かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:マーラー版の「第九」

今回のマイ・コレは、かなり久しぶりにまたまたベートーヴェンの第九です。ペーター・ティボリス指揮、ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団です。

これを買いましたのも十数年前で、買いましたのはもちろん、この演奏が「マーラー版」だったから、です。

第九はいろんな人が「校訂」をしてきました。その中で有名なのは、ワインガルトナーとワーグナーです。特に有名な校訂は第4楽章の冒頭、ホルンの部分です。第九はベートーヴェンがある意味未来の私たちが演奏することを想定して作曲された部分もあって、そのせいでいくつかの校訂を経て現在の楽譜になっています。

さらに問題なのは、直筆譜が第二次大戦の混乱ですべてそろっていないことです。ですので、第九に関しては原典版と言えども全く初演通りではありません。それも何かしらの校訂が入っているわけなのです。

このCDを買った時期、ちょうど私は川崎市民第九に参加するようになっていました。そのため、レファレンスとしてこのCDを買い求めました。

まず、マーラー「校訂」の特徴を述べておきます。ブックレットに示されている指揮者ティボリスが言っているのは次の4点です。

�@ダイナミクスベートーヴェンはppからff(ピアニシモからフォルティシモ)までしか書いていないが、マーラーはppppからffffまでにしている
�Aティンパニをもう一セット増やし、さらにホルンを4本増やしている
�B全般を通じての木管および弦楽器の重複
�C時折、新たな対旋律風の素材が明らかにされている

その上でさらにもう2点指摘しているのが

�@声楽部分に関しては独唱・合唱部分どちらも変更されていない
�Aテンポも変更されず

さて、実際はどうなのかと言いますと、一番よくわかるのはダイナミクスでしょう。確かにppppからffffになっています。それは明らかです。特にffffに関してはティンパニをもう1セット加えているのが影響しています。あらたな対旋律風の素材はよく確認できません。内声部なのでしょう、ちょっと聴くだけではわかりにくいと思います。

それと、ブックレットでも指摘があるのですが、実際独唱部分、特に最初のバリトン・ソロはリズムに変更がなされています。ただ、これは現場でティボリスがやったことであり、マーラー版でそうなっているとは私には思えません。正確には「マーラー版の」楽譜を見る必要があるでしょうが、私がそう判断した理由は、以下のエントリに挙げた演奏とそのリズムが全く一緒であるからです。

マイ・コレクション:ブリュッヘン「第九」

ykanchan.hatenablog.com



この時に述べましたが、

〉Deine zauber binden weider の部分のリズムが狂ってしまっています。

その狂い具合と全く一緒なのです。少なくとも、わたしはワインガルトナー校訂を基本的にもとにしているブライトコプフ版を見てこの時書いていますが、リズムに変更はなく、恐らく口語体のリズムと整合性を合わすためにそうしたのだと推理しました。

音楽雑記帳:なぜ増えない?口語体発音の「第九」
https://ykanchan.hatenablog.com/entry/2010/11/04/012709

ただ、この演奏は文語体ですので、このように変更することはちょっと不自然なのですが、ブリュッヘンの演奏に影響されているとすれば納得もできるかな、と思います。これも一応、第九の真の姿を追い求めた故の演奏なのですから。

少なくとも演奏を聴いては、このマーラー校訂の特徴はとにかく「ダイナミクス」なのです。そのためにティンパニもホルンも増やしていますし、重複(つまり、複数の楽器で同じ旋律を演奏すること)もやっているのです。それが端的に現われるのが第1楽章展開部と第4楽章フィナーレです。ただ、だからと言って全体的にものすごい演奏なのかと言えばそんなことはなく、むしろfの部分はむしろほかの校訂よりもすっきりと聴こえるくらいです。

では、演奏自体はどうなのかと言えば、第4楽章以外は素晴らしいでしょう。第4楽章はところどころアンサンブルが崩れる寸前まで行っていまして、昨年末のN響第九なんてもんじゃありません。明らかに素人目にもアンサンブルが崩れそうになっているのが分かるのですから。特に第4楽章ナポレオンマーチと呼ばれる男声合唱が終わってオケだけになる部分でそれが顕著です。

ここは第九でも難しい部分なんです。ここから練習番号Mまでどれだけオケががんばれるかで、良し悪しは決まると言ってもいいくらいです。そこでオケが悪く言えばこけてしまっています。まあ、アマチュアオーケストラほどではありませんが、それに近いレヴェルになってしまっています。マーラー版という珍しい演奏なのでゆるしてもらっていると言っていいでしょう。

しかし、そのほかは特段変な部分はありません。しかし一番のコアの部分でこけてしまったがため、ちょっと残念な演奏になってしまっています。

もう少し自家薬篭中のものにしてほしかったなという気がします。




聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
リア・アン・マイヤーズ(ソプラノ)
イレーヌ・セイムス(メゾ・ソプラノ)
ジェームズ・クラークテノール
リチャード・コナン(バス)
ヤナーチェク歌劇場合唱団(合唱指揮:ヨセフ・パンチク)
ペーター・ティボリス指揮
ブルノ・フィルハーモニー管弦楽団
(Bridge BCD9033)
※実際には国内盤のIDC3300を買い求めています。



このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。