東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はウェーバーが作曲した序曲を集めたアルバムをご紹介します。
まあ、この手のアルバムは名曲集の扱いになりますので、ベタと言えばベタなんですが・・・・・
それでも、ウェーバーって作曲家、魔弾の射手ではよく知られているんですが、意外にも様々なジャンルを書いていることはあまり知られていませんし、特に協奏曲は名曲が多い割にはコンサートピースに乗りにくい作曲家でもあります。
このブログでも、たとえば神奈川県立図書館所蔵のクラリネット協奏曲などを取り上げていますけれど、小金井は序曲を持っている、というわけです。でも序曲なんてって思うでしょ?けれども、音楽史においてウェーバーの最大の功績は、ドイツ・オペラを確立したということなのです。
さらには指揮棒を初めて使っただとか、今のクラシック音楽の「スタイル」を確立した、実は偉大な人なのです。そしてそれは、「序曲」というスタイルの確率をさせたということでも偉大です。
序曲には、大きく分けて3つの種類があります。①オペラ等の「序曲」②劇付随音楽の「序曲」③祝典序曲
ウェーバーはこの3つすべてを作曲した、稀有な人です。そしてこれは、古典派においてベートーヴェンが切り開いた様式です。音楽的にはモーツァルトの影響を強く受けているウェーバーですが、ベートーヴェン・リスペクトだってしっかり音楽的にも様式的にも持っています。その意味では、何度もこのブログでは言うことなんですが、ウェーバーこそロマン派最初の作曲家と位置付けるのにふさわしいと思います。
このアルバムに収録されている作品を、上記3つに仕分けすると、以下のようになります。
①オイリアンテ、アブ・ハッサン、オベロン、魔弾の射手
②プレチオーザ
③精霊の王(もともとはオペラの序曲なので、①にも該当する)、歓呼
この中で個性的なのは、「アブ・ハッサン」と「歓呼」かなって思います。アブ・ハッサンはリムスキー=コルサコフも題材にしている千夜一夜物語から一つのエピソードを抜き出して小さなオペラにしたもの。1幕のみのジングシュピールとも言われます。1810年の作曲ですから、ちょうどベートーヴェンの中期ころなんですよねえ。
そして、「歓呼」。1818年9月20日、ザクセン王国の国王フリードリヒ・アウグスト1世の在位55周年における式典で演奏された作品で、ほぼその直前に作曲されています。本来はカンタータが演奏される予定だったものが王の命によりキャンセルとなり、急遽作曲されることになった割には堂々たる作品。ザクセンなのになぜ最後英国国歌?と思ってしまいますが、英国国歌の旋律は替え歌されてザクセンでも歌われていたとのことで、なるほど、それで出てくるのかと納得の作品です。
演奏するは、クーン指揮、シュターツカペレ・ドレスデン。歓呼までは本当に生き生きとした演奏で、特にアブ・ハッサンはまるでバグダッドの街中にいるかのよう。けれども、魔弾の射手は多少どっしり気味で、一度目はあれ?って思いますが、2度目以降聴いていますと、どっしりとした部分と快活な部分とが同居しつつ、最後のクライマックスに向けてだんだん疾走していくという演奏になっています。それはそれで一つの物語になっているのが特徴で、これはこれで何度も聴いていますと味わい深いなあと思います。ただ、私としては怒涛のような演奏のほうが好みです。
とはいえ、豊潤なドレスデンの歌劇場オケの明るい音色は、ロマンティックな色合いを色濃くしており、それはそれで楽しめる演奏になっています。
箇条書きにして調べてみると、意外にもこのアルバムがウェーバーの作品を序曲という切り口で知っていく、非常に優れたアルバムなんだなあと思います。
聴いている音源
カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲
「オイリアンテ」序曲
「アブ・ハッサン」序曲
「フレチオーザ」序曲
「精霊の王」序曲
「オベロン」序曲
「歓呼」序曲(祝典序曲)
「魔弾の射手」序曲
グスタフ・クーン指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
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