かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ブレンデルのモーツァルトピアノ協奏曲モダン演奏〜複数台のコンチェルト〜

今回の県立図書館所蔵CDは、モーツァルトのピアノ協奏曲のモダン演奏を取り上げる最終回です。今回は第7番と第10番、つまり「3台のピアノのための」と「2台のピアノのための」協奏曲です。

といいましても、このCDではピアニストは二人しかいません。ブレンデルとクーパーの二人です。では、第7番「3台のピアノのための」はどう弾くのか?

実は、第7番はモーツァルトが2台用に編曲しているのです。このCDはその楽譜を使っています。それでも全く遜色ありません。この曲は最初から2台のために書かれたのでは?と思うくらいです。

私はピリオドで3台使っている演奏を持っています(ピリオドの時に取り上げています)が、その時に言及したと思いますが、3台目はあまり目立ちません。

もともと、彼の時代はフォルテピアノだったわけで、その演奏を聴きますと本当に目立たないんですね、3台目。おそらく、モーツァルトも演奏していてそれを感じたのでしょう、2台用に編曲されているのだと思います。そして、それは全くもともとが3台のために書かれたなんて思えません。完全に2台だけで会話が成立しています。

だからこそ、2台にしてしまっても問題なかったのだと思います。おそらく、楽譜を見ればもっとそのあたりはわかるのでは?と思います。音がスコアから取れなくても、どのようなメロディーラインになっているか、見ればわかります。残念ながら今回はそれを見ることはかないませんが、いつかそれは確認してみたいと思っています(ネットでは楽譜を確認することができませんでした)。

一方の2台のための、つまり第10番では完全に2台用ですから、二つのピアノが対等に渡り合い、会話をしています。しかも、第7番よりも確実に堂々たる音楽となっていて、モーツァルトの成長を感じる1曲です。

実は、私は一台だけの第26番と第27番とが録音されているものと一緒にしてあります。それは、ぺライアの時に述べました通り、ぺライアがこの第7番と第10番を抜かして録音していたからで、一台が全部そろった時点でようやく図書館で探したからなのです。で、あった唯一のモダン演奏がこれだったのです。

で、その演奏を聴きますと、第27番と比べても第7番、第10番どちらも遜色ないということに驚かされます。それは二人、特にブレンデルの演奏技術の高さなのでしょうが、もともとの楽曲が素晴らしいという点もあるのだと思います。とくにそれを感じますのは第10番で、ここから確実にモーツァルトの音楽は高みへと昇ってゆくという気がします。表現力が何よりも求められるこの曲を第27番と並べて聴いてみますと、本当に遜色がないことに驚かされます。

それが作曲されたのがザルツブルク時代だというのもまた驚きです。それを二人のピアニストはさらりと演奏して見せます。これぞプロ!ですね。

スピード感あふれるテンポ、その上表現力がもとめられるピアノ。そして、pとfの切り替えの素早さが要求されるオケ。これでもうかなりのレヴェルのなのに、モーツァルトは努力してもっと高みへと昇ってゆくのです。

モーツァルトのピアノ協奏曲を順番に聴くというのは、その軌跡をたどるという意味合いもあります。ぜひとも、できればこの第7番と第10番も含めて、彼のピアノ協奏曲を順番に聴いてみてはいかがでしょうか。高いレヴェルの演奏であれば、どの演奏者でも構わないと思います。



聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
3台のピアノのための協奏曲(第7番)ヘ長調K.242
2台のピアノのための協奏曲(第10番)変ホ長調K.365
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
イモージェン・クーパー(ピアノ)
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン・イン・ザ・フィールズ教会アカデミー(アカデミー室内管弦楽団