かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:テルデックレーベルの古楽演奏によるバッハのカンタータ全集53

東京の図書館から、78回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、テルデックレーベルから出版された、古楽演奏によるバッハのカンタータ全集、今回は第53集を取り上げます。CDでは第29集の1となっていますが、このブログでは図書館の通番に従っています。収録曲は第115番と第116番の2つです。

この全集は指揮者2名体制で、ニコラウス・アーノンクールグスタフ・レオンハルトの2人です。今回はニコラウス・アーノンクールの指揮、ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスとテルツ少年合唱団です。

カンタータ第115番「備えて怠るな、わが霊よ」BWV115
カンタータ第115番は、1724年11月5日に初演された、三位一体節後第22日曜日用のカンタータです。コラールカンタータになります。

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第4曲のソプラノアリアは、テルツ少年合唱団のボーイソプラノマルクス・フーバー君が担当しています。この第4曲は冒頭の歌詞が表題のコラールの一節になっています。そこから新たに内容を踏まえて歌詞が展開されるという形です。コアな部分であると同時に、どこか場面転換という意味合いの印象すらあります。あるいは、純潔さを感じるところで心に響くような構造と言うか・・・ボーイソプラノというのはいかなる役割なのかということを、この部分だけでも考えさせられます。どうしても私たちは現代を生きていますから機械的にここは本来は女声だと思ってしまいますが、それは本当に適切なのかということを考えさせられるのです。勿論、女性でもいいのですが、その代わり高いレベルをやはり要求されることになるはずだと個人的には感じます。

とくに、第2曲の長いアルトアリアの後に、バスのレチタティーヴォが来ての、ソプラノアリアです。歌詞を見ると、第2曲と第4曲は明らかに関連しているため、どちらも女声となっていますが、一方は男性のカウンターテナー、一方は少年のボーイソプラノ。確かに男声ではあるのですが、そこに異質なものを持ってくることによって意味を成していると考えられるのです。その「異質」というものが何を指すのかを、歌い手が真剣に考えて表現する必要がある、ということです。単に上手に表現力をもって歌えばいいということではないのではと、ここまで聴いてくると感じるのです。そしてそれはアーノンクールのメッセージではないかとすら思えるのです。フーバー君は確かに少年としてはうまいですが、では大人と比べた場合に動かと言えば、つたない部分もあるのです。しかしその拙さが聴いていてむしろ魅力として聴こえるというのは何故なのかを突き詰めていくと、そこにアーノンクールの「問い」が存在すると感じるのです。

カンタータ第116番「汝、平和の君、主イエス・キリスト」BWV116
カンタータ第116番は、1724年11月26日に初演された、三位一体節後第25日曜日用のカンタータです。これもコラール・カンタータです。

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テルツ少年合唱団のボーイソプラノであるマルクス・フーバー君は、ここではソリストとしては第4曲の三重唱で参加しています。他のパートはテノールとバス。二人の大人に負けず劣らずの歌唱をしています。ここでは拙さはあまり目立ちませんので、やはりそれなりの実力をフーバー君は持っていると言えるでしょう。というか、それはバッハが意図して作曲しているとも言えるのではないかと、ここまで聴いてきて感じています。そうなると、大人の女性が歌うリリンクの演奏をどうとらえるべきかという問題が私の前に立ちはだかります。それはまた、今後考え抜いていきたいと思います。答えはまだ出ていませんが、その命題をアーノンクールからもらったと言えるわけで、それは幸せなことです。

そもそも、この第116番も内容からして諭旨の側面を持った作品です。そして祈りというものは何なのかということを、ここで自分に問わねばならないとすら感じるのです。バッハのカンタータとは、そういった様々な内容を持つ作品であるということを、改めて感じるものです。

 


聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
カンタータ第115番「備えて怠るな、わが霊よ」BWV115
カンタータ第116番「汝、平和の君、主イエス・キリスト」BWV116
マルクス・フーバー(ソプラノ、テルツ少年合唱団)
ポール・エスウッド(アルト)
クルト・エクウィルツ(テノール
フィリップ・フッテンロッハー(バス、BWV115)
マックス・ヴァン・エグモント(バス、BWV116)
テルツ少年合唱団(合唱指揮:ゲールハルト・シュミット=ガーデン)
ニコラウス・アーノンクール指揮、通奏低音
ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。