東京の図書館から、78回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、テルデックレーベルから出版された、古楽演奏によるバッハのカンタータ全集、今回は第52集を取り上げます。CDでは第28集の2ですが、私は図書館の通番に従っています。収録曲は第113番と第114番の2つです。
この全集は指揮者2名体制で、ニコラウス・アーノンクールとグスタフ・レオンハルトの2人です。今回は指揮はグスタフ・レオンハルトが担当、レオンハルト合奏団とハノーヴァー少年合唱団です。今回はコレギウム・ヴォカーレは参加していません。
①カンタータ第113番「主イエス・キリスト、汝こよなき宝」BWV113
カンタータ第113番は、1724年8月20日に初演された、三位一体節後第11日曜日用のカンタータです。コラールカンタータで、歌詞のほとんどが表題コラールから採用されている一方、一部作られた歌詞も入っている形になっています。
合唱はコレギウム・ヴォカーレが入っていないため、少年の声が殆どを占め、純潔さが前面に押し出されている格好です。第7曲はソプラノとアルトのデュエットとなっていますが、ソプラノはハノーヴァー少年合唱団のボーイソプラノ、ゼバスティアン・ヘニッヒ。アルトは第2曲ではルネ・ヤーコブスなのでヤーコブスかと思いきや・・・あれ?少年の声が聴こえてきます。ここではなんとハノーヴァー少年合唱団の団員同志のデュエットとなっており、デートレフ・ブラチュケ君が担当。ブラチュケ君、うますぎ。レオンハルトだとたまーにこのブラチュケ君が担当というケースがあります。ヤーコブスでもいいとは思いますが、バランスを考えたのかもしれません。いずれにしても、少年の声になっていることで、ここでがらりと雰囲気が変わって、純潔が感じられる演奏になっています。そうなるとやはり他の演奏に置いて大人の女性を使っているような場合、表現力が問われるということになるでしょう。
②カンタータ第114番「ああ、愛しきキリストの徒(ともがら)よ」BWV114
カンタータ第114番は、1724年10月1日に初演された、三位一体節後第17日曜日用のカンタータです。これもコラールカンタータです。
合唱はコレギウム・ヴォカーレが参加しておらずハノーヴァー少年合唱団単体なので、少年の声が中心となって聴こえてきます。第4曲は再びボーイソプラノ、ゼバスティアン・ヘニッヒ君登場。拙く聴こえますが歌詞の内容からするとむしろその歌い方が適切かと思えてきます。こうきたかという印象です。朴訥と歌う様子は、涙を誘いそうです・・・表現力というものはいかなることかと、考えざるを得ません。その意味では、バッハの音楽はある意味アマチュアイズムを如何に演奏に生かすかということでもあるのかと思います。
長らくバッハ・コレギウム・ジャパンを聴いてきて、あるいはモダン楽器の演奏を聴いてきて、それが当たり前だと考えてきましたが、このレオンハルト、あるいはアーノンクールのアプローチは、いわゆるアマチュアオーケストラと同じなのかもしれないと考え始めている私です。そう考えると、腑に落ちる部分が数多くあります。やはりいろんな演奏は聴くものだと思います。
聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第113番「主イエス・キリスト、汝こよなき宝」BWV113
カンタータ第114番「ああ、愛しきキリストの徒(ともがら)よ」BWV114
ゼバスティアン・ヘニッヒ(ソプラノ、ハノーヴァー少年合唱団)
ルネ・ヤーコブス(アルト)
デートレフ・ブラチュケ(アルト、ハノーヴァー少年合唱団、BWV113デュエット)
クルト・エクヴィールツ(テノール)
マックス・ヴァン・エグモント(バス)
ハノーヴァー少年合唱団(合唱指揮:フィリップ・ヘレヴェッヘ)
グスタフ・レオンハルト指揮及び通奏低音オルガン
レオンハルト合奏団
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。