かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:バレンボイムとウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラによるベートーヴェン交響曲全集2

東京の図書館から、4回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、ダニエル・バレンボイム指揮ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラによるベートーヴェン交響曲全集、今回はその第2回目、第2集を取り上げます。収録曲は第2番と第4番のふたつです。

交響曲第2番
交響曲第2番は、1802年に完成した交響曲です。1800年には構想が始まり1801年には作曲に着手、1803年に初演という経緯をたどっています。ちょうど世紀の変わり目で作曲された作品だと言えます。それゆえなのか、ハイドンモーツァルトの影響を見ることは少なく、ベートーヴェンの個性が満ち溢れる作品となっています。

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バレンボイムはどっしりとしたテンポを採用しつつも、オーケストラはベートーヴェンの個性、あるいは精神に引きずられてか、自然と熱いものがこみあげて来る演奏になっています。どっしり系のテンポの採用は、恐らくはお互いの音を聴きあえるようにというバレンボイムの配慮のような気がしますが、それはある程度効果を発揮していると言えましょう。それが演奏に熱いものが存在するという点に現われていることにつながっていると言えます。ある意味オーソドックスな解釈ですがそれがいい方向に向かった演奏だと言えます。

ベートーヴェン交響曲はどこかに情熱と言ったものが仕込まれていると個人的には感じますが、どっしりとしたテンポはともすればやっつけ仕事になっている演奏にもなりかねずそうなると表面的な演奏になりがちです。しかしバレンボイムはお互いの音を聴きあうということでそれぞれの音に存在価値がありそれぞれの音が混然一体となることで精神性の発露につながっていることを団員に示唆していると考えられます。そうなると自然に演奏には熱が入り、聴衆に伝わってきます。うまいやり方だと思います。まさに相互理解の結露だと言えます。聴いていてもどっしりとしたテンポなのに飽きさせません。第4楽章では疾走感も感じられます。

交響曲第4番
交響曲第4番は、正確な作曲時期は不明ですがおそらく1806年に完成したとされる交響曲です。初演は1807年。ゆえにベートーヴェンの個性がしっかり反映されてる作品だと言えます。

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序奏はともかく、これもバレンボイムはどっしりとしたテンポを採用しています。実は私としてはあまり好きなテンポ設定ではありません。それは初めて聞いた第4番の演奏がカルロス・クライバーだったことが影響しています。その演奏を聴いてしまうとどっしり系のテンポってちょっと物足りないのです。

ところが、バレンボイムはそのどっしり系のテンポでもしっかり聴かせてくれます。これはやはりオーケストラの団員がどこまで作品を理解し、楽譜から掬い取り、表現しようとしているかの差によるものだと言えるのではないでしょうか。これもまた惰性の演奏とそうではない必死の演奏とで違いが出るという典型だと言えます。指揮者の力量、団員の精神などが複雑に絡み合い芸術を表現していると言えます。これもまたクラシック音楽の楽しみと言えましょう。

どっしりとしたテンポを採用することで、団員はお互いの音を聴きあうことに神経を傾けることができます。その結果、お互いが一つの芸術作品を紡いでいることを意識させ、そこに感情を込めることができる・・・ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラの名に恥じぬ演奏になっています。ゆえにどっしり系という私が好きなテンポではないにも関わらず、しっかり聴かせて魅了する演奏になっています。こういう演奏こそプロの仕事ですね~。これも第4楽章では疾走感も感じられます。

その意味では、アメリカにおける現象を顧みてみると、プロの仕事人がいつの間にかいなくなっているのではないかと思う所。それが移民排斥などにつながり内向きになっている原因の一つのような気がするのは私だけなのでしょうか。移民の国が移民を排斥するようになった時、果たしてその強さは本物なのかは、この演奏を聴いたタイミングでは疑問に思ってしまいます。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第2番ニ長調作品36
交響曲第4番変ロ長調作品60
ダニエル・バレンボイム指揮
ウェスト=イースタン・ディヴァン・オーケストラ

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。