かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:シェリングが弾くバッハのヴァイオリン協奏曲集

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介します。今回はシェリングとマリナー指揮聖マーティン・イン・ザ・フィールズの演奏によるバッハのヴァイオリン協奏曲をご紹介します。

バッハのヴァイオリン協奏曲はもう有名すぎる作品。3曲ありますが、そのどれもケーテン宮廷時代の1720年代に作曲されたのではと言われています。ちょうどライプツィヒに移る前ですね。

ということは、バロックと前古典派のちょうど間くらいだといえるわけで、ここに収録されている第1番などは多分にコンチェルト・グロッソ風になってもいます。

そんな作品を、シェリングは聖マーティン・イン・ザ・フィールズと演奏しているわけです。録音は1976年。ちょうどヨーロッパでは古楽旋風がひと段落し、市民権を得るに至る時代です。それに伴い、モダンオケの室内オケが注目を集め始めた時代でもあります。その一つが、我が国ではアカデミー室内管として紹介されてきた、聖マーティン・イン・ザ・フィールズ教会アカデミー。

ブレンデルとのモーツァルトのピアノ協奏曲など、特に古典派の作品の演奏で定評があるオケですが、バロックであるバッハでもステディかつ生命力あふれる演奏を繰り広げます。そこに絶妙にマッチするシェリングのヴァイオリン。

特に、第1曲めである第2番第1楽章はワクワクする演奏。第1主題がそうされるとき、よーく聴きますとシェリングも主題提示部で演奏に参加しているのがわかります。これもある意味、コンチェルト・グロッソの様式を残したものだといえます。けれども楽章数は3で、急~緩~急の古典派以降の協奏曲と同じです。とても精神性を見出すことが可能な作品であるだけに見落としがちですが、シェリングとオケ、そして指揮者のマリナーの三者はしっかりとスコアリーディングをしたうえで選択をしているということになります。

そのうえで、決して学究的だけにならずそこに魂を入れていく。これぞプロだなあって思います。とても古い様式を残している作品なのに、決して古臭さを感じないんです。むしろみずみずしく麗しい。私好みの演奏です。

なぜ私好みかと言えば、知性を感じるからなんです。アカデミックな私としてはやはり知性を感じる演奏じゃないとどうもダメです。けれども一方で魂も感じる演奏です。その知性と魂のバランスが絶妙で、お互いが相乗効果を持っています。プロだからこそ可能な演奏だと思いますが、最近はこういった演奏をアマチュアもするので、予断できません。けれどもその理由として、このような優れた演奏が広く市民に開放されているということもまた言えるでしょう。

こういう仕事こそ、図書館の使命なのです。

 


聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV1042
ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調BWV1041
2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043
アリア~管弦楽組曲第3番BWV1068より
ヘンリック・シェリング(ヴァイオリン)
モーリス・アッソン(ヴァイオリン、BWV1043)
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン・イン・ザ・フィールズ教会アカデミー

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。