バリトンソロは変えているが」
確かに録音ではそうなのですが、私は聴いたときにすぐ楽譜を見まして、その解説はおかしいと思いました。なぜならば、バリトンソロの部分はほとんど同じ四分音符です。eとrにそれぞれ音符がついているわけではありません。ですから、本来は全くおかしくありません。ただ、歌いにくい場合があることは確かです。それは、オーケストラが文語体のリズムに合わせているからなんです。
まず、バリトンソロの部分のオケを見てみます。実はここはオケも同じリズムを刻んでいます(220小節以降)。ところが、練習番号M、543小節からはオーケストラは八部音符でリズムを刻んでいます。そして、完全にerの部分では音に高低がついており、リズムに変化がついているわけなんです。ここに本来解決しなければいけない問題があります。ですから、わたしは即座にブリュッヘンの演奏を聴いたときに「これはおかしい」と思ったわけです。そして、なぜ合唱団が文語体のままで歌ったのか、そこで理解できました。
つまり、オケを重視した、ということです。ある意味では、ブリュッヘンはきちんと第九を交響曲と位置付けて振っているということでもあります。しかし、主旋律は確かに合唱団がおもに担当します。ここに、第九のむずかしさがあるのです。
逆に言えば、合唱団は口語体だからいやだと文句をいう筋合いはない、ということなのです。むしろ、本来はオーケストラのほうから文句がでないとおかしいということができます。
ところが、現実は逆にオーケストラは歓迎なのです。よし、それに挑戦してみようというオケが結構あります。特にアマチュアオーケストラが自分たちの定期演奏会でやる場合は、口語体でという団員が結構いるとききます。でも、たいてい合唱団の抵抗にあって文語体になるのだ、と。
でも、合唱団の方に考えてほしいのです。口語体では合唱は全く問題ありませんよ。単に付点四分音符を「アー」と伸ばすだけです。わたしもためしに歌ったことがありますが、全く問題ないです。もし、それがちがうとおっしゃるなら、お会いして歌って見せましょう。
いずれ、日本の合唱団の優秀な演奏を「マイ・コレクション」でご紹介できると思います。ぜひ、口語体発音を恐れずにやってほしいなと思います。
さて、今日は3日分連投になりました。そういうときは私がどこかへ出かけるときなので・・・・・はい、お出かけをいたします。音楽とは関係ないのでどこへとは申しませんが、土曜日には帰ってまいります。
皆様も素晴らしい週末を過ごされんことを!