かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:東方政策40周年記念 MAXフィル「第九」特別演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和4(2022)年12月27日に聴きに行きました、MAXフィルハーモニー管弦楽団ベートーヴェン「第九」特別コンサートを取り上げます。

今年はコンサート雑感は結局MAXさんだけとなりました。ほぼ1年という期間病気により長期休養を余儀なくされており、とてもコンサートへ行くだけの資金あるいは体力がなかったためです。

MAXフィルさんは今年の7月に、メルパルク東京が廃止されることに伴った演奏会を開催しており、その際にもベートーヴェンの第九を演奏されていますが、今回もまたベートーヴェンの第九であるわけです。がロケーションは当然のことながら9月にメルパルクホールが廃止されていますので、別の場所となっております。今回は荒川区の施設であるサンパール荒川でした。

サンパール荒川は、20年ほど前にやはりアマオケのコンサートを聴きに行きましたがそれ振り。ずいぶん久しぶりなホールです。しかし、以前よりも残響は良くなっていないか?と感心しました。こじんまりとしたホールなのでそのように感じたのかもしれません。たいてい東京特別区の区民会館というのはさほど大きいものではありません。そのため多目的ホールである割にはいい残響になっているところもあります。サンパール荒川もそんなホールの一つだと言えるでしょう。鉄道ファンとしては都電の停留所も近いというのもまた魅力の一つです。

www.sunpearl-arakawa.com

MAXフィルを指揮する古澤氏はマレーシアともゆかりがある方ですが、そのせいなのか、今回の特別演奏会は日本外務省から「東方政策40周年記念」の事業として認定されたそうです。東方政策とはマレーシアの「ルックイースト」という政策から来ており、これは西洋よりは東洋、特に日本をお手本にするということを意味しています。

www.my.emb-japan.go.jp

その政策の一端を知ることができたのが、一つ目の今回の収穫でした。今回のコンサートは以下のプログラムです。

①ヴィヴィアン・チュア 栄光の頂点
ベートーヴェン 交響曲第9番「合唱付き」

ヴィヴィアン・チュアはマレーシア出身の女性作曲家そしてピアニストであり、クアラ・ルンプールのアン・ペロー音楽院院長を務めてもいます。「栄光の頂点」はMAXフィルさんのプログラムによりますと、マレーシア・フィルハーモニー管弦楽団の委嘱により作曲され、2017年8月12日に今回指揮されている古澤氏によりペトロナスフィルハーモニー・ホールにてマレーシア・フィルとMAXフィルさんの合同演奏により初演されています。ベートーヴェンの第九を演奏する1プロとして演奏されることを前提とされており、「第九のモティーフとマレーシアの牧歌的な雰囲気を組み合わせたメロディー、祝祭的なリズムが見事に絡み合い、見事なコーダを迎える」(MAXフィルさんのプログラムより)音楽です。

第九のモティーフはあまり感じられませんでしたが、合唱が入っているというのは第九と同じであり、ある意味マレーシアの作曲家による「合唱幻想曲」であると私は受け取りました。マレーシア風な旋律のほうが強く出ておりかつそのフレーズが完全に芸術の域に達しており、途中の手拍子は民衆的ですがそれすら芸術の高みへと昇っており、どこを切っても素晴らしい管弦楽作品となっていました。まさに「アジアの時代」と言えるような作品です。MAXフィルさんの演奏ものびのびとしており、もしベートーヴェンが生きていたとすれば、喝采する作品そして演奏だったかもしれません。

その「栄光の頂点」を受けての、第九。今回休憩なしに突っ込みましたので余計緊張感高まる感じでした。今回はあまりオケが突っ込んではいないんですがそれでも多少突っ込み気味のところがありました。しかし古澤氏が見事なタクトで手綱を引いており、どっしりとしつつもアグレッシヴな演奏となっていました。熱が入っているなあと感じました。3年ぶりの年末の演奏ということもあってか、想いがこもっているというか・・・・・どこか熱いものが私自身にも湧き上がっていました。

そして、第4楽章。ところどころ見えを切るような部分もありつつも盛り上がっていく演奏。特に合唱が入ってからはヴォルテージが一段上がったように思います。一見すればあまり気をてらわないオーソドックスな解釈なのですがしかし随所に気持ちが入っているのが散見され、もう涙腺崩壊寸前。そして、ユニゾンの部分ではついに涙腺が崩壊し男泣きに泣きました・・・・今年は仕事もできず思うように生きてきたとは言えない一年だったのですが、しかし同じような同志にも巡り合い、その同志のことも考えていたらもう涙腺は崩壊するしかありませんでした・・・・・

御身のやさしい翼の留まるところ、すべての人は同胞となる・・・・・実は以前から紹介したいyoutuberがいるのですが(年を越しましたらご紹介したいなと思っております)、その方の生き方がこの第九の歌詞とダブるのです。ベートーヴェンがシラーの「歓喜に寄す」に感動して第九を作曲したように、その感動は時代を超えてなお人々の心を打つのだと思います。ソリストの方々は合唱に多少押され気味だったようにも思いますがやはり第九は合唱がオーケストラパートだともいえますので、合唱団が素晴らしければすべてよし、と言っていいと思います。最後のプレスティッシモは一段とヴォルテージが上がりアップテンポとなり、祝祭感のうちに終わりますと、もうブラヴォウとしか言いようがありませんでした。

来年はまたいい歳でありますようにと、MAXフィルさん恒例の「蛍の光」がアンコール。今回はまだ新型コロナが終息しておりませんので観衆である私たちも歌うということはありませんでしたが、しかし今年も暮れていくという感情に浸りました。本当に素晴らしい演奏をありがとうございましたと関係者の方々には伝えたいと思います。

さて、今年最後のエントリとなりました。昨年から難病に罹患し、さらにはその病名が変化しさらに長期化という1年だったのですが、それでも無事ここまでエントリが立てられましたのはひとえに読んでくださっている皆様の応援のたまものです。この場を借りまして御礼申し上げます。最後のエントリがなんと今年最後のコンサートレビューになるとは思いもしませんでしたが、それが「自分を超えた大きな力」の配慮なのだろうと思います。来年もまたこのブログをひいきにしていただければ幸いです。皆様が良い年を迎えられますよう!

 


聴いて来たコンサート
東方政策40周年記念 MAXフィル「第九」特別演奏会
ヴィヴィアン・チュア作曲
栄光の頂点
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品1255「合唱付き」
林田さつき(ソプラノ)
長澤美希(アルト)
澤崎一了(テノール
照屋博史(バス)
MAX第九合唱団
古澤直久指揮
MAXフィルハーモニー管弦楽団

令和4(2022)年12月27日、東京荒川、サンパール荒川荒川区民会館)大ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。